ハ 中高年層のキャリア (地域・家庭とのバランス) これまでの定年制のシステムのもとでは、会社人間として忙しく過ごしてきた 結果、定年後、特別な趣味や人的ネットワークもなく、家にひきこもる層も見ら れ、「濡れ落葉族」などという形容もなされた。こうした定年後のアイデンティ ティー喪失に陥らず、活き活きと老後の生活を送るためには、在職中から、職業 生活と地域・家庭生活とのバランスをとる心懸けが大切であろう。 在職中から、ボランティア活動等の地域活動を通じて、会社外の人達と接触し、 独自のネットワークや趣味を持つことは、職業キャリアにとっても、視野を広げ、 物事をいろいろな観点から捉える能力を育むことにもなる。また、加齢するにつ れ、企業勤務から、こうした地域活動に、徐々に軸足を移し、企業勤務を終えた 後は、地域活動に打ち込み、若年指導や地域貢献をする等の活動ができれば、単 なる趣味に止まらず、高齢期の重要なキャリアのあり方の一つとしても考えるこ とができる。 こうしたことを考えると、今後、雇用以外の様々な働き方を認知し、就業環境 の整備を図ることや、地域において、中高年齢者等が社会的に活躍できるような 場をつくりあげていくことは、キャリア支援としても重要な意味を持つ。 ○勤労者マルチライフ支援事業 ゆとり、安心、活力ある勤労者生活の実現のためには、職場・家庭・地域生 活のバランスを保つ必要がある。このため、近年、ボランティア活動などを通 じて地域社会に積極的に参加したいと考える勤労者が増えている。しかし、現状 では、時間的な制約や情報不足、きっかけがつかめないといったことから、そう した活動に参加している勤労者は決して多いとはいえない。 そこで、厚生労働省では、勤労者がボランティア活動に参加しやすい環境づ くりを目的に、平成13年度より、茨城、群馬、東京、神奈川、長野、愛知、京 都、大阪、兵庫、広島、山口の11都府県において、「勤労者マルチライフ支援 事業」をスタートした。 具体的には、各地の経営者協会やNPO・ボランティア支援団体に、本事業 の中心となる「プロジェクト・マネージャー」を配置。両者の連携の下、ボラ ンティア活動を希望する勤労者に受入先を紹介するほか、各地のボランティア 情報を収集し、インターネットを通じて提供する(「勤労者ぼらんてぃあ・ね っと」http://www.volunteer-net.jp)、地域のNPO・ボランティア関係者 や労使、有識者等の参加により地域推進協議会を開催し、地域の実情に合った 事業運営の方法を議論する等の活動を進めている。 仕事とボランティア活動等社会活動の複線的生活は、勤労者の生活の幅を広 げ、退職後の生きがい対策にもつながる。厚生労働省では、本事業がボランテ ィアを希望する勤労者の受皿となるよう、事業の各地域への定着を目指してい る。