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別添 1





   留学生の就職支援の現状と今後の支援施策のあり方について(概要)

    (「留学生の就職支援のあり方についての懇談会」報告書概要)



はじめに



 経済社会の国際化や技術革新の進展等に伴い、国境を越えた企業活動や人の移動が

活発になる中で、日本へ留学しようとする人が増加を続け、さらに、卒業後に学んだ

知識や技術を生かして日本で就職することを希望する留学生もますます増加している。

一方、企業活動が企業規模、分野を問わず国際化していることに伴い、わが国の企業

では国際的な企業活動を担う人材への要求が高まっている。

 このような状況の中で、留学生の我が国企業への就職を円滑に進めることの必要性

が高まっており、留学生自身の努力はもちろん、企業、就職支援機関等関係者による

環境整備と支援策の充実が期待されている。

 我が国政府は、経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的

分野の外国人労働者の受入れを積極的に推進することとしているところであり、こう

した留学生の就職円滑化への取組みは、留学生が自らの希望に沿ってその能力や個性

を発揮して活躍することを可能にするのみならず、出身国への技術移転ひいてはその

国の経済発展に寄与する人材の養成に資するものと期待される。また、留学生にとっ

て住みやすく能力を発揮しやすい社会や企業内の様々なしくみづくりは、多様な価値

観を持つ労働者がその個性を十分発揮しつつ、意欲と能力に応じて働き続けることの

できる魅力の高い就労・生活環境をつくることにもつながり、日本社会の活性化にも

資するものと期待される。

 以上のような問題意識から、日本の大学の大学院・学部等に留学している留学生

(以下「留学生」という。)のうち、留学終了後に日本企業への就職を希望する者を

対象に実態調査を実施し、それを踏まえて、その円滑な就職を支援するための施策の

あり方の検討を行った。





1 留学生の就職動向



 日本の大学等で学ぶ留学生数は、増加傾向が続いており、2000年5月1日現在で約

6万4千人と過去最高を記録。近年、大都市圏以外の大学においても留学生の受入れを

積極的に進める動きがあり、今後も全国的に留学生数が増加するものと予想。

 我が国企業では、企業活動のボーダーレス化に伴い、海外現地法人における基幹社

員など事業の国際化に対応した要員の確保、あるいは国籍を問わずに優秀な人材を確

保しようとする動きが活発化。このため、語学力や日本留学で培われた専門的能力、

日本の経済、社会、文化等への理解など留学生の特性に着目する企業が増加。

 一方、留学生も、専攻分野や留学終了後に希望する進路の多様化が進み、我が国企

業での就労経験を通じたキャリア形成等を動機として日本企業への就職を希望するケ

ースが増加。

 以上のような状況を背景に、就労のための在留資格への変更を許可された留学生等

の数は平成11年には約3千人と過去最高を記録。留学生の増加等を背景に、日本企業

への就職は今後も増加していくものと予想。







2.調査から把握された留学生の就職の実態



 実態調査(別紙2参照)の結果等から得られた留学生の就職及び企業の留学生雇用

の実態は、概ね次のような状況。



(1) 日本で就職を希望する留学生の態様

    就職の動機としては、「将来のためのキャリア形成」、「日本で勉強したこ

   とを活かしたい」、「母国との架け橋」等が多い。日本企業への就職を通じて

   期待するキャリア形成のイメージとしては、「国、地域、企業の種類には関係

   なく自己のキャリア形成」、「出身国に帰国し新たな職業に就く一過程」、

   「日本企業の海外(出身国)法人の基幹社員を志向」が多い。

    日本で就労を希望する期間については、ある程度長期間(5年以上)勤務する

   ことを前提としている者が多いが、実際には、入社後の仕事の内容と自らのキ

   ャリア形成のイメージが合致し能力を生かせると感じて、当初の考えよりも長

   期に日本で勤務しているという事例も多い。





(2) 留学生の就職の実態

    留学生は、就職についての意思決定に時間を要する傾向。また、就職活動を

   始めた時期についても、日本人学生の場合よりも遅い。

    留学生が求人に応募するにあたっては、事業・仕事の内容、就職後のキャリ

   ア形成等に着目し、企業の規模や企業イメージについてはあまり重視しない傾

   向。

    留学生が就職活動に必要な情報を得る手段としては、大学等の指導教官や友

   人・知人のほか、インターネットを通じて情報を得ている。

    就職活動では,ほとんどの留学生が何らかの困難を感じており、特に、地方

   在住者は就職活動に必要な情報の入手に困難な状況。

    就職活動で困難を感じる事項としては、「求人情報の把握」、「就職活動に

   関するノウハウ等を習得する機会の確保」、「関係機関等が実施している就職

   支援活動へのアクセス」など。ただし、大学(教官)等の推薦を通じて就職す

   るケースでは、具体的な情報入手が容易で、困難が緩和される傾向。





(3) 留学生を採用している企業の実態

    留学生の募集採用を行う動機としては、「事業のグローバル化への対応」、

   「留学生の持つ特性に着目した人材登用」、「国籍を問わない人材登用」が多

   く、いずれの場合でも、なんらかの形で事業の海外展開や国際化の面での役割

   を期待しているケースが多い。

    企業は、留学生の採用に当たって、勤続期間や定期的な配置転換・職域変更

   への適応性について不安を感じる傾向。これが留学生の採用を躊躇させる一因

   にもなっているが、留学生雇用の経験が豊富な企業においては、以上のような

   不安感を訴えるケースは少ない。

    企業が採用に当たって留学生に求める能力・資質は、日本語能力、英語能力、

   専門知識・技術、いわゆる日本的な雇用慣行を受容できる資質、日本及び出身

   国における商慣行などの諸システムへの理解などを重視する傾向がみられる。

    留学生を募集・選考するに当たって、就職を希望する留学生の情報の把握、

   効果的な募集媒体の確保、選考方法について困難を感じる傾向。特に、中小企

   業でこの傾向が強い。

    就職した留学生の半数以上が何らかの職場での悩みや困難を感じており、自

   分の能力が発揮できないなど自己のキャリア形成の悩みや職場の人間関係に関

   する悩みが多い。





(4) 就職支援への期待

    就職活動をしている留学生は、就職活動の留意点やいわゆる日本の雇用慣行

   を内容とする職業ガイダンスの開催、インターネットによる就職活動に必要な

   情報の提供、就職面接会の開催などに期待。一方、企業側では、留学生につい

   ての情報提供、募集に際して留学生との意見や情報の交換ができる場づくり、

   留学生に対する就職準備のための指導・援助、採用後の雇用管理や職業生活に

   関する相談・援助などに期待。





(5) 留学生に対する就職支援の現状

    大学、専門学校等の高等教育機関、官民の就職支援機関、一部の経済団体等

   が個別の就職相談、就職情報の提供、就職ガイダンス、留学生と企業との出会

   いの場づくりなどの就職支援を実施。いずれも、各機関が支援活動を殆ど単独

   で行っている。支援機関相互の連絡・連携はほとんどみられず、各機関とも就

   職支援に必要な情報の収集が課題。留学生や企業にとっては、必要な情報を効

   率的に把握することが困難な状況。







3 就職支援のあり方と施策の方向性



(留学生の問題点の特徴)



(1) 企業等から発信される求人情報の不足や就職支援を行う関係機関の連携不足等

 により、就職活動に必要な情報が不足

(2) 企業の留学生採用の考え方、入社後に期待できるキャリア形成についての情報

 が不足

(3) 就職活動が日本人学生に比べ相対的に遅くなる傾向があり、求人への応募が日

 本人学生に比べて不利になる、等





(企業の募集・採用等の問題点の特徴)



(1) 企業の留学生採用経験が乏しい場合、採用に不安を感じる傾向

(2) 企業の人材ニーズに合致する留学生の把握が困難、等





(関係機関による就職支援の問題点)



(1) 関係機関の連携が不足しており、支援活動に必要な情報収集の把握も困難

(2) NGO等民間支援団体は、各団体の独力での情報の収集には限界があり、公的

 機関等との連携・協力が必要等





(就職支援施策の方向)



 留学生や企業それぞれの個々の支援対象の態様や支援ニーズに合致したきめ細やか

な支援策の提供を図ることが重要。就職支援施策の方向としては次のものを挙げるこ

とができる。



(1) 留学生の就職活動のきっかけづくり

(2) 留学生の職業準備の円滑化

(3) 留学生にとって働きやすく魅力のある職場づくり

(4) 留学生の雇用経験に乏しい企業等の留学生雇用への不安の解消

(5) 留学生、企業に対する情報不足への対応のための体制整備

(6) 留学生と企業の橋渡しの場づくり

(7) 留学生の就職支援に関する関係機関の連携体制づくり





(各関係者・関係機関に期待される役割)



 留学生の就職の円滑化を図るために、関係者(機関)には以下のような役割が期待さ

れる。

 さらに、個別の支援の取組みの効果を高めるためには、各機関の持つ特性を活かし

て相互の連携・協力の下で、留学生、企業等支援対象者のニーズに応じた支援サービ

スを提供することが重要。



(1) 留学生

 ・企業が求める技能・技術・能力の把握と習得、就職活動の留意点や企業の人材活

 用方針に関する情報の収集等について、主体的、積極的に努力



(2) 企業

 ・留学生の職務遂行能力等への理解と留学生の採用方針の明確化、

 ・留学生に求める技術・技能・資質、採用・入社後のキャリア形成の考え方等につ

  いての留学生、就職支援機関への情報提供、等



(3) 大学等教育機関等

 ・企業が求める技能・技術・能力・知識の把握と留学生がそれを習得するための支援、

 ・留学生の適職の把握や就職の意思決定に向けた情報提供、相談等の援助、等



(4) 職業安定行政機関

 ・留学生の就職の円滑化に関する関係機関との連携及び働きかけ、

 ・留学生の就職に関する実態の把握、

 ・求人・求職情報の把握・提供及び個別の職業相談・職業紹介の実施、

 ・留学生募集(募集方法・条件等)や雇用管理についての相談の実施、等



(5) その他の就職支援機関(留学生支援機関・団体等)

  就職支援機関の特色や機能に応じて、就職活動のきっかけづくり、就職活動に必

 要な情報の提供、就職相談等の幅広い支援を提供



(6) その他の関係機関

 ・経済団体には、企業の雇用システム、就職活動の留意点などを理解するための場

  づくり、他の支援機関による支援活動への情報提供・協力及び上記(2)に挙げた企

  業に期待される取組みについての働きかけや支援

 ・地方自治体には、各種相談の実施等による職業生活に関連した社会・生活面のサ

  ポート





(職業安定行政が取り組むべき具体的な支援施策の例)



(1) 留学生の就職支援に関する関係機関の連携体制づくり及び連携による施策の実施



 ・関係省庁、大学等教育機関、経済団体、民間支援団体などの関係者から構成

  される連絡会議を発足させ、支援施策等についての企画・検討及び具体的な支

  援施策等の実施のための調整

  

 ・同連絡会議の検討を踏まえて、留学生に対する情報提供を通じた就職活動のき

  っかけづくり、留学生の雇用経験に乏しい企業に対する相談・援助、留学生出

  身者が能力を発揮できる職場づくりに向けた相談・援助等について、関係機関

  とともに施策の実施、あるいは関係機関の行う施策に対する支援



(2) 関係省庁との連携の下に留学生の就職に関する調査の実施

(3) インターネットを活用した情報提供サービスの充実のための体制整備

(4) 他の就職支援団体(NGO等を含む。)に対する支援の実施等





   

別紙1:「留学生の就職支援のあり方についての懇談会」参集者名簿

別紙2:留学生の就職に係る実態調査の実施について

別紙3:留学生数の推移、留学生等からの就職目的の在留資格許可数

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