タイトル:中小企業労働福祉推進会議報告書について

     −中小卸売・小売業、飲食店における魅力ある職場づくりの

      形成に向けて−



発  表:平成10年10月27日

担  当:労政局労政課中小企業労働対策室

                 電 話 03-3593-1211(内線5315)

                     03-3502-7125(夜間直通)









 近年、中小卸売・小売業、飲食店を取り巻く環境は、価格競争の激化や情報化の進

展、規制緩和など著しく変化しており、そこで働く人々の労働条件や職場環境にも大

きな影響を与えている。

 このため、中小企業労働福祉推進会議(座長:松島静雄 東京大学名誉教授)

(参考1)において、中小卸売・小売業、飲食店における労働問題を取り上げ、専門

的な調査研究結果を踏まえ、検討を行ってきたが、今般、その検討結果が報告書とし

て取りまとめられた。

 報告書のポイントは次のとおりである。





                 ポイント                 





T 卸売・小売業、飲食店の現状と課題

  近年、卸売・小売業、飲食店においては、競争激化、価格破壊等の構造変化が進

 展しており、事業所は優秀な人材の確保、労働者の就業意欲の向上等の労働面の課

 題を抱えている。一方、労働者は労働時間、処遇等について様々な要望を持ってお

 り、その背景には、事業所における労働時間やパートタイム労働者の雇用管理、勤

 労者福祉等の面で問題が存在している。



U 提言

 1 労働時間等について

(1)中小小売業、飲食店においては、適切な労働時間管理を行っていくことが必要

  であり、業務の効率化や人員の適正配置等の見直しのほか、営業時間の見直しに

  ついて検討していくことも必要。行政は、それらの取組に対する支援と、労働時

  間管理の適正化に関する指導を行うことが必要。

(2)特例措置のあり方については、中央労働基準審議会建議において「平成11年

  3月までに結論を出すことが適当」とされているところであり、これらの意見を

  踏まえた検討が必要。行政は、小規模事業所に対し、労働時間短縮促進法に基づ

  く指導や情報提供等による援助を行うことが重要。

(3)元日営業の実施は、個々の企業判断によるが、実施する場合でも適正な労働時

  間管理を行うことが必要。行政は、適正な労働時間管理について啓発指導を行い、

  年間総労働時間の短縮促進に努めることが重要。

(4)長時間、少ない休日で働いている店長・経営者が多いことから、副店長の育成

  等のほか、従業員である店長については、適正な就業時間管理や健康管理の充実

  を図ることが必要。行政は、店長の就業時間のあり方や健康管理対策の支援に向

  けた検討が必要。



 2 高年齢者雇用について

   小売業、飲食店における高年齢者の雇用を支援するためには、業界団体や行政

  において、座りながら顧客に対応する販売方式の普及等、高年齢者が働きやすい

  環境整備のあり方について調査研究を行い、情報提供を行うことが必要。また、

  他産業で就労している中高年齢者が小売業、飲食店で就業体験できるような制度

  (仮称シルバーインターンシップ)や高年齢者を雇用した場合の適切な健康管理

  について検討していくことも必要。



 3 パートタイム労働者雇用について

(1)小売業、飲食店では、主戦力であるパートタイム労働者を中核に据えた雇用管

  理を実施していくことが重要。長期・基幹パートタイム労働者については、能力

  等を適正に評価し処遇に反映させ、短期パートタイム労働者については、即戦力

  にできる業務マニュアルの作成等が必要。行政は、各種助成制度の内容の充実を

  図り、利用促進に向けた情報提供を行っていくことが必要。

(2)退職金制度はパートタイム労働者が最も希望する制度であり、導入に当たって

  は中小企業退職金共済制度等の活用が効果的。社会保険制度への加入促進も必要。

  行政は、退職金制度や社会保険制度の加入について指導、啓発を行うことが必要。

(3)パートタイム労働者の能力を有効に活用するため、通常の労働者との均衡・均

  等を考慮した処遇・労働条件の確保を図っていくことが重要。均衡原則について

  は具体的な指標(物差し)が形成されていないことから、労使を含めた検討の場

  を設置して技術的・専門的な検討を行っていくことが重要。

(4)パートタイム労働者が気軽に相談や講習を受けられる公的機関の整備とその機

  能の充実を図っていくことが必要。



 4 雇用について

   雇用調整を余儀なくされている中小卸売業においては、雇用の維持を図り、失

  業なき労働移動のための環境整備に努めることが重要。行政は、事業転換等によ

  り雇用の維持を図る事業主等に対する支援措置の活用など、雇用の維持・安定の

  ための施策を展開していくことが重要。



 5 能力開発、人材育成について

(1)小売業においては、販売スペシャリストや、店舗運営のマネジメント能力を有

  する店長を養成するために、業界団体等において資格の整備について検討してい

  くことが必要。

(2)飲食店の発展のためには、店長クラスにおける店舗運営管理に関する能力開発

  制度等の整備に向け、業界団体や行政が一体となって取り組んでいくことが必要。

(3)店長等が仕事をしながら中核となるパートタイム労働者の育成ができる体制を

  支援するため、業界団体や行政は、業種別・業務別OJTマニュアルの作成や情

  報提供等を行うことが必要。



 6 福利厚生について

(1)福利厚生制度の充実を図るため、退職金制度の整備や中小企業勤労者福祉サー

  ビスセンター等の積極的利用が必要。行政は、中小企業退職金共済制度の一層の

  普及や、中小企業勤労者福祉サービスセンターの設立促進等を図ることが必要。

(2)ショッピングセンター等においては、個々のテナント単独で確保することが難

  しい休憩室等の福利厚生施設を整備することが重要。行政は、ショッピングセン

  ター等の福利厚生施設について改善のための具体的手法等を周知するなど、職場

  環境の快適化の促進を図るとともに、中小企業労働力確保法の助成制度等や、中

  小企業の安全衛生活動支援事業の周知、活用を図ることも必要。



 7 労使関係について

(1)事業所においては、労働者とのコミュニケーションの場の設定、苦情等のフォ

  ローアップ体制の整備が必要。

(2)労働組合等のない中小小売業、飲食店の労働者が気軽に相談できる機関(労政

  事務所等)の役割は今後ますます重要。これらの相談体制の整備と、相談時間の

  延長等機能の充実・強化が必要。



 8 その他

(1)中小小売業、飲食店の労務改善を支援する各種助成制度の活用を図るため、行

  政は、手続の簡素化、一層の情報提供等に努めることが必要。また、社会保険労

  務士等の活用や小規模事業所の啓発も重要。

(2)魅力ある職場づくりを支援するため、労働省と中小企業庁の連携協力、都道府

  県レベルの両関係機関の連携協力が一層必要。




(参考2)報告書の骨子




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