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2 少子化社会への対応:4つのアピールと10のアクション





 (アピール2)子育てという選択をする生き方が不利にならないよう、「育児の社

        会化」を進め、企業・地域・政府こぞって子育て家庭を支援する



   親は子育てをする責任があるのは当然ですが、子育てをするという選択をする

  ことで、自分の人生に大きな犠牲や負担を強いられるといった不利を被ると感じ

  られるようであれば、そうした選択はしにくくなります。

   出生から学童期まで、子育ての責任と負担を親だけが背負い込むことがないよ

  う、社会全体で子育て家庭を支援していくことが必要です。高齢者の介護につい

  ては、社会全体で支援するものという考え方が一般化し、「介護の社会化」とい

  う考え方が常識になっています。育児についても、アクション(2)で記したよう

  な企業における取り組みだけではなく、企業・地域・政府こぞって子育て家庭を

  支援していくこと、つまり「育児の社会化」を進めていくことが必要です。その

  結果、親の子育て負担が軽減され、親子関係がよくなることも期待されます。

   なお、この場合「支援」とは、国や地方自治体によるサービス提供や経済的支

  援だけを意味するのではなく、情報提供や相談、民間での取り組み、環境整備な

  どを広く含めた意味です。





  

  アクション(3) 地域における子育て家庭を支援するための幅広いネットワーク

         をつくる



    地域における子育て支援については、これまでも、共働き家庭を対象とした

   保育サービスがありました。「待機児童ゼロ作戦」を推進し、今後とも子育て

   と仕事の両立のため、学童保育も含めた保育サービスを充実することはもちろ

   ん必要ですが、その際には、働き方の多様化に対応して、子どもの保育ニーズ

   も変化するため、通常の保育だけでなく、保育時間など多様な形での保育サー

   ビスを普及させていくことも重要です。

    また、保育サービスとのギャップの大きい小学校低学年の子ども達の放課後

   生活をより豊かにしていくための施策の充実も必要でしょう。さらに、共働き

   家庭のみならず、片働き家庭やひとり親家庭を含めて、すべての子育て家庭を

   対象として支援するとともに、育児の孤立化による育児不安の解消など、地域

   における様々な取り組みの充実を進めていくことが必要です。育児不安が大き

   く、また、仕事などで社会的活動が制限されがちな障害児の親の支援も重要で

   す。

    子育て家庭を支援する場合、となり近所の人々で子育てを支え合うとともに、

   地域における子育て支援のための資源を有機的に結びつけて、ネットワークと

   して機能するようにすることが必要です。従来の保育所や自治体のサービスだ

   けでなく、子育て中の母親が集まってつくる子育てサークル等や、中・高年齢

   者による子育て支援活動など、草の根のNPOの動きが地域で活性化してきて

   おり、これらの間のつなぎ・連携を図っていくことが重要です。こうした活動

   の場を提供し育てていくためには、これらのサービスの提供に当たっては、住

   民に最も身近な自治体である市町村の存在が最も重要であり、市町村が自ら責

   任を持って支援することが必要です。

    また、地域における各種の子育て支援サービスが、利用者に十分知られるよ

   うに、情報を提供するなど、供給者と利用者の「つなぎの作業」も必要でしょ

   う。

    さらに、地域毎に特色があり、サービスの充足度もちがうので、それを踏ま

   えた対応が必要です。例えば、都市部においては、保育所の待機児童の問題へ

   の対応が求められます。一方、都市部よりも農村部の方が合計特殊出生率自体

   は高いものの、過疎化が進行し、少子化への対応が切実に感じられていること

   も多いので、地方から発信して運動を広げていくということも考えていく必要

   があります。そのために、自治体ごとにアクションプランを作成し、地域ごと

   に主体的な取り組みを行うことも考えられます。





  

  アクション(4) 子育てバリアフリーを推進する



    子どもを連れて街を歩くと、公共施設、映画館、コンサートホール等の娯楽

   施設やデパートなどで、授乳設備や乳幼児コーナー、おむつ交換用ベッド付き

   のトイレなどがあればと思うことがあります。車いす用のトイレや歩道の段差

   の解消などの障害者向けバリアフリーのように、子育てをしていく際に支障が

   ないようにまちや建物を設計する「子育てバリアフリー」を進めてほしいと思

   います。子育て家庭に対し、広くゆとりがある住宅や、保育所と住宅との一体

   的整備など、子育て支援サービスに身近に接することができる住宅を提供する

   ことも求められます。

    日本は子どもに無関心で、ときには子どもを排除するような社会だといわれ

   ることがあります。公共交通機関などにおいて子どもをつれた家族などに優先

   乗車をおこなったり、まわりの人が配慮をしてあげるような、意識面でのバリ

   アフリーも求められます。





  

  アクション(5) 子育て支援は妊娠・出産からはじまる



    子育て支援は妊娠・出産という子どもが産まれる前の時点から始まると考え

   るべきです。発達段階に応じて、性に関する正しい理解の普及を行うことで、

   性感染症を予防したり、望まない妊娠や、これにともなう中絶を減らし、これ

   らを原因としておこるかもしれない心身のトラブルを予防する効果も期待でき

   ます。

    また、第1子の出産でつらい思いをし、「もう子どもは産みたくない」とい

   う気持ちになるようなことのないよう、安全で快適な「いいお産」ができるよ

   うなケアを提供できるようにする必要があります。妊産婦が選び、満足できる

   ようなケアが求められています。お産に妊産婦が主体的に関わることができる

   ようになることで、主体的な子育ての準備になることが期待されます。

    健康診査や小児医療、出産前後における精神的不安(産後うつなど)や出産

   前後に子を亡くした親等への理解、サポート、ケアなど、母子保健、周産期医

   療等の推進も重要です。

    子どもを持ちたいのに不妊が原因で子どもができない男女が、不妊治療を受

   けるケースが多くなっています。倫理的にどこまでを容認すべきかといった問

   題、技術の有効性・安全性、医療機関の体制整備、さらには、経済的な負担、

   不妊治療を継続して受けられる職場環境の整備などの問題があり、その在り方

   を検討する必要があります。





  

  アクション(6) 社会保障などにおいて次世代を支援する



    現役世代が保険料や税金を払って制度の支え手となり、高齢者世代に年金や

   介護などの給付をする世代間扶養の色彩が強い社会保障制度においては、子ど

   もは次の時代の社会保障の支え手としての意味を持っています。子どもを育て

   ることは次の時代の社会保障の支え手を育てることですから、社会保障制度を

   持続可能にするために、子育てに対し社会保障制度上なんらかの配慮をする必

   要があると考えます。とりわけ、負担と給付の対応を基本とする社会保険制度

   を活用し、既存の給付との関係を整理した上で、子育て家庭に配慮を行うこと

   は考えられないでしょうか。長い目で見れば支え手が増え制度を安定させるこ

   とにつながり、将来に対する国民の安心感を作り出すことになるのです。

    現在の社会保障給付費のうち高齢者関係は67を占めるのに対し、子ども・

   家庭関係は3%にしかなりません。また、今の制度では、子育てをするしない

   に関わらず、社会保険料は同額で、給付も同一であることが原則ですが、多様

   な働き方の実現とあわせて、子育て家庭に対する配慮措置を拡充し、次世代の

   育成を支援することなども考えてよいのではないでしょうか。

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