イ 若年層のキャリア (キャリア準備のあり方) 社会が複雑化し、職住分離した状態のもとでは、職業を身近に感ずることはで きない。学校教育の早い段階から職業意識を涵養することや体験学習により、生 の職業に触れる機会をつくっていく必要がある。 また、働くことの意識の多様化が進む中で、そもそも就学時期と就労時期を明 確に区別することは困難となってきている。今後は、10代後半から20代半ば程度 まで、就学と就業を状況に応じ切り替えられる柔軟な仕組みをつくりあげていく ことが求められよう。 若年者のキャリア形成上の問題のうち、無業者や離職者、特に長期間の離職者 の急増は、当面の最も深刻な問題である。失業中、職業意識の涵養、カウンセリ ングや学校教育の学び直しを含め、個人の意識・状況に応じたキャリア準備、能 力開発のあり方を考え徹底していくことが望まれる。 また、フリーターは、様々なタイプがあるが、漫然と長期にフリーター生活を 送るタイプはキャリア形成上問題である。グループカウンセリングや、情報の提 供等を通じて、キャリア意識を高めるように図ることが必要である。また、フリ ーターの中には正規の従業員として働くことを好まない者もおり、無理に正規雇 用に誘導するのではなく、多様な働き方を良好な就業機会として整えることも重 要である。さらに、アルバイトとして使う側も、本人のキャリア形成という視点 を持って対応することが望まれる。 ○「フリーター」の意味と種類 「フリーター」について、必ずしも明確な定義はないが、概ね学校卒業後、 正規従業員の形態でなく、アルバイト等の不安定な就業と無業を繰り返す若年 者を指すとされる。その量的規模については、日本労働研究機構の報告書によ ると、2000年において193万人となっている。 「フリーター」の種類については複数の分類があるが、同報告書によると、 「モラトリアム型」、「やむを得ず型」、「夢追求型」の3つに分類している (資料5)。最も多い「モラトリアム型」(47%)は、職業を決定するまでの 猶予期間としてフリーターを選択し、その間に自分のやりたいことを探そうと するタイプや、先の見通しがはっきりしないまま学校や職場を離れた者などが 含まれる。次に多い「やむを得ず型」(39%)は、正規雇用を志向しながらそ れが得られない者や家族の事情等でやむなく学費を稼ぐ必要が生じたためにフ リーターをせざるを得なくなった者などが含まれる。「夢追求型」(14%)は、 何かしら明確な目標を持った上で、生活の糧を得るために、あるいは一種の社 会勉強の手段としてフリーターを選んだ者である。このうち、キャリア形成上、 最も問題があるのは「モラトリアム型」であり、このタイプをはじめとする 「フリーター」のキャリア支援対策の強化が求められる。