1 キャリア形成の意義 (1)「キャリア」「キャリア形成」の意味 「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連 した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念とし て捉えられる。 「職業能力」との関連で考えると、「職業能力」は「キャリア」を積んだ結 果として蓄積されたものであるのに対し、「キャリア」は職業経験を通して、 「職業能力」を蓄積していく過程の概念であるとも言える。 「キャリア形成」とは、このような「キャリア」の概念を前提として、個人 が職業能力を作り上げていくこと、すなわち、「関連した職務経験の連鎖を通 して職業能力を形成していくこと」と捉えることが適当と考えられる。 また、こうした「キャリア形成」のプロセスを、個人の側から観ると、動機、 価値観、能力を自ら問いながら、職業を通して自己実現を図っていくプロセス として考えられる。 ○「キャリア」とは何か。 「キャリア」(career〔k§ri§〕)は中世ラテン語の「車道」を起源とし、 英語で、競馬場や競技場におけるコースやそのトラック(行路、足跡)を意味 するものであった。そこから、人がたどる行路やその足跡、経歴、遍歴なども 意味するようになり、このほか、特別な訓練を要する職業や生涯の仕事、職業 上の出世や成功をも表すようになった。 このように、経歴、遍歴、生涯と結びつけて「キャリア」という言葉が使わ れることが多くなっており、人の一生における経歴一般は頭にライフをつけて 「人生キャリア」(life career)と呼び、そのうち職業を切り口として捉え た場合の人の一生・経歴・履歴の特定部分を「職業キャリア」(professional /occupat ional/vocational career)と呼んで区別することがある。 なお、遺伝子の保有者、伝染病の保菌者などを指す「キャリア」(carrier 〔k¢ri§〕)は、運ぶ(carry)からの派生語であり、違う語源の単語である。