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 現地調査結果





  第1部の調査対象とした10の集積地域のうち、アンケート結果で特徴的な傾向が

 得られた4つの集積地域を対象として、ものづくり人材育成の現状を把握した。対

 象とした地域は次の4地域である。





 (1)大阪府中河内地域:都市部開発企業型地域の事例として



   集積全体としてはまだまだ国際競争力を保持しており、高付加価値の製品やオ

  ンリーワンの製品を作っている企業があるかぎり、集積が衰退さらには空洞化す

  ることはないという自信が垣間見られる。また、公共団体と地元企業との連携が

  かなり緊密であり、強みとなっている。

   ものづくり技能・技術は常に進化(ないし深化)しており、特に開発型企業が

  多いこの地域ではこの傾向は顕著である。そのため、高齢者が体現している熟練

  技能を若い世代へとそのままの形で継承させていくことが、次代のものづくり人

  材育成の必要十分条件であるとはこの地域では限らない。ただし、最先端と言わ

  れる技術もあくまでも基盤技術の延長線上にあるため、基盤となる加工技術を完

  全に投擲してしまってよいというものでもなく、「技術者と技能者の中間的な人

  材」が必要とされている。





 (2)山形県村山地域:地方工場誘致型地域の事例として



   地域内企業の(横の)交流・ネットワークは十分行われているとは言えず、こ

  れは人材育成面でも同様である。この原因としては、このような地域内企業の

  ットワーク化の旗を振る人材が見当たらないことが指摘されている。しかしなが

  ら、例えばOBを組織化してものづくり現場の指導・若手育成に活用することに

  ついては好意的な反応が多く、地域内の企業同士でより自社の持つ技術・技能を

  オープンにし合って交流を進めることに前向きな意見もある。





 (3)茨城県北部地域:企業城下町型地域の事例として



   本地区の産業集積は日立製作所を頂点に電機・金属など部品加工・製作の中小

  企業群がピラミッドをつくり、タテ型の産業・生産組織を形成してきた。この

  テ型構造の維持が難しくなっている状況の中で、個別企業の自立化への取組が行

  われ始めている。

   他方、企業間連携を通じた自立化の取組としても、特に域内企業との関係では

  その必要性を認識する企業が多く、脆弱な営業基盤の強化を図るため、合目的的

  に企業間連携を通じて販路拡大や新分野進出に挑戦する試みが誕生している。





 (4)静岡県西遠地域:好調な地域の事例として



   地域におけるものづくり人材の育成については、これまでは輸送用機械及び楽

  器のそれぞれの系列の中で、親メーカーが行う講習及び自社内でのOJTを主体

  とした教育によって行われてきたケースが一般的であると思われる。

   地域にある各支援機関が行う地域ものづくり人材育成への取り組みとしては、

  「先端技術産業の発展」に力点を置いた取り組みが目立ち、ものづくり現場

  の技能者の育成に大きく寄与しているとは言いにくい。

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