2 労働者・個人のキャリアのあり方 (1)視点 準備期も含めた、これまでの労働者の職業生活は、学校・企業を通じたシス テムの上に乗り、まかせることで大過なく過ごせた。こうした環境のもとでは、 「キャリア」は、「私の履歴書」的な成功者の過去の物語として認識されるに 止まった。 しかし、経済社会環境が激変し、予測のつかない不透明な時代においては、 一回限りの自分の職業人生を組織まかせ、他人まかせにして棒に振ることはで きない。未来の自分の職業キャリアをどう構想するか、また、現在、差し迫っ た変化にどう対応すべきか、個々の労働者は自問自答することになる。 こうした意味で、労働者・個人のキャリアを考えていく上で、 第一に、これまで労使・学校ともに、組織まかせの意識・習慣・システムが 染みついているだけに、労働者・個人が主体的に構想できるか、また、組織や 環境が、こうした主体性を尊重できるシステムや慣行を形成できるかが問われ る。 第二に、キャリアは、過去・現在・未来と連鎖していくものであり、生涯を 通じて構想し、実践される。若年時は、未来型のキャリアとして適性・潜在能 力・動機と職業のすり合わせが重要であり、壮年時は、環境や変化への対応、 高年齢時は、過去のキャリア蓄積をどう生かすかに重点が置かれる。 以上の観点から、次に、労働者・個人が自分のキャリアを主体的につくりあ げていく上での問題点を世代別に見ていく。