6 法的問題点





 (2)キャリア形成促進に係る法的問題点



  (権利と義務)



    これまで、労働者の主体的なキャリア形成の促進について触れてきたが、こ

   れを労働者の側から見ると、個人の職業キャリアの準備・形成・発展を保障す

   ること(キャリア権)を意味する。



    他方、労働者には、労働の権利と義務が憲法上認められており、(憲法27

   条)、こうしたキャリアを保障する反面、個人もキャリアの形成、展開に努め

   るとともに、そのキャリアを単なる自己実現に止まらず、社会のために貢献す

   る方向に向けていく義務ないし責務を有すると考えるべきであろう。



    もともと、個人は、企業等の組織や社会の中で、調和を図りつつ、自己実現

   を図っていくものであり、キャリアの保障と言っても、自ら、社会的な性格を

   帯びている。まして、知識社会の到来により、社会の有り様として、個々人の

   主体的な努力に依存する割合が高まる中で、労働者が自己実現を図ることを通

   じて、組織や社会へ貢献するのであり、国がキャリア形成の施策的支援を行う

   根拠も、そこにあると言えよう。

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