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5 労働市場の構築





 (3)民間団体等の役割



   労働市場の枠組みをつくるために、官のイニシアティヴが不可欠であるが、能

  力評価システムや職業情報システムは、技術革新やサービスニーズの変化に即応

  して更新されなければならない。そのためには、これらのシステムの運営につい

  ては、現場の状況を把握できる業界団体、職能団体、中小企業団体等の民間団体

  の役割が大きい。



   業界団体は、産業構造の変動・融合化等に伴い、その役割・目標が不明確とな

  りつつあるが、人材面については、技能検定制度等の能力評価制度をはじめ、業

  界内の人材ニーズやキャリアの動向等の把握等の点で、重要な役割を果たしてい

  る。今後、こうした能力評価等を中心に、官との協力等により業界がお互いに連

  携して、公的能力評価制度構築の担い手となることが期待される。

   また、今後、労働市場が発達するにつれ、専門的な能力評価、能力開発が益々

  重要となり、こうした担い手として専門家の自主的な集まりである職能団体の役

  割が注目される。



   一例として、コンピューターソフトのデザイナーが集まってソフトを開発し、

  共同で基本ソフトを使いながら相互啓発を行いつつ、それぞれの事業展開を図っ

  ている。また、アメリカにおいては、大学院のカリキュラムの質について、専門

  職業集団による認定と評価がなされており、日本においても、大学の技術者教育

  を認定する初の民間団体として、日本技術者教育認定機構(JABEE)が設立

  されている。将来的にはこうした専門家集団が高度なレベルの能力評価や能力開

  発等の面で重要な役割を担う姿を描くことが可能であろう。



   このほか、労働組合も企業内における集団的労使関係の担い手としての役割だ

  けでなく、個別労働者のキャリア支援、特に、生活を含めたキャリアに係る相談

  や、キャリア支援のための仕組みづくり、さらには、労働者のエージェントとし

  ての役割等、個人のキャリア支援に関して期待される役割は大きい。



  

  (民間需給調整機関)



    労働市場を形成していく上で、需給調整機関は、中核的な役割を担っている。

   このうち、アウトプレースメントやヘッドハンティング等の民間需給調整機関

   は、これまで、事業主から手数料をとって、主として事業主側に立った需給調

   整を行ってきた。今後、労働市場の発展につれ、企業のポスト要件やキャリア

   ルート明確化とその情報開示や契約形態の多様化及びそれと関連して限定契約

   (例えば、職種、勤務地限定等)等のキャリアを念頭に置いた個別化を進めて

   いく必要が高まってこよう。その意味では、民間需給調整機関が、ILO181

   号条約(民間職業仲介事業所条約)に反しない範囲で、労働者から手数料をと

   りつつ、労働者のエージェントとして活動することができれば、こうした労働

   者のキャリア形成という観点からも、労働市場の形成に潤滑油的な役割を果た

   すことができよう。

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