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1 公平な負担のための社会保障制度の構造の在り方について



 (2)社会保険制度の構造(保険者の分立等)



   現在は、職種・地域により加入する社会保険制度が異なり、制度間・保険者間

  で財政調整する仕組みになっているが、雇用構造の変化により地域(国民)保険

  制度である国民健康保険及び国民年金の財政構造が弱体化したことなどにより、

  分立した保険制度間の不公平感や、各制度の持続可能性への不安感が高まってい

  る。このような問題に対応し、被用者保険制度と地域(国民)保険制度で成り立

  っている現在の社会保険制度の構造について、中長期的にそのあるべき姿を考え

  ていく必要がある。





   ・現在は、職種・地域により加入する社会保険制度が異なっているが、保険者

    間の不公平感が高まる中で、公平性の確保と財政基盤の強化のために、保険

    者の統合再編ないし一元化を求める考え方がある。



   ・医療保険については、5200余の保険者に分立した状態にあり、これを一

    元化すべきだとする考え方がある。この中にも、制度と保険者をともに一元

    化(一本化)すべきとする考え方や、制度は一元化し保険者は分立させると

    いう考え方があり、将来的な姿としてそうした考え方の整理が必要である。

    職域や地域の一定のまとまりを持った者で保険者を構成している現行制度に

    も、社会連帯の意識を共有できる範囲としての意味や、保険者自治や保険者

    機能を発揮する上での意義があることからすると、保険者は分立を前提とす

    べきである。この場合、保険者の自主努力を超える構造的要因(年齢構成の

    違いなど)に着目した制度間の財政調整が必要となる。



   ・年金については、大きく被用者保険としての厚生年金制度と、被用者以外が

    加入する国民年金制度に分立している。基礎年金制度による加入者数に応じ

    た負担の公平化は行われているものの、厚生年金は所得比例、国民年金は定

    額と負担方法が異なり、財政的にも別立てになっている。年金制度の趣旨を

    従前所得保障ととらえれば、当然全体が所得比例負担であるべきであるとい

    うことになる。この場合、自営業者と被用者の所得把握上の格差が問題にな

    り、社会保障番号制度の導入等により所得把握の適正化が進められることが

    必要だが、給付も所得比例で行われる場合には、負担に応じた給付が行われ

    るだけで問題がないとの考え方もある。



   ・なお、社会保険負担の応益的性格を徹底し、社会保険全体を定額負担にして

    一本化すべきという意見もあったが、定額負担である現在の国民年金制度に

    おいても、低所得者が負担できないことが問題になっており、定額負担には

    限界があるという意見が多かった。

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