戻る


III 企業組織再編に伴う労働関係上の実態



 1 国内の現状について



 (1)営業譲渡



  (3)労使協議の実態



   1)譲渡会社における労使協議



     営業譲渡の際の譲渡会社における労使協議については、譲渡会社と譲受会

    社間による営業譲渡基本合意書の締結後に、譲渡会社から労働組合に対して

    営業譲渡を行うことについて正式に通知し、これを受けて直ちに労使協議を

    開始し、営業譲渡の背景・必要性及び雇用・労働条件の取扱い等について数

    次にわたり協議し、その結果合意に至る、というものが多くみられた。

     企業にとって営業譲渡は、極めて機密性の高い事項であることから、一般

    的に譲渡会社から労働組合等に対する営業譲渡に係る通知は、営業譲渡基本

    合意書を締結し、報道発表した以後になることが多い。この点に関して、労

    働組合等からは、営業譲渡について了知してから営業譲渡が行われるまでの

    期間が短いため、労働組合として十分な対応が困難であるとの指摘がある。

     労使協議は、通常、雇用確保、労働条件維持に関する協議が中心となって

    いる。この場合、個別の労働組合は、営業譲渡への対応が初めてで戸惑いが

    みられることが少なくないが、上部団体と連携して、上部団体の経験やノウ

    ハウを活用して適切に対処している事例もみられた。

     なお、譲渡会社及び譲受会社の双方で労働組合が組織されている場合、営

    業譲渡に当たって、譲渡会社及び譲受会社双方の労働組合間で話し合いの場

    を持つケースは、両組合が同じ上部団体の傘下にある場合や、両組合が友好

    労組の関係にある場合を除くと、あまりみられなかった。



  

   2)譲渡会社と個別労働者との関係



     譲渡会社と個別労働者との間の手続としては、営業譲渡基本合意の報道発

    表直後に、各職場で管理職から労働者に対して営業譲渡についての説明がな

    され、営業譲渡についての労使協議での合意成立後に、譲渡対象部門に在籍

    する労働者との間で転籍等に係る希望聴取を行う、というものが多くみられ

    た。

     一方、譲渡会社に労働組合がない場合や営業譲渡基本合意の報道発表がな

    い場合において、譲渡会社の労働者が、転籍の個別同意を求められる段階で

    初めて、営業譲渡が行われること及びそれに伴う自身の労働条件を含めた雇

    用関係の変更について了知するというケースも見られた。



  

  (4)労働協約の取扱い



    労働協約の承継の有無については、個々の事例において対応が分かれている

   ところであり、譲渡会社との間で締結していた労働協約がそのまま承継される

   ケースや、譲渡後一定期間は従来譲渡会社との間で締結されていた労働協約が

   適用され、一定期間経過後に新たに譲受会社との間で労使交渉して協約を作成

   し直すこととしているケースがみられたほか、譲受会社で新たに労働協約を締

   結し直すことや譲受会社の意向等を理由に、営業譲渡に際して従前の労働協約

   が全く承継されない場合もみられた。

                     TOP

                     戻る