ロ 壮年層のキャリア (キャリア・コンサルティング) 職業生活が大きな変化に見舞われる中で、個人が自立して自らのキャリアを考 えるためには、適切なキャリア・コンサルティングの重要性が増す。 労働者のキャリアや職業生活については、先輩や同僚がアドバイスを行うこと が多かったが、能力主義・成果主義の時代となり、こうした助言者的役割を先輩 や同僚に期待することは困難となりつつある。また、特定企業の枠をこえたキャ リア展開の助言は必ずしも先輩や同僚に期待できない。加えて、今後のキャリア の支援は、個人が主体的にキャリアを選択できるように内面的動機づけまで踏み 込んで助言・相談することや、適確な職業情報の提供や自己分析、キャリア戦略 のつくり方、面接の仕方、さらにはキャリアシートの書き方等を指導できる専門 性が求められよう。その意味では、こうした指導・助言ができる専門家としての キャリア・コンサルタントの育成を進めることが急務となっており、今後、企業 内外でキャリア・コンサルティングを受けられる体制をつくっていく必要がある。 ○キャリア・コンサルティング キャリア・コンサルティングは、キャリア形成の主体である個人に対して、 そのキャリア形成を支援する目的で体系的かつ組織的に行われる一連の相談支 援サービスである。離転職者のほか、キャリアの節目節目で在職者に対しても 行われる。 具体的には、キャリアの棚卸しや適性検査等を通じた自己理解、情報提供や 職業体験を通じた職業理解や職業に関する動機づけ、職業生活設計、能力開発 の方向付け等に関する体系的かつ組織的な支援を通じ、キャリア形成のための 主体的な行動に結びつける機能を有する。 キャリア・コンサルティングを効果的に進めるには、これをマネジメントで きる専門家(キャリア・コンサルタント)の養成・確保が不可欠であり、厚生 労働省の「キャリア・コンサルティング研究会」では、平成14年4月に,キャ リア・コンサルタントの能力要件を公表した。職業紹介機関、能力開発機関等 のほか、企業がその労働者に対して行うキャリア形成支援としても重要性を増 すと考えられる。 なお、アメリカにおいては、こうした個人のキャリアに係る指導・助言活動 を「キャリア・カウンセリング」と呼称している。我が国においては、「カウ ンセリング」という用語が心理的な療法を想起させる面が強いことを考慮し、 上記研究会において、労働市場における職業キャリアの方向づけに係る相談・ 指導・助言を表す用語としては、「キャリア・コンサルティング」を使うこと としている。 また、顧客ニーズの急激な変化や商品サイクルの短縮化等により職務内容も常 に変化していくことが予想され、節目におけるキャリア・コンサルティングだけ でなく、日常的な仕事スタイルと本人の思考・行動特性とのマッチングや仕事の 拡げ方等、日常的にキャリアをコーチしてくれる存在も重要となってくる。