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報告書の骨子
第1部 中小卸売・小売業、飲食店の現状
1 小売業の現状
(1)商店数、年間販売額、従業者数の動向
○ 商店数は一貫して減少、年間販売額は一貫して増加、従業者数は横ばい傾向。
○ 従業者10人以上の規模は増加、5人未満の規模は大幅に減少。
○ 専門スーパー、コンビニエンス・ストアは伸長、専門店等は衰退。
(2)小売業における構造変化
○ 消費者ニーズの多様化・個性化。
○ 大店法の規制緩和等により大型店、郊外店の増加。
○ 新業態小売業等の低価格化の進展。
○ POSシステム等の情報化の進展。
2 卸売業の現状
(1)商店数、年間販売額、従業者数の動向
○ 商店数、年間販売額、従業者数とも平成3年以降減少。平成9年は全規模で
大幅に減少。
(2)卸売業における構造変化
○ 価格破壊の進展。
○ 中小卸売業の主要取引先である専門店、一般商店の経営不振。
○ 流通経路の短縮化と集約化。
○ 小売業による卸売業の選別化。
○ EDI等の情報化の進展。
3 飲食店の現状
(1)事業所数、年間販売額、従業者数の動向
○ 事業所数は平成3年以降減少、従業者数は増加。
○ 従業者数5人以上の規模は増加、5人未満の規模は大幅に減少。
(2)飲食店における構造変化
○ 家計における外食費の伸び悩み。
○ 積極的店舗展開を図ろうとする外食チェーン企業の進展。
○ 総菜小売等の新業態を発展させている小売業との競合。
第2部 中小卸売・小売業、飲食店における労働面の現状と課題
1 労働時間等における現状と課題
○ 小売業、飲食店の一般労働者(パートタイム労働者を除く)1人あたりの年
間所定内労働時間、年間出勤日数は他産業に比べて多い。小規模ほど労働時間
が長い。
○ 競争が激化する中で、小売店の営業時間の延長が進み、終日営業店も増加。
近年大手総合スーパー等を中心に元日営業実施店舗が増加。
○ 店長の1週間の仕事時間は小売業約56時間、飲食店約63時間。休日がとれな
い理由は「自分の代わりが務まる者がいない」「従業員不足・急な欠勤への対
応」。
2 高年齢者雇用における現状と課題
○ 常用労働者に占める55歳以上の労働者の割合は10%。他産業に比べて低い。
○ 体力的に劣る高年齢者にとって立ち作業が困難。職業適応上の問題点として
「健康・体力の衰え」を挙げる企業が多い。情報機器の操作に不慣れな高年齢
者への配慮も必要。
○ 勤務態度が真面目等高年齢者パートタイム労働者に対する評価は高い。高年
齢者の短時間勤務に対するニーズも高まっていることから、接客・サービスを
基本とし、営業時間内の業務の繁閑もある小売業、飲食店においては、高年齢
者の長所や能力を活用していくことが可能。
○ 地域的偏在が少ない中小小売業、飲食店は、雇用効果が大きく、高齢化社会
に向け高年齢者の雇用機会を提供する役割が期待。
3 パートタイム労働者雇用における現状と課題
○ 短時間雇用者数(週35時間未満)は 334万人で一貫して増加。雇用者数に占
める割合は29%で、その割合も増加。
○ パートタイム労働者が基幹的な労働力としての役割を担いつつある中で、そ
の有効活用を図ることが課題。
○ パートタイム労働者の積極的な活用を指向しながら、雇用管理面等に問題多
い。
○ 非正規従業員で「今よりもう少し責任のある仕事に就きたい」とする者は1
割。非正規従業員が希望する制度は「退職金制度」「定期昇給制度」等。働き
がいのもてるシステムづくりが必要。
○ パートタイム労働者の1時間当たり所定内給与額は一般労働者の約7割。格
差は拡大傾向。
4 雇用における現状と課題
○ 雇用者数は1172万人。全産業の23%。
○ 小売業、飲食店は一貫して増加。卸売業は平成4年以降減少。
○ 中小卸売業を取り巻く経営環境が厳しさを増している中で、卸売業界の統合
再編成が加速し、リストラが進行。労働者の雇用の安定を図ることが重要な課
題。
5 能力開発、人材育成における現状と課題
○ 小売業においては、顧客のニーズにあった商品を提供できる販売スペシャリ
ストの養成、店舗運営に関するマネジメント能力を有する店長の養成が課題。
○ 飲食店の発展のためには本部の管理部門や店長のマネジメント能力の向上が
不可欠。その能力向上のための教育システムの整備が課題。
○ 事業所から受けている訓練・支援について、「ひとつもない」とする非正規
従業員の割合は45%。非正規従業員の能力開発について「不十分」とする事業
所の割合は41%。不十分とする理由は「忙しく時間的余裕がない」とする店長
・経営者が最も多い。限られた時間の中でパートタイム労働者を効果的に育成
することが課題。
6 福利厚生における現状と課題
○ 正規従業員、非正規従業員とも福利厚生については不満とする者の割合の方
が高い。
○ ショッピングセンターで働く労働者においては、「保健室」「保育所」の設
置希望や、「食堂」「休憩室」「更衣室」について共同利用できる快適な施設
の維持・改善に対する希望が多い。
7 労使関係における現状と課題
○ 労働組合員数は 114万人で、推定組織率は10%。他産業に比べ組織率は低い。
○ 平成6年以降労働組合員数は減少、平成9年は増加。卸売業は減少。
○ 労働組合のない事業所で、賃金について話し合う発言型従業員組織を有して
いるのは1割。
○ 近年、労政事務所等における労働相談件数が増加。労働相談機能の充実が必
要。
8 事業所がかかえる労働面の課題
○ 今後解決がせまられている労働面の課題がある事業所は9割。
○ 最も重要な課題として、正規従業員では「優秀な人材等の確保」「労働時間
対策」。非正規従業員では「優秀な人材等の確保」「就業意欲の維持・向上」
「従業員の定着」。
9 労働者の就労意識
○ 労働者の職場での満足度は、正規従業員は「収入」「就業時間」「休日・休
暇」「教育訓練」「福利厚生」、非正規従業員は「福利厚生」の面で不満とす
る者の割合の方が高い。
○ 労働者が勤務先に望む施策は、正規従業員は「労働時間の改善」「個人の成
果、業績に応じた処遇」「本人の意志を重視した配置転換」「福利厚生の充実」。
非正規従業員は「個人の成果、業績に応じた処遇」「職場環境の改善」「福利
厚生の充実」。
○ 勤務先に設けてほしい制度は、正規従業員は「人事考課制度」「退職金制度」
「昇進・昇格制度」。非正規従業員は「退職金制度」「定期昇給制度」「賞与
・報奨金制度」。
第3部 提言「魅力ある職場づくりの形成に向けて」
1 労働時間等について
(1)労働時間短縮に向けた業務の効率化、営業時間等の見直し・労働時間管理の適
正化
○ 労働時間の改善は労働者が最も希望するものであり、優秀な人材の確保のた
めには、他産業に比べて長い労働時間の改善を図ることが必要。
○ 事業所は業務の効率化や人員の適正配置等の見直し等のほか、労働力確保が
難しい曜日等に営業時間を短縮する等の見直しについて検討していくことも必
要。
○ ショッピングセンター等においては、各テナントの顧客ニーズ、労働力確保
の状況等を踏まえた営業時間の多様化について検討していくことも必要。
○ 営業時間の延長を行う場合は、労働時間規制に留意して行われることが必要
であり、交替制勤務シフトや変形労働時間制の導入等の取組が必要。
○ 行政においては、それらの取組に対する支援を行うとともに、労働時間管理
の適正化に関する指導を行うことが必要。
(2) 特例措置対象事業所における労働時間短縮
○ 特例措置のあり方については、中央労働基準審議会建議において「平成11
年3月までに結論を出すことが適当」とされているところであり、これらの意
見を踏まえた検討が必要。
○ 行政においては、小規模小売業、飲食店等に対し、労働時間短縮促進法に基
づく指導や情報提供等による援助を行うことが重要。
(3)元日営業における配慮
○ 元日営業の実施はそれぞれの企業の判断によるが、労働条件の向上、年間総
労働時間の短縮が課題となっていることから、元日営業を行う場合であっても、
人員配置、勤務体制の見直し等により適正な労働時間管理を行うことが必要。
○ 行政においても、適正な労働時間管理について啓発指導を行い、年間総労働
時間の短縮促進に努めることが重要。
(4)店長の就業時間の改善、健康管理の充実
○ 多くの店長・経営者が長時間かつ少ない休日で働いている実態にあることか
ら、副店長等の育成や、雇用管理の改善等に力を入れることが重要。
○ 従業員である店長については、企業の適正な就業時間管理や健康管理の実施
等が重要。行政も店長の就業時間のあり方や健康管理対策の支援に向け検討し
ていくことが必要。
2 高年齢者雇用について
(1)高年齢者雇用に向けた積極的な取組と働きやすい環境整備
○ 高年齢者活用のメリットを十分考慮した上で積極的な雇用に取り組むことが
重要。
○ 業界団体や行政において、座りながら顧客に対応する販売方式(セルシット
方式)の普及、高年齢者にも優しいPOSシステム等の開発等、働きやすい環
境整備のあり方についての調査研究を行い、情報提供を行うことが必要。
(2)高年齢者の就業体験制度の検討
○ 小売業、飲食店における高年齢者の雇用を支援するためには、他産業で就労
している中高年齢者が小売業、飲食店で就業体験できるような制度(仮称シル
バーインターンシップ)についての検討も必要。
(3)高年齢者の健康確保に対する支援
○ 中小小売業、飲食店の高年齢者雇用を促進するためには、高年齢者を雇用し
た場合の適切な健康管理について検討していくことも必要。
○ 高年齢者の健康確保のためには、若年時から適切に健康管理を行い、積極的
な健康づくりを進めていくことが重要。
○ 行政においても、労働者の自主的な健康づくりに対する施策の充実、地域産
業保健センターの機能強化等を図り、中小小売業、飲食店の労働者の健康確保
について支援することが重要。
3 パートタイム労働者雇用について
(1)主戦力であるパートタイム労働者等を中核に据えた雇用管理の実施等
○ 小売業、飲食店においてはパートタイム労働者が基幹労働力であることを十
分認識し、主戦力であるパートタイム労働者を中核に据えた雇用管理を実施し
ていくことが重要。
○ 長期・基幹パートタイム労働者については、昇進・昇格制度、定期昇給制度
等の導入などにより、働きぶりや能力を適正に評価し処遇に反映させていくこ
とが必要。短期パートタイム労働者については即戦力にできる効果的な業務マ
ニュアルの作成等が必要。
○ 行政においては、パートタイム労働者の雇用管理改善のための各種助成制度
の内容の充実を図り、利用促進に向けた情報提供を行っていくことが必要。
(2)退職金制度、社会保険制度の加入促進
○ 退職金制度は非正規従業員が最も希望する制度。中小企業退職金共済制度は
パートタイム労働者加入について特例制度があり、この活用が効果的。
○ 社会保険制度については、要件を満たすパートタイム労働者に十分な説明を
行い、加入手続を行うことが必要。
○ 行政においては、退職金制度や社会保険制度の加入について指導、啓発が必
要。
(3)通常の労働者との均衡・均等を考慮した処遇・労働条件の確保
○ パートタイム労働者の能力を有効に活用していくためには、通常の労働者と
の均衡・均等を考慮した処遇・労働条件の確保を図っていくことが重要。
○ パートタイム労働法における通常の労働者との均衡原則については具体的な
指標(物差し)が形成されていないことから、労使を含めた検討の場を設置し
て技術的・専門的な検討を行っていくことが重要。
(4)パートタイム労働者の相談・講習等に対する支援
○ パートタイム労働者の増加が見込まれる中で、パートタイム労働者が気軽に
相談や講習を受けられる公的機関の整備とその機能の充実を図っていくことが
必要。
○ パートバンク・パートサテライトを一層整備し、就業経験の乏しいパートタ
イム労働者に対して、就労に関する基礎知識の習得や職場適応向上のための講
習会の実施など、機能の充実を図っていくことが必要。
4 雇用について
○ 雇用調整を余儀なくされている中小卸売業においては、できるだけ雇用の維
持を図り、失業なき労働移動の環境整備に努めることが重要。
○ 行政においては、事業転換や事業再構築により雇用の維持を図る事業主、教
育訓練を行う事業主等に対する支援措置の活用など、卸売業の雇用の維持・安
定のための施策展開が重要。
5 能力開発、人材育成について
(1)小売業業界で評価される資格の整備
○ 顧客のニーズにあった商品を提供できる販売スペシャリストや、店舗運営に
関するマネジメント能力を有する店長を養成するため、業界団体等において、
客観的基準で能力を評価できる統一した資格の整備について検討していくこと
が必要。
(2)飲食店を対象とした職業能力開発制度の整備
○ 飲食店の発展のために、店長クラスにおける店舗運営管理に関する能力開発
制度や、本部等管理部門従事者の能力開発制度の整備に向け、業界団体や行政
が一体となって取り組んでいくことが必要。
(3)中核となるパートタイム労働者の育成のためのOJTマニュアルの作成等
○ 店長・経営者が仕事をしながらパートタイム労働者の育成ができる体制を支
援するため、業界団体や行政において、業種別・業務別OJTマニュアルの作
成や情報提供等の指導援助を行うことが必要。
6 福利厚生について
(1)福利厚生の充実に向けた取組
○ 福利厚生制度の充実に向けては、退職金の整備が重要。中小企業退職金共済
制度や特定退職金共済制度等を事業主のニーズに応じて活用することが効果的。
○ 福利厚生の充実のためには共同で進めていくことが効果的であり、中小企業
勤労者福祉サービスセンターや勤労者財産形成促進制度を積極的に利用してい
くべき。
○ 行政においては、中小企業退職金共済制度のより一層の啓発が必要。また、
中小企業勤労者福祉サービスセンターの設立促進を図り、中小小売業、飲食店
の利用促進に向け、その事業展開や情報提供についての指導援助に努めること
が必要。
(2)ショッピングセンター等における福利厚生施設の整備、改善
○ 個別のテナントが単独で確保することが難しい休憩室、更衣室等の福利厚生
施設については、ショッピングセンター等商業集積を単位として設置すること
が重要。また、既存施設についても共同で利用できる快適な環境維持が必要。
○ 行政においては、ショッピングセンター等における事業所の快適な職場環境
の形成のため、福利厚生施設等について共同利用を含め改善のための具体的手
法等を周知するなど、商業集積における職場環境の快適化の促進を図ることが
重要。
○ ショッピングセンター等における福利厚生を確保するため、中小企業労働力
確保法の助成制度等や、中小企業の安全衛生活動支援事業の周知、活用を図る
ことも必要。
7 労使関係について
(1)よりよい労使関係に向けた取組
○ 非正規従業員が多い中小小売業、飲食店では職場内のコミュニケーションが
希薄になりがち。気持ちよく仕事ができる職場の雰囲気作りを進め、コミュニ
ケーションの場をつくるとともに、不満等についてフォローアップできる体制
の整備が必要。
(2)労働相談機関の機能の充実
○ 労働組合等のない中小小売業、飲食店の労働者が気軽に相談できる機関(労
政事務所、労働基準監督署・労働条件相談センター、雇用促進センター、職業
安定所・パートバンク、21世紀職業財団地方事務所、商工会等)の役割は今後
ますます重要。
○ 行政においては相談体制の整備と機能の強化を進めていくことが必要。土日
・深夜勤務の多い小売業、飲食店の実態を考慮し、相談時間の延長を行う等の
改善も必要。
8 その他
(1)中小小売業、飲食店の立場に立った施策の周知、手続の簡素化
○ 中小小売業、飲食店が労務改善を進めていくためには、各種助成制度の活用
も効果的。行政においては申請手続きの簡素化、丁寧なパンフレット等の作成
等に努め、一層の情報提供を行っていくことが必要。情報提供や事務負担軽減
のためには、社会保険労務士等の活用も効果的。
○ 労務改善に対する事業主の意識高揚のためには、就業規則の作成について小
規模事業所への啓発活動を一層充実させていくことも必要。
(2)関係省庁の連携
○ 中小卸売・小売業、飲食店の魅力ある職場づくりを支援するために労働省と
中小企業庁が様々な施策を実施しているが、より効果的に実施していくために、
両省庁の連携協力、都道府県レベルにおける両関係機関の連携協力が一層必要。
○ 中小企業を取り巻く環境が厳しい中で、金融面や雇用面についての各種支援
施策の一層の充実、活用が必要。
○ 雇用創出を図るため、ベンチャー企業等新分野展開を目指す中小企業が行う
人材の確保・育成等に対する一層の支援や、規制緩和、新規参入の促進策の一
層の推進等が必要。
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