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3 企業側から見た労働者のキャリア形成のあり方



 (2)世代別のキャリアのあり方(現状と問題点)





 ロ 中小企業におけるキャリアの動向



 (中小企業における労働者のキャリアの特質)



   中小企業は、極めて多様であり、企業規模、業種・業態等により、労働者の仕

  事の仕方、キャリアのあり方も異なっている。

   例えば、企業規模別に見ると、中規模以上の企業であれば、企業の組織化や仕

  事のシステム化が図られ、職務分担も明確な場合が多いが、小・零細規模になる

  と、組織化されているところは少なく、概ね職務分担も不明確であり、状況に応

  じて仕事を皆で手分けして行う態様のものが多い。



   こうした特質から、中小企業労働者の職業能力の発展やキャリア形成のあり方

  は、総じて様々な仕事の経験を通した実践力の蓄積であり、あらかじめ明確なキ

  ャリア意識に基づくものではなく、むしろ、環境条件に左右されながらも、仕事

  をこなす中から次につながる新たなキャリア展開を図っていると言えよう。

   また、中小企業の分野においては、職人のように企業を渡り歩きながら、能力

  形成を行い、独立開業する例に見られるように、自営と労働者のキャリアの区別

  は明確でなく、むしろ、混然一体となった労働市場を形成している。



   反面、上記のような中小企業における労働やキャリア形成のあり方は、大企業

  の組織化されたシステムの下でのキャリア形成とは異質であり、産業構造の大き

  な変動や系列・下請けの仕組みの崩壊が進む中でも、未だ、大企業と中小企業間

  相互の労働移動は限られている。



   なお、近年、従来型の中小企業だけでなく、ベンチャー企業やSOHO等の形

  態も増加しつつあり、こうした担い手は大企業等からの転身組も多い。



  

 (最近の動向)



   経済のグローバル化や産業構造の変動が進む中で、製造業、サービス業を問わ

  ず、選別と淘汰の動きが中小企業を直撃しており、規模が零細である程、収益性

  の悪化が目立っている。

   このため、中小企業の中には、廃業に追い込まれるところやリストラにより経

  営規模の縮小を図るところも多く、こうした原因による労働移動が増えている。

  特に、最近は、製造業からコンビニやガソリンスタンド等のサービス業に移動す

  る者が目立っており、雇用形態もパート等の非正規雇用の形態が多くなっている。

   また、新卒の採用動向について見ると、従来は、新卒採用ができないために、

  やむなく中途採用を行ってきたが、近年、大企業が採用を控える中で、定期的な

  新卒採用も可能となっている。

   しかしながら、新卒の労働力としての質の問題や定着率の悪さ等の事情もあり、

  最近では経験を積んだ即戦力を中途採用する動きがむしろ強まっている。全体と

  して、中小企業が、人材育成に手間をかけることを嫌うようになっており、激し

  い環境変化に対する迅速な対応の必要性、リストラによる人員余力のギリギリま

  での削減、若年層の労働力の質の問題等の諸要因が背景になっているものと考え

  られる。

   このほか、中小企業では、規模が小さくなるほど、定年制の制度化が図られて

  おらず、高齢者の労働力率が高くなっている。特に、製造業の現場では、若年者

  の参入が減り、高齢化が急速に進んでおり、技能の継承や担い手の育成が大きな

  課題になっている。



  

 (キャリア支援)



   なお、中小企業では、労働者の能力開発は、全体として、OFF−JTの割合

  が低く、OJTの割合が高い(資料6)。また、サービス業では、パッチワーク

  的に人を当てはめて業務をこなすタイプのものと、職域が広くキャリアを積める

  ものとがあり、後者については、能力評価を行い、キャリアアップを図っていく

  余地がある。

   中小企業労働者のキャリア支援については、能力開発や能力評価面での支援や

  企業を渡り歩くタイプのキャリア・アップについては、その道筋を見せる等の支

  援が必要であり、こうした点を中心に同業組合や中小企業団体によるサポートや

  社会的サポートを進めていく必要がある。

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