3.男女間の賃金格差を解消する賃金・処遇制度のあり方 (2)雇用管理(賃金制度以外)に関連する問題と企業の対応の方向 c ファミリー・フレンドリー企業への努力 女性が育児・介護等家族的責任のために仕事の継続を断念することがない ようにするためには、まず、育児・介護休業制度の整備・充実が必要である。 しかし、企業が用意している育児・介護休業制度は、必ずしも従業員の多 様なニーズを満たすものとはなっていない。また、制度があっても職場の雰 囲気等により労働者がその利用を躊躇することもあり、特に男性の利用者は 極端に少ない。仕事と家庭を両立しやすいような雰囲気づくりなど、利用者 を増やす努力が必要である。 育児・介護休業制度以外にも従業員の仕事と家庭の両立に十分配慮し、従 業員が多様でかつ柔軟な働き方を選択できるように制度作りを進めることが 大切である。とくに育児負担が集中する傾向のある女性が働きやすいように、 長時間に及ぶ残業を回避したり、短時間勤務制度、フレックスタイム制など の柔軟な労働時間制度を導入するなど、労働時間の面でもファミリー・フレ ンドリーな企業を目指すべきである。 (注)ファミリー・フレンドリー企業とは、仕事と育児・介護とが両立でき る様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるよ うな取組みを行う企業をいう。 d 男女の役割等についての意識改革 企業内に男女の役割や職業適性に関する固定的な見方があるとすれば、男 女に差のない業務の与え方を進める上でも、昇進・昇格や配置・配置転換の 男女差の解消を図る上でも大きな障害となることから、男女間賃金格差の解 消にはマイナスである。したがって、そうした固定的な見方を企業内から払 拭することが何よりも大切である。 企業の経営層の意識改革が強く求められる他、個々の職場において従業員 への業務の配分や従業員の配置に関して権限を有する中間管理職に対して、 女性の能力発揮に関する指導・教育を徹底することが重要である。 なお、企業外の問題として、家庭での子どもの育て方が男女の役割に関す る固定的な見方に基づくものとなっている場合や、女性が大学等での専攻を 決定する際に偏りがある場合(例えば、女性が少ないとかイメージが「女ら しくない」等の理由で技術系の学科・学部を選択しない又はさせない等)に は、企業において男女が平等に能力を発揮することの阻害要因となり得るこ とにも留意する必要がある(本研究会は冒頭に述べたように男女間賃金格差 問題について企業の賃金・処遇制度面から検討を行っており、この問題につ いての分析は行っていない。)。