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1.現状と課題


3)改善への視点と慣行の見直し

 上記のような現状認識および問題点を踏まえた上で、本報告書では高校から職業生

活への移行期のあり方について、次のような観点から考える。

(1)改善への視点

 上記のような現状認識に立ち、問題点の改善を図るためには、文部科学省「高校生

の就職問題に関する検討会議報告」で指摘されているように、生徒の意思等に基づく

選択・決定を一層重視するとともに、採用選考機会を拡充するという視点が大切だろ

う。そうすることで、生徒の職業意識を高めるとともに、生徒側にとっては、複数の

就職機会の中から希望に合致した職業を選択できる機会の拡充に、企業側にとっては、

適正なコストで、求人ニーズに適した生徒を選択、採用できる環境の整備につなげて

いくことが可能になると考えられる。
 なお、新規高卒者の採用に当たっては、本人の適性、能力等を中心として行い、定

時制課程及び通信制課程の卒業者と全日制課程の卒業者との間の差別的な取扱いや、

同和地域の卒業者に対する差別的な取扱いが行われないよう、また、男女雇用機会均

等法の趣旨に添った採用活動が行われるとともに、障害者に対しては格別の考慮がな

されるよう配慮することが求められるところであり、引き続きこうしたことを踏まえ

た関係者の取組が大切である。

(2)慣行の見直しについて

 慣行の見直しについては、文部科学省検討会議報告にもあるように、地域の実情を

踏まえ、学校・企業等が相互の理解を深めながら、見直し・改善について検討するこ

とが現実的であり、理解も得られやすいと考えられる。

(3)その他の視点

 (1)、(2)のような、高卒者の職業移行のあり方に直接焦点を当てる視点とは別に、

職業移行の問題を、高校卒業以後も続くより長期的な問題と考えるならば、生涯にわ

たるキャリア形成がなされるような能力開発や教育に関する環境を整備していくとい

う視点も重要である。
 これら(1)から(3)の視点を踏まえた施策を検討し実施していくことで、まずは高卒

者を含めた若年層の効率的な人的資源の活用・開発が促されることが望まれる。さら

には、そのことが定着率の向上、転職コストの削減などにつながっていくことが期待

される。
 なお、上記の視点を踏まえつつ、当面の施策を次章で検討していくが、その際、よ

り現実味のある施策とするために、本研究会では(1)地域の実情に即して実行するこ

と(ただし各地域の実情が他の地域に公開されるようにする)、(2)対応のメニュー

化を行うこと、(3)問題点の是正から取り組むこと、(4)当面の施策が目標とすべき方

向への確かな前進となることの4点に留意した。

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