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5 労働市場の構築





 (1)労働市場の枠組みの官民による形成



  ロ 職業能力評価制度



   (イ)諸外国の状況



      この点、国際的に観ても、労働市場を有効に機能させるための枠組みと

     しての職業能力評価制度の構築については、英米をはじめ、欧米諸国にお

     いて国が積極的に関与して進められている。

      例えば、イギリスにおいては、各業界で乱立していた独自の資格を整理

     し、1986年NVQ(National Vocational Qualification)を全国統一の

     職業評価制度として導入している。同制度は、職業訓練の目標づくりと促

     進をねらいとする実践的かつ包括的な職業能力評価制度である。







  ○NVQ



    NVQ(National Vocational Qualification)は、イギリスにおける全国

   統一の職業能力評価制度で、1986年に始まり歴史は浅いものの、適用範囲の網

   羅性や資格取得者数はかなりの水準に達しており一定の評価を得ている。2001

   年6月時点、約780のNVQが存在し、約335万人がNVQ資格を取得している。



    制度の特徴として、筆記試験や実施試験だけでなく、最終的には職場での仕

   事遂行能力に対する評価によって資格を取得する方式をとっており、OJTを

   促進するものとなっている。各NVQ資格は、基礎技能から高度専門的又は管

   理能力まで、レベル1から5までの5段階のレベルが設定されており、教育・

   技能省の下に設置されている「QCA」(資格・教育課程総局)が資格制度全

   般に係る基本事項を設定し、その基本事項に基づき、産業別の労使の代表によ

   って構成されるNTO(全国訓練機関)が個別の技能ごとに具体化(基準設

   定)している。各NVQの試験の実施・合否の判定は、NTOから認可された

   「AB」(認定機関)が実施しているが、認定機関には、従来より独自の資格

   認定を行っていた民間の資格認定機関も存在する。







      また、アメリカの「全国技能基準システム」は、州単位で運営されてい

     る職業能力評価制度、資格制度について、全国的な職業資格制度として統

     一するため、1994年の全国技能基準法に基づき構築が進められている。評

     価基準の設定は、同法により設置された、産業界、労働界、教育界、市民

     団体の代表、政府からなる全国技能基準委員会(NSSB)の策定するガ

     イドラインに基づき、16の業界ごとに選定された団体(自主パートナー)

     が策定することとなっている。2000年4月現在、4つの産業において技能標

     準が設定済みである。



      このほか、フランスの公認資格制度やドイツのマイスター制度も、法律

     に基づき、国の運営責任のもと、民間職業訓練機関(フランス)や手工

     業・商工会議所(ドイツ)により実施されている。



      これらの評価・資格制度は、労働市場の枠組みをなすものとして国のイ

     ニシアティヴにより全国統一的なものとしてつくられつつも、産業界に具

     体的役割を担わせていること、実践的な職業能力評価制度をめざしている

     ことにおいて共通している。

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