ロ 壮年層のキャリア (変化への対応) 近年の企業間競争の激化や急速な技術革新の進展、顧客ニーズの変化により壮 年層の雇用やキャリアも不安定化し、絶えざる変化にさらされるようになってき た。 こうした変化に労働者・個人のキャリアを対応させるためには、キャリアを流 すのではなく、一定期間ごとに、キャリアを棚卸しし、今後のあり方を考えたり、 勉強したりする機会を職業生涯の中に組み入れていくことが、益々必要になって くる。例えば、5年ごとに、長期教育訓練休暇を取り、キャリア・コンサルティ ングを受ける等によりキャリアを考えるとともに、能力開発をしたり、新たな体 験や人的接触を図る等、キャリアの踊り場をつくっていくことも重要であると考 えられる。 また、労働者・個人が主体的に変化に対応していく上では失敗のリスクは避け られない。もともと個人のキャリアは、「山あり谷あり」「スパイラル」「いか だ下り」等と表現されるように平坦なものではない。職務内容の大きな変化や転 職、転社などの変化も織り込んでキャリアを考えていく必要がある。労働者個人 としてもキャリアを自分の知的財産として捉え、常に磨き、足りないものを補う ような意識が望まれる。 企業や社会も労働者・個人の主体的な取組みを受け入れるためには、「失敗」 を許容し「敗者復活」、「迂回」、「回避」等を容認する懐の深い風土、環境を 作り上げていくことが求められる。 さらに、変化の激しい時代にあっては、企業の倒産やリストラによる失業や、 技能、技術の陳腐化等によるキャリアブレイクが生じることも避けられない。し かし、こうしたキャリアブレイクが生じた時あるいはそれが生じる前に、次のス テップを考えながら能力開発を行いつづけることにより、新たな環境に適応し、 チャレンジできるような仕組みとしていくことが重要である。