戻る


1 公平な負担のための社会保障制度の構造の在り方について



 (1)社会保険と税



   社会保障制度に係る負担方式としては、医療・年金・介護など主なものについ

  ては社会保険方式で、その他生活保護などについては税方式であり、社会保険方

  式においては、社会保険財源を主としつつ、税財源も投入されてきた。今後、社

  会保障費用の増大が見込まれる中で、社会保険方式と税方式、社会保険財源と税

  財源の組合せを適切なものにし、国民の納得の得られるように負担を求めていく

  必要がある。





   ・社会保険方式も税方式もいずれも社会保障負担を賄う手段ではあるが、社会

    保険方式は、生活困難のリスクに対する事前の備えを共同で行うものであり、

    給付が個人レベルで拠出の対価的性格を持つという点で、税方式とは異なる

    ものである。



   ・また、税は、基本的に負担能力に応じて賦課されるものであるのに対して、

    社会保険料は、負担能力に基づき実際の賦課方法は修正されるものの、基本

    的には給付の受益に対する拠出という応益的性格を持つものであるという点

    でも異なっている。社会保障負担全体の在り方を考える場合には、社会保険

    料と税のこうした違いを踏まえ、それぞれの特色を相互に補完するものとし

    て、社会保険方式と税方式、社会保険財源と税財源の適切な組み合わせを考

    えていく必要がある。



   ・現在の制度に関しては、保険料が高水準になり、これ以上の引き上げに抵抗

    感が強くなってきているほか、社会保険財源による保険制度間・保険者間の

    財政調整が大規模になるにつれて負担した保険料の移転に対する不満が高ま

    り、保険料を負担した分に応じた給付が行われるよう強く求められるように

    なっている。こうした中で、社会保険と税の役割を明確に整理することが求

    められている。



   ・社会保険と税の役割をめぐるこれまでの議論の中では、税方式、社会保険方

    式、税財源、社会保険財源などの用語の使用法に混乱が見られるので、定義

    をしておく必要がある。ここでは、保険料の拠出に応じて給付が行われる方

    式を社会保険方式、保険料の拠出にかかわらず居住等の要件のみで給付が行

    われる方式を税方式とし、この区別を財政方式の問題とよぶこととする。ま

    た、保険料収入による財源を社会保険財源、税収入による財源を税財源とし、

    この区別を財源調達の問題とよぶ。この定義に従えば、現行の社会保障制度

    のうち主なもの(医療保険・年金・介護保険)は、社会保険方式であるが、

    財源は社会保険財源と税財源により調達されていると解することができる。

    基礎年金や高齢者医療など基礎的な部分を拠出にかかわらず給付し、その財

    源を全額税で賄うべきとするいわゆる「税方式論」の主張は、税財源により

    賄われる税方式であると整理できる。

                     TOP

                     戻る