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II 多様な就業形態で働く労働者の意識と今後の課題



1 女性の働き方の変化

  

 (1) M字型カーブの形状・構成は大きく変化



 女性の年齢階級別労働力率について未既婚別構成の変化をみると、未婚者では20〜

39歳層での増加が大きく、既婚者では45歳以上層の増加が著しい(第2−3図)。

 年齢階級別有業率を学歴別にみると、短大卒、大学・大学院卒の女性の有業率は34

歳までは他の学歴よりも高いもののM字型カーブの底となる35〜39歳層以降はより低

くなっているが、これは有配偶者の有業率の影響を受けている(第2−4図)。また、

国際的には女性の学歴別労働力率は学歴とともに高くなるが、日本の場合高卒以上の

労働力率は各国より低水準にあり、特に大学・大学院卒では格差が大きい

(第2−5図)。

 女性の年齢階級別就業者の割合の変化を従業上の地位別にみると、年代を追うにつ

れほとんどの年齢層で雇用者割合が上昇し、雇用者割合がM字型カーブを形成するよ

うになり、かつ、M字の底が上昇している(第2−6図)。雇用者でみたM字型カー

ブの内容を雇用形態の内訳別にみると、M字型の右山部分は主にパート・アルバイト

により支えられている(第2−7図)。

  

 (2) 進展する就業形態、雇用形態の多様化



 就業形態・雇用形態の多様化の進展の状況を平成6年と平成11年とで比較すると女

性の方が男性よりも正社員割合の低下の度合いが大きく、その分パートタイム労働者

等非正規社員の占める割合が上昇している。女性労働者の全体の就業構造を推計して

みると、就業形態の多様化は主に女性を中心に進展している(第2−8図)。





  2 働く女性の意識と就業形態の多様化



 (1) 女性の職業に対する意識



 女性の職業に対する意識は積極化しており、大学への進学や学部選択においても職

業を意識する姿勢が男性以上にみられる(第2−911図)。

  

 (2) 就業形態の多様化と女性労働者

  

  (ア) 正社員で働く女性の実情と意識



 正社員に占める女性割合は約3割であるが、管理職に占める女性の割合は最も多い

係長相当職で7.7%とその登用は遅れている。業務内容をみても習熟度が高い仕事ほ

ど男性のみに与えられる傾向がある(第2−13図)が、外資系企業等においては女性

の登用は進んでいる(第2−1表)。女性正社員の意識をみると、配置・昇進や評価・

処遇について不満を持つ者の割合が男性と比べて高い。女性の意欲を高め、就業継続

につながるのは男女均等な職場であり、そのような職場の実現に努力する企業ほど経

営業績が良いという関係がみられる(第2−2表)。

  

  (イ) 正社員以外の就業形態で働く女性の実情と意識



 正社員以外の就業形態のうちパートタイム労働者、派遣労働者、在宅就業者につい

てみると、それぞれの形態の女性割合はいずれも7割以上であり、またパートタイム

労働者、在宅就業者では有配偶者の割合がともに7割以上と正社員や派遣労働者(と

もに4割台)と比べて高い(第2−3表)。就業分野をみると、いずれの就業形態で

も相対的に高度な専門性を要する分野に就く者の割合が男性に比べて低くなっている

(第2−4表第2−141516図)。

 それぞれの就業形態の選択理由をみると、女性のパートタイム労働者では時間の融

通性が重視されている一方、正社員として働けない等消極的理由も一定割合でみられ

る(第2−17図)。こうした傾向は派遣労働者についても同様にみられるが、在宅就

業者では消極的な選択理由は少なく、家庭と仕事を両立できる等の積極的理由から選

択する者が多い(第2−18図)。

 いずれの就業形態の女性労働者も全体的には職業生活全体に対する満足感は高いが、

正社員も含め「教育訓練・能力開発のあり方」「評価・処遇のあり方」「賃金」等で

は共通して低い満足度となっている。パートタイム労働者の不満は賃金面が最も多く、

仕事を任されている者により高い不満がみられる(第2−19図)が、約7割がパート

タイム労働での就業継続を希望している。また、約2割は「技術・技能・資格を活か

した仕事」等、仕事のレベルアップを望んでおり、若年層ほど、また高学歴者ほどよ

りレベルの高い仕事を望む者の割合が高い

(第2−20−12図)。

 女性の派遣労働者では「身分・収入が不安定」で不満が最も多いが、職業能力を高

めたいと思っている者の割合が男性に比べて高い(第2−21図)。また、今後の就業

希望としては約3割が派遣労働の継続を希望しているが、男性に比べ正社員希望者の

割合が高くなっている。

 女性の在宅就業者が困っていることとして最も多くあげているのは「仕事の確保

」(49.4%)で、「能力・知識の不足」をあげる者が男性に比べて多い。今後の就業

希望としては在宅就業の継続を希望する者が約9割に上るが、未婚女性では継続を迷

っている者も約2割となっている(第2−22図)。





  3 女性の起業の動向



 女性の働き方の選択肢の一つとして、起業への関心が高まっているが、起業したい

理由としては、「年齢に関係なく働きたい」、「好きな分野・興味のある分野で仕事

をしたい」「自分の裁量で仕事をしたい」などが多く、このほか「女性の昇進・昇格

に限界がある」や「女性に任される仕事の範囲に限界がある」などもみられる

(第2−24図)。

 起業に当たり、必要とされている支援は「起業準備、事業計画、資金調達等のノウ

ハウを修得するためのセミナー」、次いで「起業準備、事業計画、資金調達に関する

相談窓口」、「人材、市場、技術等に関する情報提供」となっており、起業に必要な

知識やノウハウの不足を補う機会が求められている。事業の発展段階に応じた専門家

によるコンサルティングについては、既起業者、起業希望者ともニーズが高くなって

おり、起業に至った後も継続的な支援が必要とされている(第2−25図)。





  4 まとめ



 女性は男性と比べ多様な就業形態で働いているが、就業意識は積極的になっている。

 しかし、いずれの就業形態で働く女性も、より高度な業務に就くことや能力向上を

希望する者が少なくないにもかかわらず、そうした希望が満たされていない点が問題

である。

 少子高齢化の進展の中、従来にも増して女性も含め意欲と能力のある者がその持て

る力を存分に発揮できるようにしていく必要があるが、このためには、企業には(ア)

ポジティブ・アクションを推進する等男女が均等に働ける職場づくりに向けた努力を

行うこと(イ)職業生活と家庭生活の両立支援策を充実すること、及び(ウ)労働者の職

業能力向上への要望を把握し、その実現に協力することが求められ、行政には(ア)企

業に対してポジティブ・アクションを円滑に推進することができるような施策の展開

(イ)女性労働者に対してはどのようにすれば職業能力を高められるかについての情報

やキャリアプランの策定に役立つような情報を提供すること、が期待されている。

 自ら起業をしようとする女性に対しては、起業時に必要な知識やノウハウの不足を

補う機会の提供、人的ネットワークの不足を補うサービス等の支援の強化や、サービ

ス、支援メニューについての情報の集約と提供体制も重要である。

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