戻る


2 能力に応じた公平な負担の賦課の在り方について



 (3)低所得者の取扱い



   全国民の保険料負担を前提とした皆保険制度においては、低所得のため保険料

  負担が困難な者をどのようにカバーするかが問題になる。これまでは、保険料の

  減免や国庫負担の投入による保険料水準全体の引き下げにより、低所得者も社会

  保険制度でカバーし、皆保険制度を維持してきた。





   ・この点について、あくまで全員を社会保険でカバーし、所得に応じた負担を

    求めた上で最低保障に不足する分は税財源で補填する形を取るべきだという

    意見と、皆保険という建前が無理なのであって低所得者は税方式で対応すべ

    きだという意見があった。



   ・いずれにせよ、低所得者に対しては税財源による何らかの給付を行わざるを

    得ないことは明らかである。現在の生活保護制度はスティグマが強い一方、

    高い給付水準になっており、制度の見直しが必要である。具体的には、就労

    能力がありつつ生活保護を受けていない層を念頭に、就労支援と結びついた

    新しい低所得者向け扶助制度も考える必要があるのではないか。



   ・現在の制度は、皆保険といいながら医療扶助や年金保険料免除者への年金給

    付など、低所得者については、税財源により給付を行う扱いとしている。み

    んなで支え合う皆保険制度を貫徹するのであれば、介護保険の第1号被保険

    者制度で行われているように、税財源により保険料を補足給付する形にすべ

    きであるとの考え方がある。この場合、扶助制度にスティグマがないように

    設計することが不可欠である。



   ・現行制度においては、サービス利用の際の自己負担に低所得者減免を設ける

    仕組みがあるが、利用に対する負担という自己負担の性格を考えると、自己

    負担額の軽減よりも、保険料負担の軽減で配慮すべきである。この点につい

    ては、保険事故が起こった一部の被保険者の負担が重くなることになり、適

    当でないとの意見があった。



   ・また、児童扶養等特別なニーズへの配慮は給付でおこなうこととし、保険料

    負担の軽減は所得のみに着目して行うことを基本とすべきである。



   ・低所得者への配慮は保険料負担の減免で行うべきであるから、保険料負担は

    基本的には所得比例の要素を入れるべきである。この場合、標準報酬の上下

    限も撤廃する必要があることになるが、上下限は年金において給付とのリン

    クを踏まえ過少・過大な給付にならないように設けられている面があるので、

    給付とのリンクをどう考えるかは課題である。



   ・現在、課税ベースを広げるために課税最低限を引き下げるべきではないかと

    する議論があるが、課税最低限の引き下げは一部の低所得者の負担増につな

    がり、あらたな保険料負担の減免と社会保障給付の拡充の必要を生じさせる

    ものであることに注意する必要がある。また、課税最低限の引き下げは税の

    現役世代間の所得再配分機能を著しく低下させることから、負担賦課ベース

    の拡大は、むしろ消費税の引上げで行うべきであるという考え方もある。

                     TOP

                     戻る