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 2 能力に応じた公平な負担の賦課の在り方について



 (2)各種控除等による家族等の負担能力の評価



   現在、高齢者や被扶養配偶者については、各種控除等により負担が軽減されて

  いるが、世代間公平や働く女性との公平の観点から、不公平感が高まっており、

  負担の適正化を求めるべきである。また、子どもを持つ親の負担を軽減する適切

  な方法を考えることが求められている。



  

  (1)高齢者



   ・高齢者の年金については、現在公的年金等控除の制度のため、実質的に課税

    されていないが、世代間公平の観点から税負担の適正化を図るべきである。

    具体的には、当面、公的年金等控除を給与所得控除程度の水準に引き下げる

    べきである。このことは、年金受給者の国民健康保険料負担を通して医療保

    険における世代間の公平化に、介護保険料負担を通して高齢世代内の負担の

    適正化にも資することになる。将来的には高齢者独自の控除を設けるべきで

    あるとの意見もあった。



   ・公的年金等控除の見直しにより発生した財源は、世代間公平を進めるために

    行われたものであるから、高齢者年金給付や児童関連給付のための財源に用

    いるべきである。とくに、年金課税の適正化は、年金の給付水準を実質的に

    低下させることから、それとつりあう保険料水準の低下をもたらすよう、年

    金給付の国庫負担の財源に充てるべきであるとの考え方がある。



   ・なお、公的年金等控除の見直しは、世代間公平でなく総合課税原則の徹底と

    いう観点から行われるべきであって、見直しによる財源を特に年金のために

    用いる必要はないという意見もあった。



  

  (2)児童



   ・現在、子どもを持つ親の負担の軽減のために、税制や保険料など負担面での

    対応(扶養控除や保険料免除)と社会保障給付面での対応(児童手当等)が

    ある。これら特別なニーズへの対応は給付の面で行い、負担面では所得以外

    への配慮を少なくし、なるたけ賦課ベースを広く考えることを基本とする考

    え方から、児童扶養控除よりも児童手当を重視すべきである。



   ・これまで、児童扶養控除を縮小して児童手当の拡充の財源に充てる方法がと

    られたことがあるが、このようなやり方は子どもを持つ家庭間の再配分にす

    ぎない。別途財源を確保し、子どもを持つ家庭の負担の思いきった軽減策を

    とるべきである。また、年金、医療、介護等の高齢者扶養と同様、国民全体

    で次世代の育成を支援するという観点も必要であり、健康保険、雇用保険、

    児童福祉などで現在行われている各種児童関連の給付制度を総合的に見直し、

    所得階層にかかかわりなく普遍的な支援を行うべきであり、その有力な手段

    として社会保険の仕組みの活用の検討を開始すべきである。



   ・具体的には、地域特性に配慮しつつ保育等のサービス中心の支援を進める観

    点からすれば、介護保険と同様に市町村を保険者とする育児支援保険制度の

    創設が考えられ、また、次世代の育成が賦課方式を基本とする年金制度の安

    定的運営に密接にかかわるものであるという観点からすれば、年金制度の体

    系の中に、出産費や児童養育費を軽減する現金給付や奨学金の貸与等の次世

    代育成支援給付を創設することが考えられる、との意見があった。



   ・離婚した母子家庭の児童養育費については、社会保障制度による給付と並行

    して、離婚した配偶者の扶養義務の履行として養育費を支払う義務を明確化

    し、養育費取得のための実効ある仕組みの導入について検討すべきである。



  

  (3)被扶養配偶者



   ・パートタイムなど短時間労働者については、現在の社会保険制度では、労働

    時間が通常労働者の4分の3以下の場合被用者保険には加入せず、また、そ

    のうち年収130万円以下の場合は被扶養配偶者として扱われ、地域保険・

    国民年金の保険料も支払わない。制度上の被扶養配偶者の多くが短時間労働

    を行って賃金を得ているため、被扶養者でない者との不公平感が高まってい

    る。



   ・短時間労働者への被用者保険適用については、賃金は明確に把握できる負担

    能力であり、賃金のない人からも地域保険や国民年金で応能ないし応益の負

    担を求めていることからのバランスからも、適用拡大を図り、短時間労働か

    どうかの区別なく原則としてすべての賃金を対象として社会保険料負担を賦

    課するべきである。事業主への賦課方法は、労働保険で行っているように、

    総賃金を外形標準として事業主に賦課することも考えられる。



   ・短時間労働者への被用者保険適用拡大は、短時間労働者の権利保障と、雇用

    形態に中立的な社会保険制度の構築につながる。



   ・現在、被扶養配偶者が本人の社会保険料負担なしに給付を受けられ、とくに

    専業主婦の年金について、働く主婦とのバランスから不公平感が高まってい

    る問題(いわゆる「第3号被保険者問題」)については、「女性と年金検討

    会」で論点整理が行われた。本研究会の問題意識との関係で言えば、現在の

    被扶養配偶者は扶養者の保険料で応能負担し、それに対応して給付されてい

    ると整理するのか、本人は負担していないが被用者全体で負担しているもの

    として制度設計上給付されていると整理するのか、が問題になる。また、被

    扶養配偶者に負担を求める場合は扶養者の所得に着目した応能負担か、扶養

    者の所得の一部を本人の所得とみなした応能負担か、本人の応益負担か、と

    いった整理が問題になる。



   ・具体的には、当面、夫婦の所得を合算してその半分づつをそれぞれの所得と

    して扱う、いわゆる所得分割方式をとることが基本的には適当である。ただ

    し、夫婦ともに所得がある場合の事業主負担の取り扱いなどについては、一

    層検討が必要である。なお、所得税については、累進税率であり高所得者に

    有利に働くこと、自営業者は専従者給与、被用者は配偶者特別控除で対応さ

    れているので、2分2乗方式は適当でないとの意見があった。



   ・また、配偶者控除が縮小された場合には、バランス上、社会保険の被扶養配

    偶者認定基準である130万円ラインも引き下げられるべきであるという意

    見があった。

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