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IV 企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題



 2 企業組織再編時における労働関係上の問題点及び対応



 (2)労働契約の承継に伴い考慮すべき事項



  2)営業の一部譲渡のうち、不採算部門の譲渡などで承継されない労働者がいる

   ために問題が生じている場合



     営業の一部譲渡の場合であっても、一部には、当該譲渡部門の労働者の一

    部を譲受会社に承継しながら、その他の労働者を解雇するケース、また、当

    該譲渡部門の労働者を全員解雇した上で、そのうちの一部の者のみを譲受会

    社が再雇用しているケースがある。



     営業の一部譲渡で、譲渡会社が譲渡部門を除いた部門で経営を継続してい

    る場合には、譲渡部門で働いていた労働者のうち、譲受会社に承継されない

    者について、営業譲渡に伴って譲渡会社との労働契約関係に変更が生じるも

    のではなく、そのまま譲渡会社との労働契約が継続する。これは、譲渡会社

    が転籍を求めたがそれを拒否した労働者であっても、当初から譲渡会社が転

    籍を求めなかった労働者であっても、同じである。



     譲渡会社と譲受会社との営業譲渡を巡る交渉において、譲渡部門の労働者

    すべては譲受会社に承継しないこととなった場合には、譲受会社に承継され

    ない労働者について、譲渡会社が使用者としての雇用責任を負っている。営

    業譲渡によって当該部門がなくなったとしても、譲渡会社は、当該会社全体

    として、雇用責任を果たさなければならない。すなわち、譲渡会社は、それ

    らの労働者について、営業譲渡した部門以外の部門への配置転換など、雇用

    の継続に最大限の努力を払う必要があり、安易に整理解雇することは許され

    ない。営業譲渡に伴う解雇については、事業所の一部閉鎖に伴い当該閉鎖部

    門の労働者を解雇する場合と同様に考えるべきであり、整理解雇に関する法

    理の適用があること、それまで働いていた部門が譲渡されたことだけでは解

    雇の正当な理由とはならないことなどを使用者に周知すべきである。



     なお、EU既得権指令においては、営業譲渡に伴って当該部門の労働者は

    譲受会社に承継することとされており、営業譲渡自体を理由とする解雇は禁

    止されているが、一方では、譲受会社が、営業譲渡に伴い、雇用に変更をも

    たらす経済的理由等により行う解雇については制限されていない。譲渡部門

    に余剰の労働者がいる場合に、我が国の制度では、当該労働者をそれまで雇

    用してきた譲渡会社が対応することになるのに対して、EUの制度ではいっ

    たん譲受会社に承継した上で譲受会社が対応することになる。譲渡会社の経

    営状況等にもよるが、我が国の制度が労働者にとって必ずしも不利益に働く

    わけではないと考える。

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