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はじめに

1)目的

 これまで円滑に行われてきた高校から職業生活への移行に変化が生じている。
 社会・経済状況の変化を背景に、需要側である企業においては、依然として定期一

括採用が中心ではあるが、学卒労働力、とくに高卒者に対する求人が大幅に減少しつ

つある。また、供給側の高卒者においては、少子化による人口の減少に加え、大学等

への進学率の高まりによる就職希望者の減少傾向が顕著である。このように高卒労働

力については、需給双方において減少がみられるようになってきている。
 さらに近年指摘されているのが、高校卒業後に無業者となる者やいわゆるフリータ

ーと呼ばれる不安定就労者となる者の増加と、高校卒業後に就職しても早期に離職し

てしまう者の増加などである。また、若年層の完全失業率自体も、他の年齢層に比べ

て高水準で推移している。
 このような状況を背景に、高校から職業生活への移行のあり方が問われるようにな

ってきている。これまで大量の就職希望者を短期間でマッチングできる仕組みとして

非常にうまく機能してきたと考えられてきた、高校と企業との信頼関係に基づく高卒

者の就職あっせんの仕組みが、社会・経済環境の変化にともない、生徒と仕事のミス

マッチの発生や卒業後の無業者・フリーターの増加につながっているという可能性が

指摘されている。

 いずれにせよ、このような若年層の持続的な完全失業率の高まりや高校卒業後の無

業者・フリーターの増加は、技能形成、能力開発に重大な支障を生むと懸念されるの

みならず、時間の経過とともに失業者の多いコーホートがそのまま高い年齢層に移っ

ていくことで、マクロレベルでの労働生産性や活力の維持など、経済や社会全体への

影響が生ずる可能性も考えられる。したがって、学卒者の高校から職業生活への円滑

な移行を図り、若年期に適切なキャリアを形成して、産業界の基幹的な人材として活

躍できる環境を整備していくことは、行政にとって、重要な課題と思われる。

 そこで、高校生活から職業生活への移行について実態を把握し、課題を明らかにす

るための調査を行うと共に、現状の分析を踏まえて、新規高卒者の就職支援対策等に

ついて検討を行うことを目的に、厚生労働省が文部科学省と共同で設置したものが

「高卒者の職業生活の移行に関する調査研究会」である。

2)検討の経過

 本研究では、まず文部科学省が先に実施した「高校生の就職問題に関する検討会議」

における検討状況を振り返るとともに、高校生の職業生活への移行に関するその他の

既存研究等の整理を行い、それを踏まえた上で、新規高卒者の就職支援のあり方等に

ついて検討・分析を重ねてきた。これに加えて、高校生の職業生活への移行実態を把

握するために厚生労働省独自の複数回アンケート調査も実施した。
 また、昨年7月には中間報告を行うとともに、これに対する各方面からの意見を聴

取し、今後の施策展開におけるあり方について検討を深めてきた。本報告書は、そう

いったこれまでの検討の結果についてとりまとめたものである。

なお、本研究では、6回の研究会と13回の専門部会を開催し、現在の高卒者の職業生

活への移行に関する問題点の整理や、現行の就職に関する慣行等の実態の把握、今後

の支援のあり方やその方策について検討を行ってきた。また、アンケート調査につい

ては、専門部会(一部は日本労働研究機構)で企画・設計し、在校生調査部分を厚生

労働省が、また卒業生調査部分を日本労働研究機構がそれぞれ実施した。

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