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 5 労働市場の構築





  (1)労働市場の枠組みの官民による形成



   ○我が国においては、これまで大企業を中心とする長期雇用システムのもとで

    内部労働市場が発展してきた反面、外部労働市場は未整備。特に、個人の主

    体的なキャリア形成のためには、前提として、能力評価制度、能力開発の受

    皿としての教育訓練制度、キャリア・コンサルティングシステム、職業等に

    係る情報システム等のインフラを利用しやすい形で整備していく必要。





  イ.職業能力開発の受皿としての教育訓練システム



   ○我が国における社会人向け訓練の受皿の状況は、少なくとも国際的に高い水

    準にあるとは言えず、特に、大学・大学院レベルの高度なレベルの教育訓練

    機会は、かなり限られている。



   ○今後、知識社会の到来が予測される中で、高度な内容の教育訓練機会の創出

    をはじめ、民間を中心に社会人向けの教育訓練機会をどのようにつくり出し

    ていくかは大きな課題。





  ロ.我が国における職業能力評価制度のあり方



   ○今後、我が国においても本格的に労働市場の枠組みとして、英国のNVQ等

    を参考として、公的職業能力評価制度を整備する必要。



   ○評価制度は、民間の事業主団体等により担われることが望ましい。しかし、

    現実問題として、こうした評価制度を民間団体が自主的に構築する動きは現

    在のところ十分なものではない。

    そこで、欧米諸国の方法を参考にして、適切に官民が協議・連携・役割分担

    を行いつつ、合同で職業能力評価制度を構築することが現実的である。



   ○評価制度の構築に当たっては、まず、評価制度の基礎として、知識・技能の

    内容を統一した共通用語で叙述することが必要。次に、こうした共通用語で

    叙述された知識・技能をレベルに応じて格付けし、評価基準を作り、評価を

    行っていくことが求められる。



   ○次に、能力評価制度の構築にあたっては、自己診断や、能力の棚卸しができ

    る簡易な評価の仕組みや必要性の高い分野から順次、整えていくことが重要

    である。



   ○さらに、職場で通用する実践的な職業能力を評価する観点から、(1)実務経

    験や実績をどう評価するかという点、(2)単なる表面的なスキルだけでなく、

    知識、技能を生かすための判断力や洞察力等の経験によって裏打ちされた能

    力や長年のキャリアによって培われた職業に係る思考特性や行動特性(いわ

    ゆるコンピテンシー)をどう評価するという点が今後の課題。



   ○こうした観点から、今後、ビジネスキャリア制度等のホワイトカラーの能力

    評価の仕組みについても見直し、整備する必要。





  ハ.職業情報システム



   ○労働者が主体的にキャリア形成を行っていくためには、労働者個人が、職業

    に関する情報や教育訓練に関する情報など労働市場に関する情報に容易にア

    クセスでき、入手できる体制を整備することが重要。



   ○今後、各機関の保有している情報を整理するとともに、労働者、企業、キャ

    リア・コンサルタント、人材関係機関の活用、特に、労働者がキャリア形成

    を行っていく上で必要な情報を入手・活用できるよう、実践的な角度から職

    業ニーズ、労働市場動向、能力開発等に関する情報システムの構築を図って

    いく必要。





  ニ.キャリア・コンサルティング



   ○個人のキャリア支援を行っていくためには、専門的なキャリア・コンサルテ

    ィングが必要。



   ○我が国では、アメリカのようなカウンセリングのノウハウや伝統がないこと

    や受入れ側の国民も、ただちに高いレベル(大学院資格)のカウンセリング

    を求める需要がないことから、まず、職業やキャリアに関する基本的、実践

    的な相談ができる人材をある程度の数養成し、企業内、需給調整機関、能力

    開発機関等に配置されることを目標とすることが適当。

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