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        介護福祉士試験の実施方法に関する検討会報告書



                            平成13年3月30日

                   介護福祉士試験の実施方法に関する検討会

I はじめに



 介護福祉士資格取得者数は、昭和62年5月の社会福祉士及び介護福祉士法の制定

以来、順調に増加し、平成12年9月には約21万人となっている。

 このうち約12万人が介護福祉士試験に合格した者であり、制度の定着化に伴い、

回を追うごとに受験者数が大幅に増加しており、今後も増加が見込まれる。

 一方、平成12年4月には介護保険法が施行され、同年6月には社会福祉法が施行

されるなど、福祉を取り巻く環境は大きく変化している。

 こうした中で、福祉サービスの質の向上が強く求められており、平成12年4月に

は介護福祉士養成施設の教育課程の改正が行われ、同年11月21日には、教育課程

の改正内容に対応した介護福祉士試験(筆記試験)とするため、「介護福祉士試験改

善検討会報告書」が公表されたところである。

 一方、実技試験については、平成6年6月に財団法人社会福祉振興・試験センター

において、実技試験の実施上の問題点及びその問題点を解決するための試験実施方法

の合理化、省力化と実技試験の様々な実施方法についての意見を中心的な内容とする

「実技試験の在り方検討会報告書」がまとめられている。

 本検討会においては、これまでの実技試験に関する検討内容等も踏まえつつ、近年

の実技試験受験者の急増に対応した適切な実技試験の実施方法と妥当性、信頼性のあ

る試験とするための改善について検討を重ね、今般、その結果を取りまとめたので、

ここに報告する。



II 介護福祉士試験実技試験の改善の基本的考え方



 介護福祉士試験は、社会福祉士及び介護福祉士法第40条の規定に基づき、介護福祉

士として必要な知識及び技能について一定の水準に達しているかどうかを問う資格試

験であり、その水準を確保することが本来の目的である。

 実技試験の受験者は、受験資格の対象となる実務経験等が様々であり、介護の方法

や対象者が多岐にわたっていることから、介護福祉士としての必要な技能について的

確に評価できるものでなければならない。

 特に、サービスの質の向上が重要な課題となっており、国民の期待に応える質の高

い介護サービスを提供するため、実技試験の在り方をここで見直すことが求められる。

 なお、実技試験の実施にあたっては、近年の受験者の急増に対応した試験会場の確

保や試験委員、試験監督員等試験の実施にあたる要員の確保、試験問題の取扱いにつ

いての厳重な秘密保持等が課題となっているため、試験事務の合理化、効率化の観点

も含めて検討する必要がある。



III 介護福祉士試験実技試験の改善事項



1 採点基準の見直し



(1)介護の動作や方法に関する採点基準



 実技試験は、介護の動作や方法について客観的評価を行うものである。

 しかし、これまでの採点基準では、課題にそった介護を行えたかに重点がおかれ、

介護技術の基本的知識についての評価に偏っているという指摘がある。

 介護技術に含まれる基本的知識については、筆記試験でも評価することが可能であ

ることから、実技試験では、筆記試験では評価できない部分である安全・安楽等に配

慮した介護技術の提供過程を的確に評価することができるよう採点基準を改善する必

要がある。



(2)利用者の安全・安楽の重視



 利用者の安全・安楽を脅かすような行動は、介護福祉士として不適格である。

 したがって、実技試験において、転倒・転落等の危険な行為や利用者の身体を強打

したり、安楽を脅かすと判断される行為等をした者については、試験を中止させ、結

果として、実技試験は不合格とすることが適当である。



(3)自立支援、人権尊重等を重視した配点



 介護福祉士として提供する介護技術は、介護を要する生活場面について援助し、動

作可能な部分やリハビリテーションの効果が期待される部分については適切に判断し、

利用者の個別性に応じた自立の支援をすることとされており、個人が人としての尊厳

をもって、安心して介護を受けられるような配慮がなければ不適切なものとなる。

 したがって、自立支援、人権尊重等についての採点基準を重視し、配点の比重を重

くする等の工夫をすべきである。



2 合否基準の見直し



(1)判定水準の設定方法の見直し



 これまで実技試験は、1課題5分間の実技試験を実施してきたが、その試験課題は、

介護福祉士として必須の技能に着目して、日常的に実施している介護技術の客観的か

つ普遍的な基本的要素について試験課題としており、その難易度についても、これま

での蓄積を通じて一定のレベルが確立しつつある。

 また、実技試験は、一つの試験課題について、介護技術の提供過程そのものを評価

することを目的としており、平均点や標準偏差等による、いわば相対的な評価ではな

く、あらかじめ介護福祉士として必須の技能レベルとして設定した水準を合否基準に

反映させるといった方式について検討すべきである。



(2)試験の中止



 採点基準に準じて「試験中止」と評価された場合は、介護福祉士として有すべき技

能に至ってないと判断されることから、これに該当した者は、不合格とすることが適

当である。



(3)「時間切れ」の取扱い



 試験課題を試験時間内に完了することができなかった場合は、全ての採点項目につ

いて評価することができないため、原則として、不合格とすることが適当である。 



3 実技試験の改善に伴う筆記試験の見直し 



 筆記試験において、介護技術に関する出題をする際に、必要であれば、介護の現実

の場面を想定した絵図等を用いた、いわゆるイラスト問題を導入する等、適正な問題

となるよう工夫する。 



4 筆記試験免除の見直し



 筆記試験に合格した者については、その申請により、筆記試験に合格した介護福祉

士試験に引き続いて行われる次の2回の介護福祉士試験に限り、筆記試験を免除する

(社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第22条3号)こととなっている。

 しかし、筆記試験と実技試験の関連性を高め、知識と技能について一体的に評価し、

介護福祉士試験の信頼性を向上させるためには、筆記試験を免除することは、本来、

妥当ではないことから、今後、見直す方向で検討すべきである。



IV 適用時期 



 これらの改善事項は、実技試験の妥当性、信頼性を高めるためのものであり、速や

かに対応すべきであるので、筆記試験の改善に合わせて、平成14年3月の第14回

試験から実施すべきである。



V 今後の改善の方向性 



 今後も、介護福祉士試験として妥当で、信頼性のある試験とするために定期的な見

直しを行っていくとともに、介護福祉士となる者の質の向上を図るため、長期的な展

望の下、不断の検討を行う必要がある。

 特に、実技試験を改善するためには、出題が困難とされてきた入浴、排泄、食事等

の介護技術についても試験を実施するとともに、試験時間を拡大すること等が求められる。

 本検討会においては、従来どおりの実技試験の実施方法では限界があることから、

実技試験に代わる講習会の導入等についても検討した。

 しかし、近年の急増する受験者に対応する講習会を開催するための十分な受け皿を

確保し、さらに、講習会終了後、履修について評価認定を行うことが必要となった場

合、公平な評価をすること等が現状では困難と判断されたことから、今回は結論を得

るに至らなかった。



VI 結びに 



 実技試験時間と出題内容の妥当性については、これまで述べてきたように、今後も

引き続き検討が必要であるので、今回の改善結果を踏まえながら検討を行うべきであ

る。

 また、「今後の改善の方向性」において、実技試験に代わる講習会について検討さ

れたが、介護福祉士の質の確保は、試験制度とは異なるが、再教育システムの導入や

生涯教育の充実、あるいは、多面的な評価に基づく研修等とあいまって可能となるも

のであることから、今回の改善が実効性を伴ったものとなるよう行政をはじめ関係各

位の一層の努力を期待する。



介護福祉士試験の実施方法に関する検討会委員名簿
氏名 職名
  石橋 真二 社団法人日本介護福祉士会副会長
江草 安彦 社会福祉法人旭川荘理事長
  岡部 純子 神奈川県衛生部参事
  佐野 利昭 全国社会保険協会連合会常務理事
  高橋 美智 日本看護協会出版会副社長
  竹中 浩治 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団理事長
  古都 賢一 名古屋大学大学院法学研究科助教授
  村川 浩一 日本社会事業大学社会福祉学部教授
◎印は座長



 

 (参考1)介護福祉登録者数の推移

 

 (参考2)介護福祉士の資格取得方法

 

 (参考3)介護福祉士国家試験の結果

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