IV 企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題 2 企業組織再編時における労働関係上の問題点及び対応 (2)合併 合併の場合には、合併の効力発生の時に現に存在する解散会社のすべての権 利義務が存続会社又は新設会社に包括的に承継されることになる。すなわち、 労働関係についても、解散会社のすべての労働者の労働契約上の地位と内容は 存続会社又は新設会社に包括的に承継され、解散会社が締結している労働協約 はそのまま存続会社又は新設会社に承継される。このため、合併の場合には、 特定承継である営業譲渡や一部の労働者の労働契約が包括承継される会社分割 と異なり、労働契約や労働協約の承継について、基本的には、法的な問題はな い。 合併の際に労働契約は包括承継されるので、その際の労働条件等に関する留 意事項は、労働契約が包括承継される会社分割の場合と同じである。労働契約 承継法の指針の労働条件等に関する事項の記述を参考に、合併の場合の留意事 項について、周知することが適当である。 また、合併の場合にも、労働契約は承継されるとはいえ、企業組織は大きく 変更されることになるので、労働組合や労働者に対して、新しい会社の概要な どに関する十分な情報が提供される必要がある。この点について、営業譲渡の 場合に準じて、情報提供や労使協議のあり方を示すべきである。 (3)会社分割 平成13年4月1日より施行されている会社分割制度を用いた組織再編が、 活発に行われるようになってきているところである。 これに伴う労働契約の承継等に関しては、同日より労働契約承継法やこれに 基づく指針等が施行され、一定の労働者保護が図られているところである。こ れらの施行状況をみると、施行後間もないこともあり、特別な問題は生じてい ないものと思われる。今後ともこの労働契約承継法やそれに基づく指針等に沿 って適正な措置が講じられることが重要であり、そのための周知啓発が十分に 図られることが必要である。 会社分割については、法律施行後まだ間がなく、検証する事例も少なかった ことから、本研究会では、主たる検討の対象とはしなかった。今後の状況を見 つつ、必要に応じて検討することが適当であると考える。