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5 労働市場の構築





 (1)労働市場の枠組みの官民による形成



  ロ 職業能力評価制度



   (実践的な職業能力の評価)



     さらに、職場で通用する実践的な職業能力を評価する観点から、(1)実務

    経験や実績をどう評価するかという点、また、(2)単なる表面的なスキルだ

    けでなく、上記Bの知識、技能を生かすための判断力や洞察力等の経験によ

    って裏打ちされた能力や長年のキャリアによって培われた職業に係る思考特

    性や行動特性(いわゆるコンピテンシー)をどう評価するかという問題があ

    る。



      (1)については、キャリアシートへの共通用語による的確な記入と専門

      コンサルティングによる把握・確認等が考えられる。また、NVQにお

      いては、関係者への照会による確認等がなされている。



      (2)に係る評価手法として、コンサルティング技法の評価制度としての

      再編、ロール・プレイング、シミュレーション等の手法も考えられるが、

      評価制度としてまとめられるかは十分検討する必要がある。特に、ホワ

      イトカラーについては、判断力、分析力や思考特性、行動特性の評価が

      重要である。







  ○コンピテンシー



    雇用が流動化する中で、成果につながる能力を具体的な行動記述で示すもの

   としてコンピテンシーが注目を集めている。

    しかしながら、コンピテンシーの概念について、その内容は未だ確定したも

   のとして定まっておらず、国や機関によって意味するものが異なっている。



    アメリカにおけるコンピテンシーの概念は、もともと心理学において、「好

   業績者の成果達成の行動特性」と定義されていた概念を、人材管理の場におい

   て導入したものである。人材管理の場におけるコンピテンシーとは、ある状況

   又は職務において高い業績をもたらす類型化された行動様式(性向、態度、知

   識・技能などを効果的に活用して実際に成果を達成する行動様式)として理解

   されている。



    なお、コンピテンシーの構成要素の中には、教育訓練等によって改善可能な

   部分と性向のように本人固有の属性の部分が存在する。

    イギリスにおいてもコンピテンシーが人材管理上取り上げられているが、イ

   ギリスでは「コンピテンス」と「コンピテンシー」が使い分けられている。す

   なわち、「コンピテンス」とは「職務における諸活動を期待される標準程度に

   できる能力」を意味し、具体的には、NVQ(全国統一職業能力評価制度)で

   求める能力を指すのに対し、「コンピテンシー」はアメリカ同様、高業績者の

   行動特性を指す。

    なお、2000年6月に開催された第88回ILO総会におけるエンプロイアビ

   リティ(雇用可能性)に関する討論において、技能・知識及びコンピテンシー

   を含めたものをエンプロイアビリティと位置づけている。







     このように、実践的職業能力を評価するためには、単なる表面的な知識・

    技能の評価だけでは不十分である。

     特に、ホワイトカラーについては、知識・技能以上に判断力や分析力等を

    含め、知識や技術を使いこなして実践していく能力が重要である。

     この点、ホワイトカラーの能力評価制度であるビジネスキャリア制度は、

    現段階では、知識・技能の評価に止まっており、こうした判断力、分析力、

    戦略構築能力や思考・行動特性等の評価ないし特性把握をどのように行うか

    は、大きな課題となっている。

     また、ビジネス・キャリア制度は、営業、法務、会計、経理等10分野につ

    いて、それぞれ、細かく学習ユニットに分け、履修の認定を行う仕組みであ

    り、必要なユニットの教育訓練を選択できるというメリットがある反面、評

    価制度として独立した制度になっていない。



     今後、ユニット修了認定を統合し、純粋な評価制度として整備するととも

    に、各民間機関によりビジネス・キャリアの能力評価が実施できるよう措置

    し、その普及を図っていく必要がある。

     このほか、実践的職業能力評価制度を構築していくためには、企業内の職

    業能力評価制度と上記の職業能力評価制度を連動させていくことが重要であ

    る。



     企業内の能力評価制度としては、社内検定認定制度がある。企業内の特有

    の技能や技術革新の著しい分野等について、技能振興上奨励すべきものを認

    定しており、平成14年現在、45企業、152職種にわたっている。

     労働移動が活発化する中で、職業能力評価制度が労働市場のインフラとし

    て機能していくためには、採用や企業内の処遇等の基準として受け入れられ

    ることが必要である。

     そのためには、企業内外の評価制度の基準の摺り合わせを行い、役割分担

    しつつも、相互に連動したシステムとすることが求められる。

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