戻る


1 キャリア形成の意義





 (2)何故「キャリア」、「キャリア形成」が問題となるのか



  (最近の動き)



    近年、キャリアについての議論が活発化しており、その背景には、例えば、

   次のような労働者、個人を巡る環境変化がある。



    (1)経済のグローバル化に加え、顧客ニーズの急激な変化や商品サイクルの

     短縮化により企業間競争が激化し、大企業といえども、倒産のリスクを避

     けられず、誰しも、突然、転身を迫られたり、行き場を失う事態も生じう

     る。



    (2)技術革新の急激な進展や経済社会のニーズの大きな変化により、労働者

     が長年にわたって蓄積してきた職業能力を無にされる事態も生じうる。



    (3)高齢化により、職業生涯は長期化する一方、労働移動はますます活発化

     する等、職業生涯において、大きな変化に見舞われることを覚悟しなけれ

     ばならなくなった。



    (4)顧客ニーズ・商品ニーズの高度化、高付加価値化や経済のサービス化等

     により、職業能力についても専門性や問題発見・解決能力が重視されると

     ともにキャリアの個別化、多様化が求められるようになった。



    (5)学卒無業者、若年離職者、フリーター等が急増し、職業意識の希薄化、

     能力蓄積機会の欠如が将来の経済社会の担い手の喪失をもたらしかねない

     事態となっている。





  (構造的変化)



    これまでの労働者の職業キャリアのあり方は、大企業を中心に、長期の比較

   的安定した雇用が保障される中で、異動、配置転換、昇進・昇格、能力開発等

   職業生活のあり方も基本的に企業まかせであり、労働者は、ピラミッド型の組

   織内で、昇進・昇格していくことが当然の目標とされた。

    職業上必要な知識・技術は、企業に入ってからの教育訓練で修得することを

   前提に、学卒者の採用について、企業は潜在的能力や性格・意欲を重視、偏差

   値や学歴、成績、勤怠度によって採用を行ってきた。



    他方、学校教育も安定性の高い大企業への採用を目標に、成績・学校による

   切り分けがなされ、社会もこうした一律かつ集団的な教育・就職システムや企

   業内システムを当然のものとしてきた。

    しかしながら、上で述べたような最近の労働者、個人を巡る環境変化は、こ

   うした教育・労働を通じて支配してきたシステムを根底から揺るがしつつある。

   ある意味では、現在は、過度に集団的なシステムからより個人に配慮する新た

   なシステムの構築へ向けての転換期に当たっているとも考えられる。こうした

   状況を個人の「キャリア」という視点で捉え、整理することによって、システ

   ム上の問題点と対応を考えてみたい。

                     TOP

                     戻る