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U ビルメンテナンス業の雇用高度化を目指して
  〜ビルメンテナンス業雇用高度化懇談会報告書の概要〜


≪課題と雇用高度化策のポイント≫

○過当な価格競争からの脱却と業界イメージの向上
○優秀な人材確保、活用、育成のための魅力ある職場づくりへの取組
(雇用高度化策)        ↓
  ・ サービス価値、重要性の社会へのPR活動
  ・ サービス品質基準等の明確化と品質管理の強化
  ・ 多様なキャリアプランや雇用管理システムの確立
  ・ 労働条件と労働環境の改善、及び福利厚生の見直し



 ビルメンテナンス業は、他の産業や生活の基盤を支える産業である。第2次世界大戦後に形成された比較的新しい産業であるが、ビル建設の増加やビル管理業務の外注化の進展に伴い市場は大きく成長し、売上高総額及び事業所数も年々増大しており、市場自体は将来性があると考えられている。しかしながら、1990年以降は、売上高の伸び率に低下傾向がみられるなど、変化が生じてきている。その背景には景気の低迷ばかりでなく、過当な価格競争等をはじめ様々な問題が存在している。これらの問題への対策として以下のような検討を行った。



1 経営面の課題に対する対策

(1)サービス価値・重要性のアピール

 サービス価値・重要性について、マスメディア等を活用して積極的にPRしていくことが必要である。とりわけユーザーに対しては、その意識改革に向けた業界全体としてのPR活動に取り組むことが重要である。また、環境問題に関連するゴミの分別収集やリサイクルについても、当業界が貢献していることを社会にアピールすることが業界の社会的評価、イメージの向上に効果的であると考えられる。


(2)過当な価格競争の是正

 過当な価格競争によって市場が混乱している状況の下、業界団体が中心となって業界全体にモラルアップを呼びかけるなどの対策が必要である。また、重層的な下請構造による影響を把握しつつ、業界全体としてこうした構造の変革に取り組んでいくことが必要である。さらには、雇用管理改善や労働条件向上の必要性に対する意識が希薄な経営者も少なくないこともこれらの原因のひとつと考えられるため、経営者を対象とした啓発活動にも業界全体で取り組むことが重要である。


(3)サービス品質基準等の明確化と品質管理の強化

 適正な価格で契約が行われるためには、業界団体が主体となって、サービスの品質基準や費用積算基準の明確化を図り、さらにそれを対外的にアピールしていくことが求められる。


(4)労働生産性向上に向けた対策の取組

 各企業は、機械化や情報化の推進を図るとともに、人材の技能・技術を向上させることにより、労働生産性を高めることが必要である。また、業界全体の健全な発展には、対策が遅れがちな中小企業に対し、業界団体が中心となって業務改善方法や改善事例の情報提供をするなど、支援を行っていくことが重要である。


(5)企業ビジョンの提示

 業界各社においては、企業ビジョンを明確にし、それを社員に提示することが重要である。業界団体には、ビジョンづくりの重要さを啓発するとともに、中小企業に対して情報提供を行うことなどによる支援が求められる。


(6)新規事業展開の推進とサービスの高付加価値化に向けた取組

 顧客の顕在的・潜在的ニーズを把握し、高付加価値化を図っていく取組みの強化が重要である。それには業界団体が、特に中小企業の取組みに対して、新規事業等に関する情報の収集・提供、公的支援制度のPR等による支援を積極的に実施していくことが求められる。


(7)入札に関わる問題の検討

 入札時期の設定、品質基準の考慮、品質維持のチェックなどの運用面においての改善や、ビルメンテナンス業務の性質に相応した契約形態のあり方についての検討が望まれることから、業界団体が中心となって入札制度の改善に向けて行政との調整を図っていくことが重要である。



2 人材確保・活用・育成面の課題に対する対策

(1)人材確保のための対外的アピール

 業界全体として業界や職場の魅力を対外的にアピールしていくことが求められる。とりわけマスメディアの活用等により、教育機関等を対象としたPRを積極的に行うことが必要である。


(2)人材の一層の活用方策に向けた取組

 労働者の働きやすい環境を整備し、就業満足度の向上を図りながら活用方策を推し進める必要がある。業界団体には、人材の活用事例情報の収集・提供や新たな設備機器の導入・訓練に対する支援を実施していくことが求められる。


(3)多様なキャリアプランや雇用管理システムの確立

 若年層と高齢者等のバランスをとりながら、計画的な採用を目指すとともに、技能資格等を反映させた賃金体系や休暇等を含む労働時間・勤務管理など、雇用管理システムの整備が重要である。業界団体には、モデル的なキャリアプランや雇用管理システムの開発に取り組むなどの支援が求められる。


(4)教育研修体制の整備

 キャリアプランや雇用管理システムの開発とあわせた教育研修体制の整備が必要である。業界団体としては、経営者の認識を高めるためのPRと、教育研修事業の一層の充実が求められる。


(5)人材の技能向上による技能集約型産業への発展に向けた取組

 雇用管理システムや教育研修体制の整備による人材の技能向上に向けた取組の強化が不可欠であり、業界団体としても適切な支援が求められる。



3 労働条件面の課題に対する対策

(1)労働条件の改善に向けた取組

 魅力ある職場づくりと業界のイメージ向上、よりよい人材確保の推進という観点から、労働条件の改善を図っていくことが不可欠である。業界団体には、特に中小企業を中心に関係法令の周知徹底や公的支援策のPR、労働条件改善モデルの検討などに取り組むことが求められる。


(2)労働環境の改善・福利厚生の見直しに向けた取組

 労働環境の改善は急務であるため、各企業が顧客等の理解を得るよう努力するのはもちろんのこと、業界団体が中心となり、業界全体としても顧客等にアピールしていくことが重要である。福利厚生についても、より一層の改善が必要であり、各企業経営者の配慮を促すなどの対策に取組むことが求められる。


(ビルメンテナンス業雇用高度化懇談会メンバー)

今 井 義 和 日本ビルサービス株式会社 代表取締役副社長
大 橋 弘 之 大星ビル管理労働組合 執行委員長
小 川   博 財団法人ビル管理教育センター 理事長
(座長) 小 野   旭 東京経済大学 経済学部教授
興 膳 慶 三 社団法人全国ビルメンテナンス協会 常務理事・事務局長
斎 藤 昭 治 東京一般労働組合 常任執行委員
佐 野   哲 日本労働研究機構 研究員
関 口   治 日本化学・サービス・一般労働組合連合 組織部部長
田 中 幹 夫 東京美装興業株式会社 代表取締役社長
津 田 克 忠 太平ビルサービス株式会社 専務取締役
鶴 岡 喜 重 社団法人全国ビルメンテナンス協会
理事・労働対策委員長
徳 田 靱 彦 日本労働組合総連合会 組織対策局長
降 矢 憲 一 日本大学 非常勤講師
矢 部   宏 日本メックス労働組合 副執行委員長
  第1回懇談会  平成9年9月25日

  第2回懇談会  平成9年10月14日

  第3回懇談会  平成9年11月11日

  第4回懇談会  平成9年12月16日

  第5回懇談会  平成10年2月5日



(五十音順敬称略、役職等は当時のもの)


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