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W クリーニング業界の雇用高度化に向けて
  〜クリーニング業雇用高度化懇談会報告書の概要〜


≪課題と雇用高度化策のポイント≫

○時代に合わせた経営計画・経営戦略の策定
○優秀な人材確保及び人材育成のための労働条件等の整備
(雇用高度化策)        ↓
  ・ 小・零細規模企業における各種制度及び福利厚生面の整備
  ・ 就業者の身体的負担軽減、健康に配慮した労働環境の整備
  ・ 業界や職場イメージ向上のためのPR
  ・ 体系的な教育システム、技能評価システムの確立



 クリーニング業界は人々の日常生活に深く根ざした業界であり、地域生活と密接に関わり合いをもちながら順調に成長してきた産業であるが、近年では家庭用洗濯機の機能や洗剤の性能の高度化、形状記憶衣類等の普及などの環境変化により需要が減少し客数及び客単価も低下しつつある。さらに他業種からの新規参入や競合店の進出により企業間の競争も激化している。これらのことが、料金競争の激化はもとより人件費、諸経費の負担増、ひいては人材の確保難、高齢化や後継者難といった問題をも引き起こしている状況であり、クリーニング業界をとりまく問題は多様化している。また、大多数を占める小・零細規模企業と少数の中・大規模企業のギャップが大きいこと、業態の異なる業種が混在していることから、それぞれの抱えている問題が異なる。これら問題への対策として、以下のような検討を行った。



1 経営上の課題に対する対策

(1)需要の掘り起こし

 潜在的な需要の掘り起こしが重要である。これには業界団体が中心となって、消費者のニーズを把握するなどのマーケティング活動やマスメディアの活用など積極的なPR活動に取り組むことが求められる。


(2)各企業における経営計画、経営戦略の策定

 企業収益力や経営体質の強化を図っていくためには、各企業が経営計画、経営戦略を策定し、従業員全体に明示していくことが必要である。


(3)より高度なサービス提供に向けた取組の強化

 消費者ニーズに対応したよりよいサービスの提供を可能としてくための取組強化が求められるが、それにはより優秀な人材の確保・育成も必要である。このため業界団体が中心となって、サービス向上のためには人材面での取組みが不可欠であるとの意識を業界全体に普及・定着させていくことが求められる。


(4)環境問題への対応に関する対外的なPR

 業界として環境の保全に配慮していくことが必要であるが、こうした対応は業界全体のイメージアップにも資することになることから、業界団体としては取組の状況を時宣に応じて対外的にPRしていくことが求められる。

2 雇用管理上の対策

2-1 労働条件の改善に向けた取組


(1)経営者の意識改革

 業界団体が中心となり、経営者に対し意識改革を促すための取組が必要である。


(2)賃金・労働時間等の改善に向けた取組

 業界団体が中心となって関係法令の周知徹底や公的支援策のPRを図り、同時に労働条件改善モデルを検討・提示していくことが重要である。


(3)労働環境の改善・福利厚生の整備に向けた取組

 工場等における空調設備の整備・強化や休憩所等の整備の推進、就業者の身体的負担軽減のための対策に取組むことが求められる。また、有機溶剤等の物質の使用については、業界団体が中心となって、正しい知識や取扱い方法など安全管理面の情報を提供するとともに、労働基準関係法令の一層の周知徹底を図ることが必要である。さらに、福利厚生の整備については、業界団体が中心となって改善の必要性についてPRすることが求められる。


(4)労働条件に関する各種制度の整備の促進
 業界団体が労働基準関係法令等の周知徹底を図るとともに、労働条件の確立に向けての意識啓発や指導の実施等の取組を行うことが必要である。



2-2 よりよい人材の確保・定着に向けた取組

(1)業界や職場イメージ改善への取組

 業界団体がクリーニング業の重要性についてマスメディアの活用等によりPRを行うとともに、積極的に労働条件の改善に取組んだ好事例を取りまとめて対外的に紹介していくなど、業界や職場のイメージ改善に取組むことが必要である。とりわけ教育機関や若者に対するPRについては重点的に取組むことが求められる。


(2)人材の定着に向けた対策

 人材の定着には、労働条件や福利厚生の向上はもとより、就業者とのコミュニケーションの強化などを通じてニーズを把握し、労働意欲向上に取り組むことが重要である。また、改善提案制度や表彰制度などを設けることも検討すべきである。


(3)採用活動に対する支援

 公共職業安定機関等の活用促進を図るとともに、業界団体が学校や地域と連携して、小・零細規模企業の採用活動を支援していくことが求められる。



2-3 人材育成・活性化に向けた取組

(1)体系的な教育システムの確立に向けた取組

 就業者の職場や職能等に応じて、作業マニュアル等を整備し、それに基づいてきめ細かく体系的な教育を行うことなどが求められる。公共職業能力開発機関をはじめとする、社外の教育機関の活用を図っていくことも検討すべきである。


(2)技能評価システム等の整備に向けた取組

 習得した技能を適正に評価するシステムや、個々人の能力や実績を適切に処遇に反映していくような雇用管理システムを整備していくことが求められる。


(3)小・零細規模企業の教育訓練に対する支援

 業界団体等による教育訓練の重要性や公的支援策等についてのPRや、教育訓練制度、資格制度の充実などの支援の強化が求められる。



2-4 人材の有効活用に向けた取組

(1)仕事の繁閑に対応した人員計画の整備に向けた取組

 季節的に仕事量が大きく変化することが経営者、就業者の双方の負担となっている面があるため、繁閑の動向を把握し、変形労働時間制度やシフト勤務制度など、それに対応した人員計画を策定することが求められる。


(2)女性、パート・アルバイト、高齢者等の活用のための体制整備

 各種制度の整備や福利厚生を充実させることが望まれる。これには業界団体が中心となって、就業者のニーズを満たしうる制度等を検討するとともに、活用事例等を取りまとめ業界内に普及・啓発することなどが求められる。


(クリーニング業雇用高度化懇談会メンバー) 

五十嵐 素 一 株式会社白洋舎 専務取締役
伊 藤 公 一 千葉商科大学 商経学部教授
(座長) 伊 藤   実 日本労働研究機構 主任研究員
上 田 辰 雄 株式会社白星舎 代表取締役
小 川 賢 治 株式会社浦和寿 代表取締役
久 保 直 幸 ゼンセン同盟政策グループ 流通・サービス担当部長
栗 本   久 ゼンセン同盟トーカイ労働組合 中央執行委員長
野 村 親 富 ゼンセン同盟タカケン労働組合 組合長
宮 島   智 ゼンセン同盟流通・サービス部会 フランスベッド労働組合 中央執行委員長
三 浦 一 洋 全国中小企業団体中央会 企画調査部部長代理
山 下 一 平 株式会社ヤマシタコーポレーション 専務取締役

  第1回懇談会  平成10年2月23日
  第2回懇談会  平成10年3月30日
  第3回懇談会  平成10年4月21日
  第4回懇談会  平成10年5月12日
  第5回懇談会  平成10年5月28日

(五十音順敬称略、役職等は当時のもの)



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