4 キャリア形成に係る政策展開 (4)企業に対する支援 (企業に対する支援の必要性) 「3 企業側から見た労働者のキャリア形成のあり方」の「(3)企業内の キャリア支援の実態」で示されているように、企業による労働者個人のキャリ ア形成支援策は、次第に強化されつつあるものの、現状では、なお、一部の企 業が積極的に取り組んでいるに止まっている。 こうした状況のもとで、企業による労働者に対するキャリア形成支援を進め るためには、次のような理由から政策的支援が不可欠である。 第一に、労働者の主体的なキャリア形成や自己啓発を促進することは、本人 のモチベーションや適応力を高め、企業にとって業務の効率性の向上につなが る。また、変化の激しい時代において、企業の環境変化への適応を進めるため にも、労働者個人の主体的なキャリア形成や仕組みへの取組みを促進する必要 がある。 第二に、企業自身が雇用者に対して行う能力開発投資の多くは、企業の事業 に直結し、還元されるものに対してなされるが、労働者の自己啓発や主体的な キャリア形成を支援することがただちに、現在の事業の効率性を高めることに 直結するとは限らない。 他方、労働者に対する企業のキャリア形成支援を促進することは、変化の激 しい時代において、労働者個人の幅広い能力や雇用可能性を高め、社会にとっ ても人的資源を強化することにつながる。その意味で、企業支援を行う社会的 必要性は企業固有の能力開発投資に比べより強く、政策的にこれを支えていく 必要があると言えよう。