戻る


ロ 壮年層のキャリア





 (自己啓発の機会の確保)



   これまでの企業内における能力開発は、新入社員研修や課長研修等の企業主導

  の階層別研修中心であったが、近年は、労働者の選択型の能力開発の実施や自己

  啓発の支援の方向に向かっている。



   但し、労働者の意識の中で自ら勉強しようというという意欲は数値的には高く

  なっているものの、実際には時間の確保の困難さや金銭面の問題、情報の少なさ

  等のため自己啓発として教育訓練を受ける率は低いものになっている。

   時間については、特に長期の教育訓練休暇制度の普及は低率(1割以下)にと

  どまっており、導入している企業も半数は1ヶ月未満であり、大学、大学院等で

  のリカレント教育を受けられる仕組みになっていない。

   また、特に、問題となるのが、情報面での不足であり、仕事や教育訓練に関す

  る情報自体の不足のほか、企業の求める人材要件や能力を修得した後の処遇が明

  確でないこと等が、自己投資として能力開発に向かうことを躊躇させている。



   近年、社会人のリカレント教育として、大学、大学院等への入学が注目され始

  めているが、我が国において、専門的能力の格付けや能力開発後の処遇が企業内

  においても、社会的にも確立されていない。

   例えば、大学・大学院で勉強した後の「復職時の昇進・昇格」を配慮している

  企業は0%であり、また、「将来の昇進に配慮する」企業は10%程度に過ぎない

  (2000年神戸大学調査 一部上場1365社対象)。

   こうした実態のもと、大学や大学院で学ぶ目的については、能力の習得や資格

  取得以外に、キャリアのあり方を考える踊り場的な意味ありや人的ネットワーク

  づくりとしての面が大きい。



   今後、知識社会が本格化する中で、社会人が高度な教育を受けられるようにす

  るためには、企業側の送出しや受入れ体制の確立、専門的能力についての社会的

  な格付けの確立、大学側のカリキュラムの質の保障や社会人向けを含めた奨学金

  制度の整備等が必要になってこよう。

                     TOP

                     戻る