戻る


3 企業側から見た労働者のキャリア形成のあり方





 (1)経営人事管理の新たな動向



    企業を取り巻く経営環境は、IT化を中心とする技術革新により、需要や顧

   客ニーズが急激に変化し、それに対するスピードある対応が求められるととも

   に、既存の産業組織、企業系列等が変容し、経済がグローバル化する中で、中

   小企業を含め、全体として厳しい競争にさらされている。

    また、コーポレートガバナンスが次第に浸透する中で、市場における株主価

   値を高める方向での業務運営や短期的な成果が求められる傾向も強まっている。

    さらに、IT化の進展に応じて、情報を体系化した知識の共有や蓄積した知

   識の相互作用による知識の創造により、業務の効率化や新たな商品・業務の開

   発を図るべく、職務や組織、業務プロセス、外部組織との連携のあり方を見直

   す動きも出ている。

    こうした経営環境の中で、企業は、事業の収益性、成長性、知識や技術の活

   用の観点から事業の見直しを進めており、コア業務を中心とした「事業の選択

   と集中」がキーワードとなっている。





  (事業の選択と集中)



   具体的には、



    (1)これまで規模拡大を目指してきたグループ経営について、グループ内で

     の経営資源の最適配分の実現、効率的な利益の生み出しを図る観点から、

     コア事業を強化するための合併・提携や非コア事業からの撤退の動きが生

     じている。



    (2)特に、市場への柔軟で迅速な対応や連結会計制度のもとで自立した収益

     率の高い経営を図る要請から、分社化とりわけ経営に関する大幅な権限が

     委譲されるカンパニー制の採用を進め、自立的な活動を促す一方、本社に

     ついては、戦略的役割や監督的役割に専念する動きが強まっている。



    (3)また、近年、事業見直しと並行して業務のアウトソーシングが盛んとな

     っているが、その内容も物流・施設管理、点検・保守等の補助的業務や情

     報処理、システム開発の分野だけでなく、最近では、人事、経理、研究開

     発、経営企画などの業務にまで広がっており、単に、非中核業務を効率性

     の観点からアウトソーシングするだけでなく、自社にない優れた外部機能

     を取り込むことにより新たな付加価値を創造する戦略的なものも現れてい

     る。



    (4)このほか、戦略的に経営を進める観点から、知識の共有と創造を核とし

     て事業の高付加価値化を図る知識経営(ナレッジマネージメント)や付加

     価値を生み出す活動の流れと連携の連鎖(バリューチェーン)を企業内外

     を通じて事業間の連携や活動の共有により効果的につくりあげることによ

     り、競争力を強化しようという動きも見られる。





  (組織の変化)



    こうした経営戦略の中で、従来型のピラミッド型の階層的なシステムは、人

   口構成の変化に伴うポスト不足や年功序列人事の弊害に加え、より抜本的な問

   題として、顧客ニーズ、需要の変化に対し、柔軟かつ迅速な対応に向いていな

   いこと、等により崩壊しつつあり、市場変化に対応するための新たな企業組織

   のあり方が模索されている。

    具体的には、企業内組織が階層的なピラミッド型からプロジェクト方式等水

   平的なフラット型に移行するとともに、企業自体、上記のように分社化、カン

   パニー制、持株会社形態の採用を進めるものが多くなっている。

   カンパニー制や分社化が進むとともに、時価会計や、連結決算が重視されるこ

   とにより、分社化された会社や組織も、収益性、競争力を持つこと、すなわち

   自立し、需要に柔軟に対応できることが求められるようになっている。こうし

   た経営戦略の変化やそれに応じた経営組織の変革は、労動者のキャリアのあり

   方にも影響を与えている。

                     TOP

                     戻る