3 社会保障負担の水準等について 本研究会では、負担の賦課の在り方を主たる検討テーマにしたが、負担の水準に ついても若干の検討を行った。 (2)分野間のバランス 社会保障負担の合計が過重なものにならないためには、各分野間の相互調整を 行い、バランスのとれたものにしていく必要がある。 (1)年金・医療・福祉間のバランス ・現在、年金・医療・福祉等の分野別に見ると、年金の比重が高いのが日本の 社会保障の特徴になっている。平成6年の「21世紀福祉ビジョン」では介 護や子育て支援等福祉の水準を思い切って引き上げ、5:4:1から5: 3:2にするべきだとし、その後、福祉の比重は高くなってきたが、今後は、 負担の限界を考え、分野間の優先関係を一層考えていく必要がある。 ・分野間の優先関係を論じる場合、「社会保障は年金を基本にし、自立できる 生活基盤を確保した上で、高まる医療や介護の保険料や利用時自己負担は年 金で賄う」という考え方と、「あらかじめ準備がしにくいリスクであり、個 人が自立した生活を営む前提条件である医療や介護への対応を優先し、あら かじめ準備しやすい年金は基礎的なものに抑える」という考え方がある。我 が国では前者を基本にこれまで対応してきているが、自己負担水準や、社会 保障に係る国庫負担の投入順位の決定に関わる問題であり、基本的な考え方 について広範に議論を行っていくことが必要である。 ・分野間の関係を論じる際には、給付の重複についても調整すべきである。こ うした観点から、年金を受給しながら長期入所などをしている者の入所費用 等については、自己負担を一層求めるべきであり、居住・食事のコスト(い わゆるホテルコスト)などは自己負担として年金で賄い、医療・介護ケアの コストを公的に給付するように整理していくことが望ましい。 ・このほか、労災と年金など、所得保障制度間の調整も図っていく必要がある のではないか、という意見があった。 (2)高齢者関係と児童関係のバランス ・これまでの社会保障は高齢者関係の比重が高かったが、許される負担の水準 が限られていることから、子育て家庭の負担軽減や次世代育成の観点から児 童・子育て支援関係に比重を移していく必要がある。こうした観点から、高 齢者が経済的弱者であることを前提とした年金や医療・介護の高い給付水準 や給付率を見直し、子育て支援関連サービスなどの給付を手厚くしていく方 向で考えるべきである。具体的には、サービスに関する育児支援保険や年金 制度体系における次世代育成支援給付の創設など、社会保険の仕組みを活用 すべきだという考え方がある。 (3)公的社会保障でカバーすべき部分と個人で対応すべき部分のバランス ・負担を過重にしないためには、公的社会保障でカバーすべき部分と個人で対 応すべき部分はどうあるべきかを考えた上で、公的社会保障の守備範囲を見 直すべきである。ただし、公的保障の守備範囲はどうあるべきかは、基本的 には各分野ごとの給付の在り方として決定されるものであり、制度横断的検 討にはなじみにくい問題である。