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1 本書でのテレワークの定義と形態



  本書では、「情報通信技術を活用して、ベースオフィスへの通勤を伴わずに、時

 間や場所に制約されることなくいつでもどこでも仕事を行う」雇用労働者を対象と

 している。

  また、テレワークの形態は、職種、仕事あるいは勤務場所や頻度によって様々な

 組み合わせができるが、ここでは以下の3つのタイプに分類して解説している。

 (1)勤務者の希望により週1〜2日程度行う在宅勤務型のテレワーク

 (2)営業職等を対象に会社として導入するフルタイムのモバイル勤務型のテレワ

   ーク

 (3)通勤困難者に対するテレワーク





2 テレワークの効果



(1)社会全体に及ぼす効果

   地方に住んでいても、都市圏の事業所の仕事をすることが可能になるため、一

  極集中の是正及び地方圏の雇用機会の創出に貢献できる。



(2)企業に及ぼす効果

   @通勤負担の大きい方々の新規雇用、継続雇用等の人材の有効活用、A通勤負

  担からの解放等による労働生産性の向上、B労働者が自律的なワークスタイルに

  移行することによる仕事に対する主体的、能動的な意識の醸成、C時間と場所の

  有効活用による顧客、取引先へのサービス向上、Dオフィスコストの削減といっ

  た効果が期待できる。



(3)個人に及ぼす効果

   @通勤負担の軽減と自由時間の増大、A電話等による思考の中断がないことに

  よる仕事に対する集中力の増大、B通勤負担の大きい方の新規雇用、雇用の継続、

  C地方圏の雇用機会拡大といった効果が期待できる。





3 タイプ毎のテレワーク実施に向けた検討事項



(1)勤務者の希望により週1〜2日程度行う在宅勤務型のテレワーク

   仕事に応じて働く場所の選択を勤務者に認めるタイプのもので、勤務者の自発

  的な希望により、テレワークを実施する形態である。

  ・ 労働時間管理

    このタイプの場合、労働時間管理は必ずしも現行の労働時間管理方法を変更

   しなくても実行可能であるが、可能であればフレックスタイム制や裁量労働制

   に移行することにより効率的な働き方が可能となる。また、勤務者が仕事に集

   中するあまり、労働時間が長くなったり、深夜に及んでしまうことも往々にし

   てあるので、管理者はこのようなことがないよう十分留意して、業務の割当や

   労働時間管理を行う必要がある。

  ・ 安全衛生管理

    自宅においても労働安全衛生法が適用されるため、企業は作業環境、机、椅

   子、照明設備やVDT作業や腰痛防止のためのガイドラインを策定して、在宅

   での作業環境をどのように整備すれば良いかのアドバイスを行うことが望まし

   い。

  ・ 日常管理、評価

    本人希望によるテレワークは、自律して仕事を行えることが前提となる。効

   率的に業務を行うために、「業務のリストアップ」「目標の設定」「業務計画

   の策定」「上司との合意」「業務計画の遂行」の一連の業務の流れを事前に決

   めておくとともに、勤務場所の明確化・通常の連絡体制・緊急時の連絡体制等

   についても、予めその方法を決めておくことが望ましい。

  ・ その他

    テレワーク勤務の対象者の選考基準、在宅勤務時の通信費等の費用負担、テ

   レワーク勤務者の管理者に対する理解のための教育の必要性といった課題に関

   し、解説している。



(2)営業職等を対象に会社として導入するフルタイムのモバイル勤務型のテレワー

  ク

   職種や部門単位でテレワークを一斉に実施するタイプである。対象者は、主に

  オフィス外で仕事をする営業や顧客サービス職の者であり、ノートパソコンや携

  帯電話を活用したモバイルワークの形態である。

  ・ 労働時間管理

    このタイプの場合は、事業場外によるフルタイムテレワークを想定しており、

   勤務時間が特定できなく労働時間の算定が困難な場合が多いため、労働時間管

   理としては事業場外労働に関するみなし労働時間制やフレックスタイム制を採

   用することが考えられる。なお、1日の行動記録をまとめて上司に電子メール

   等で毎日送付する仕組みなどを作っておくとよい。

  ・ 日常管理、評価

    現行の業務遂行方法を何も変えないでフルタイムテレワークを導入すると、

   様々な問題点が生じて円滑に運用することは難しく、業務や管理方法の見直し

   が必要である。上司との接触機会が少なくなる可能性があるので、目標管理制

   度の導入や日常の業務進捗管理方法の明確化を図ることが望ましい。また、資

   料作成に必要な情報や資料は電子化しどこからでもアクセスできるようにする、

   出張旅費や経費の清算等に関して決裁システムを電子化する等により業務効率

   が向上すると考えられる。

  ・ その他

    テレワークを行う場所、安全衛生管理、モバイルワーク勤務時の成果の評価

   方法といった課題に関し、解説している。



(3)通勤困難者に対するテレワーク

   障害者や高齢者、育児や介護など家庭責任の重い方等の通勤困難者の新規採用

  や雇用継続を目的としたテレワークの形態である。

  ・ 人事管理方法

    このタイプの場合、人事管理面で主に考慮すべき点は、安全衛生管理と人事

   評価の問題である。安全衛生管理面では、就業環境を整備して身体的な負担が

   かからないように支援することが必要である。また、業務遂行時に事故が起こ

   らないように、会社で事前に就労時における安全配慮の支援や管理方法も明確

   にしておくことが望まれる。

    人事評価方法は、目標管理制度などを導入して、成果を明確にしてプロセス

   より結果を重視することが必要である。また、管理者のマネジメント方法も、

   離れた場所からでも効果的にかつ他の勤務者と公平に行うようにすることが必

   要である。

    さらに、テレワーク勤務での疎外感や孤独感を感じないように、管理者や同

   僚とのコミュニケーション機会を設けたり会社の情報を共有できる仕組みなど

   を作っておくことが望ましい。また、社内の教育研修の機会の提供に際しては、

   教育研修内容をビデオに撮影して自宅で自己学習ができるようにする、教育研

   修担当者が自宅に出向いたり、情報ネットワークを介した双方向の教育を行う

   といった方法がある。

  ・ その他

    新規採用の方法、人事管理方法上特に考慮すべき事項、一般社員との公平性

   を保つための教育・研修方法、必要な支援体制といった課題に関し、解説して

   いる。



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