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            I 検討の趣旨 



1 背景



(1)職業紹介機関の拡大と職業情報



 従来、公共職業安定機関が主として行うこととされていた職業紹介、就職支援につ

いては、さまざまな形で民間機関における拡大がみられ、平成11年7月の職業安定

法改正以後、名実ともに、公共及び民間の各機関がその特性、活力等を活かし、労働

力の需給調整を円滑、的確に行うこと、また、そのための基盤整備が必要であること

の認識が高まってきている。

 これまで、旧労働省は改正前の職業安定法に基づき、「労働省編職業分類」を作成

し、公共職業安定所における職業紹介や労働統計・調査などに使用してきた。また、

これは民間の労働力需給調整機関においても適宜参考にされてきたが、改正職業安定

法第15条においては、職業安定局長は官民を問わず職業紹介事業等に共通して使用

されるべき標準職業名を定め、普及に努めることとされた。

 こうした中で、職業名を中心とする職業情報の現状をみると、民間の労働力需給調

整機関は、求人・求職の動きを敏感に反映した独自の職業区分の設定等、それぞれ独

自の職業分類体系を発展させている。これらは、それぞれの目的に添った形で整備さ

れており、それぞれの利用に当たって非常に使いやすい、分かりやすいものになって

いるが、相互の共通性は乏しい。また、多くは、職種名のみ、あるいは簡単な職務内

容の記述程度にとどまっており、求人・求職者がその意志決定の際に必要とする様々

な情報ニーズに対応できているとは言い難い面もある。また、民間機関が使用する職

業分類体系と「労働省編職業分類」との間で、必ずしも照合が可能とは言えない。



(2)多様な職業情報提供の必要性



 産業構造の比重が情報・サービス分野にシフトし、精神的活動が仕事内容の大きな

部分を占めるようになってきている現状では、職業情報の捉え方も、使用する道具や

原材料・設備、製品・サービスの種類と強く結びついた職業名中心の考え方から、新

たな展開が求められるようになってきている。

 一方、労働移動を積極的に捉え、転職を経験しながらキャリアを形成していくとい

う意識も拡大しており、また、企業内外の円滑な労働移動も図りつつ中高年齢者の経

験や能力を積極的に活かすことが課題となっている。こうした状況の下で、求職側の

情報として能力・経験を的確に明示すること、求人側の情報として、仕事の特性(職

務内容、職務遂行の要件など)だけでなく就業する人の特性(スキル、能力、適性な

ど)を明らかにすることなど、円滑な労働移動を実現する観点から、いわゆる職種の

みによらない、多様な職業情報の提供が求められてきている。



(3)情報化の進展



 インターネットをはじめとする情報通信技術が急速に進展し、特に、情報のインタ

ーラクティブ性、多様な検索機能、現場情報の迅速な反映を可能とするネットワーク

技術の進展が、手段としての情報化をもたらすのみならず、職業情報の質をも、静的

なものから常に現場の状況の変化を反映した動的なものへ、また、多様な情報を有機

的に組み合わせることが可能なものへといった変化をもたらす可能性が生じてきてい

る。



   

2 官民職業情報検討委員会の目的及び進め方



 本検討委員会は、上記1の背景を踏まえ、官民にわたる労働力需給調整が円滑に進

められていくための職業情報の提供のあり方について、広範な視点から検討すること

とした。

 すなわち、職業名は職業情報の基本的な情報であるが、職業名だけでは職業のイメ

ージを伝えることが困難になってきており、職業を理解し、職業選択、求人、求職、

能力開発、雇用管理等に活用していくためには、職業名以外のさまざまな職業情報が

提供される必要があるとの基本認識のもと、改正職業安定法第15条に規定された

「官民共通の職業名」について従来の職業解説的な面からそのあり方を検討するだけ

でなく、まず、職業情報をめぐる課題の実証的な検証を行い、これをもとに、今後の

職業情報のあり方について幅広い視野から検討・提言することとした。

 具体的な進め方としては、本委員会において課題を概観した後、こうした課題に関

連する内外の現状を実証的に把握するため、検討部会に、職業情報ニーズ及び職業情

報提供の現状に関する調査、海外における職業情報提供に関する取組状況の把握等を

付託した。検討部会は、求職者、求人者、職業紹介・求人情報誌会社を対象とした聞

取り調査及びアンケート調査を行うとともに、アメリカのO*NETを中心とする職業情

報提供システムについての現地調査を実施し、その結果を本委員会に報告した。本委

員会においては、この報告を踏まえ、官民にわたる円滑な労働力需給調整に資する職

業情報の収集、蓄積、分析、提供のあり方について検討を行った。

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