3.男女間の賃金格差を解消する賃金・処遇制度のあり方 (2)雇用管理(賃金制度以外)に関連する問題と企業の対応の方向 e コース別雇用管理制度 <普及状況> コース別雇用管理は、1985年の男女雇用機会均等法制定の前後から普及 し始めた。2000年には7.1%の企業にコース別雇用管理制度が導入されて いる。5,000人以上企業では51.9%、1,000〜4,999人企業では39.9%の企 業に普及しており、大企業での導入が目立っている(図表23)。 <不充分な女性の活用状況> コース別雇用管理制度は、本来は労働者を意欲、能力、適性等によって 処遇するための制度として導入されたが、本来の趣旨に反して、コース別 雇用管理によって女性の能力発揮が妨げられている例は少なくない。こう したことは企業にとっても大きなマイナスである。 厚生労働省の調査結果によれば、いわゆる「総合職」コース(基幹的業 務に従事し、転居を伴う転勤があるコース)では男性のみ採用とする企業 が5割ほど、いわゆる「一般職」コース(定型的業務に従事し、転居を伴 う転勤のないコース)では女性のみ採用とする企業が6割もあるなど (図表24)、中には、コース別雇用管理が男女別雇用管理と実質的にはほ とんど変わらない事例もかなりみられ、男女差別であるとされた裁判例も 存在する。 コース別雇用管理が男女間賃金格差を生み出している面がある。どの企 業も、女性の能力発揮を促進するという観点からコース別雇用管理を点検 するべきである。女性を意図的に又は実質的に、一般職コースへと誘導す るような制度設計は、女性の能力発揮を妨げ、男女間の賃金格差を拡大す ることから、企業は早急に是正するか廃止するべきである。コース別雇用 管理が男女差別の雇用管理とならないよう、コース別雇用管理を採用して いる企業には公正で透明な運用が求められる。厚生労働省においては「コ ース等で区分した雇用管理についての留意事項」を示し、それに基づく行 政指導を行っている。どの企業も本留意事項に沿ってコース別雇用管理を 運用することが求められる。 特に、採用後のコースを募集・採用時に決定する企業が多いが、採用時 にはコースを決めないで採用して、一定期間の業務経験を経た後に本人の 意欲・能力・適性等に応じて振り分ける制度を検討すべきである。また、 転勤条件をコース設計に取り入れる企業が少なくないが、自社における過 去の経験に照らして転勤条件がキャリア形成において真に必要であるかど うかを点検することも求めたい。なお改正育児・介護休業法(2002年4月 全面施行)第26条により、企業は従業員の転勤を行う際に、従業員の育児 や介護の状況に配慮すべき義務が課せられていることにも留意する必要が ある。 また、採用後のコース間の転換に関し、一定の要件を満たす者について は、本人の希望をできるだけ実現するように努めるべきであり、上司の推 薦等のコース転換要件の緩和、コース転換を円滑に進めるために転換希望 者への教育訓練の実施、段階的に重要な業務を与えていくなどの配慮が必 要である。