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II 専門店業の発展に向けた魅力ある職場づくりをめざして

〜専門店業雇用高度化懇談会報告書の概要〜


<課題と雇用高度化策のポイント>
○ 優秀な人材の確保・育成
○ 店舗のあり方を踏まえた人材の活性化と有効活用

 (雇用高度化策)     ↓  
  • 店舗展開や商品販売等についての明確な経営方針の確立と従業員への浸透
  • パートタイム従業員の戦力化
  • 従業員個々人の働き方に関するニーズに対応したキャリアパターンの整備
  • 専門店で働くことの魅力の社会へのアピール
 
 日本経済の動きは、特にバブル経済の崩壊以降、専門店にとって非常に厳しい方向に動きつつある。流通制度の見直しによる競争激化への対応、消費者ニーズの急速な変化への対応、脆弱な経営体質の強化等専門店全体が取り組まなければならない課題が山積している。このような中で、業界が将来の専門店を支える優秀な人材を確保・育成していくことは非常に重要な経営課題となっている。そこで、以下のような対策の検討を行った。
 なお、本懇談会では専門店の抱える雇用管理上の問題点を整理するために、商品の発注、売り場のレイアウトの決定権等の権限の所在により、便宜的に本部権限重視型専門店(注1)と営業店権限重視型専門店(注2)に分けて議論した。

1 人材の活性・活用のための取組
(1) 店長をはじめとする社員の活性化のための取組
 社員の活性化を図るためには、第一に能力や実績に応じた人事制度や処遇の実施が重要である。しかしながら、専門店業界においては、能力の考課が困難とされており、システムとして確立されていない状況にある。このため企業、業界としては考課者を育成していくための積極的な考課者訓練を行うことが重要である。さらに、効率的な人員配置や従業員への仕事の与え方について深く研究し、職能資格制度をはじめとした諸制度の充実を図る必要性もある。
 本部権限重視型専門店においては、能力に応じた権限の委譲を行い、その能力を評価するシステムの導入についても検討の余地がある。
 営業店権限重視型専門店においては、個々人の希望に合わせたキャリアパターンを用意することに加えて、退職する者に対しては独立支援制度の導入・整備を図る必要がある。
(2) パートタイム従業員の有効活用のための取組
 短期間で辞めていくような流動性の高いパートに関しては、即戦力にすることが求められていることから、業務の細分化や効果的なマニュアルの作成などを検討する必要がある。一方、長期間にわたり勤務し、社員と同様の役割を期待されるパートに関しては、系統だった能力開発を実施し、能力評価を通じて適正に処遇することが重要である。また、優秀なパートの一層の活用のための人事システムを導入、充実させることも必要である。
(3) 女性の有効活用のための取組
 店舗の休憩室の整備等女性が働きやすい職場環境を整備することが第一に望まれ、個々人のキャリア形成のニーズに合わせて、管理職を希望する能力の高い者は積極的に管理職等に活用するなど実績による評価を徹底し、男女隔てのない人事を行うことが重要である。
(4) 中高年の有効活用のための取組
 本部権限重視型専門店においては、中高年従業員まで含めた処遇等の人事制度が確立されていないことなどが多いことから、職業生活全般にわたるキャリアパターンの構築が必要である。また、営業店権限重視型専門店においては、販売専門職制度の導入や教育担当者に起用し、若手販売員の教育に従事させることなどの人事制度を検討する必要がある。

2 人材育成のための取組
 専門店においては、高度な商品知識や接客技術が要求され、優秀な人材を育成するための教育研修の充実は非常に重要な経営課題である。依然としてOJTに頼った教育しか実施していない専門店においてはその重要性を再認識する必要がある。また、専門職コースや管理職コース等キャリアパターンの変化に対応した個別の研修制度が未整備な状況にあり、業界全体として体系的な教育システムを整備する必要がある。

3 優秀な人材の確保のための取組
 優秀な人材を確保するためには、第一に働く側のニーズや価値観に対応した人事コースを整備することが重要である。各専門店はその店舗において必要とする人材を明確にした上で、それらの人材が求めるような人事コースを設計していくことが必要である。また、賃金面、労働時間面においての魅力を高めるために、従業員が納得できる人事制度を構築することが望まれている。採用活動に関しては、地方採用やエリア採用など幅広い採用体制等の確立が必要である。

4 その他の取組
(1) 経営者の意識改革に向けての取組
 業界を取り巻く環境が激変している中で、経営者が店舗展開や商品販売等についての経営方針を確立し、その結果、店舗のあり方をどのように考えるかを検討することが重要である。また自社内において経営者と従業員とが経営問題等に関して自由な議論を交わせることができる環境づくりを促進することも必要である。
(2) 専門店の魅力の対外的アピールに向けた取組
 企業の経営者は雇用管理の改善等を進め、魅力ある職場づくりに一層注力するとともに、業界団体が中心となって、専門店で働くことの魅力を社会にアピールし、業界のイメージを向上させていくことが重要である。

(注1)
 商品の発注、売り場のレイアウトの決定権等の権限を本社に集中させ、いわゆるセントラルバイイング、チェーンオペレーションを展開する専門店。
 主に少人数多店舗展開をとる専門店に多くみられる。
(注2)
 各営業店に権限を持たせた経営形態であり、比較的老舗の専門店や1店舗当たりの従業員が多い専門店に多くみられる。

 (専門店業雇用高度化懇談会メンバー)
   岡 野 正 司 伊勢丹労働組合 マミーナ支部 委員長
小 川 三 郎 (株)奥住マネジメント研究所 チーフコンサルタント
川 口 浩 一 (社)日本専門店協会 専務理事
久 保 直 幸 ゼンセン同盟 政策担当
(座長) 小 池 和 男 法政大学経営学部 教授
陶 山 浩 三 全タカキュー労働組合 中央執行委員長
中 村   章 (株)産業社会研究センター 代表取締役
林   宏 明 (株)伊東屋 取締役総務部長
松 井   健 ゼンセン同盟専門店部会 政策部長
谷 頭 慶 治 (株)銀座ヨシノヤ 常務取締役管理本部長
山 下 祥一郎 (株)やまと 総務部長
   第1回懇談会  平成8年9月25日
   第2回懇談会  平成8年10月31日
   第3回懇談会  平成8年11月21日
   第4回懇談会  平成8年12月16日
   第5回懇談会  平成9年2月17日


(五十音順敬称略、役職等は当時のもの)

 


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