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1 どのような社会を目指すのか





 (多様な生き方が可能になる社会)



   これまでの企業社会の典型的な働き方は、特に男性に対し家庭や地域社会での

  役割などよりも仕事を優先することを求め、そうでなければ仕事をやめるしかな

  いという「単線型社会」だったといってよいのではないでしょうか。

   一方で、人々の意識や価値観が多様になり、「仕事も家庭も」といった考え方

  や、自己啓発や地域社会での役割を大事にしたいという考え方もあり、またその

  考える内容も多様化しています。こうした中で、「多様な価値の選択に基づく生

  き方が可能になる社会」になることが求められるに至っています。そして、多様

  な価値の選択に基づき、新たな挑戦ができることが、個人の個性や能力を十分に

  発揮させることになり、経済や企業の活力をも生み出すという考えに立つ必要が

  あります。





  

 (子どもを育てたい、育てて良かったと思える社会)



   こうした「多様な生き方が可能になる社会」とは、少子化社会との関連で言え

  ば、家庭を持って子育てをするという生き方が無理なく選択できる社会です。子

  育ての努力が報われると感じられれば、子育てをするという選択が可能になりま

  す。社会心理学では、「希望は、努力が報われるという見通しがあるときに生じ

  る」と言われます。「子どもを育てたい、育てて良かったと思える社会」は、希

  望の持てる社会といってよいのです。





  

 (子育てという選択をする生き方が不利にならない社会)



   「子どもを育てたい、育てて良かったと思える社会」のための条件は、「子育

  てをする生き方が不利にならない社会」です。ここで不利とは、経済的な観点だ

  けを言っているのではありません。家庭を持って子育てする際に、自分のやりた

  いことを全く犠牲にしなければならなかったり、子育てそのものや、子育てと仕

  事の両立について、肉体的・精神的に著しく大きな負担を自分だけで背負い込ま

  なければならなかったり、生活水準を大きく下げなければならないようであれば、

  子育てをするという生き方を無理なく選択できるとは言えません。





  

 (子どもや若い世代の成長と自立を支援する社会)



   愛する者と子どものいる暮らしは、喜びが大きいものですが、苦労も伴うもの

  です。こうした選択をするためには、人生に前向きな自分の生き方の選択の1つ

  として、愛する者とともに子育てをするという生き方に「挑戦」できるように、

  精神的にも経済的にも自立した人間になることが求められます。そのためには、

  子どものころから、「いのち」の大切さにふれ、生きる力を持った自立した人間

  になれるよう社会が支援することも必要です。

   また、子育ては、若い世代が積極的に社会に参加していくということであり、

  人を育てることで親も成長していくのだということも、見逃すことはできません。

   このような意味で、「子どもを育てたい、育てて良かったと思える社会」の前

  提は、「若い世代が成長し、自立することを支援する社会」です。





  

 (子どもも大人も生き生きと暮らせる、活力ある社会)



   このように「子どもを育てたい、育てて良かったと思える社会」をつくりあげ

  ることで、結果として、子どもの歓声が聞こえる「活力ある社会」になることが

  期待されます。子どもは「未来からの預かりもの」です。「児童福祉法要綱案」

  (昭和22年)において「子どもは歴史の希望」とうたっているように、子ども

  は次の時代に希望と活力を与えます。いま、「いのちの世紀」である21世紀が

  始まるに当たり、子どもにより希望と活力を与えられる社会をつくりあげようで

  はありませんか。

   こうした希望と活力のある社会はまた、「子ども自身も大人もお年寄りも生き

  生きと暮らせる社会」でもあります。「子どもがいる風景」がふつうである社会

  では、子どもが親や社会の都合に合わせて生きるのではなく、子どもが自分のリ

  ズムで生きられるようになり、大人もお年寄りも無理なくのびのびと暮らせる社

  会になるのです。

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