3.男女間の賃金格差を解消する賃金・処遇制度のあり方 (1)賃金制度に内在する問題と対応の方向 b 家族手当、住宅手当 厚生労働省「賃金労働時間制度等総合調査」(1999年)によれば、家族手 当は77.3%の企業で、また住宅手当は49.2%の企業で支給されている (図表19)。全労働者(支給されていない労働者も含む)の所定内給与額に 家族手当及び住宅手当の額が占める割合をみると、それぞれ2.1%、1.4%で ある。 家族手当や住宅手当といった生活手当は、世帯主に手厚く支給されている ことからも明らかなように、世帯主従業員の生活安定を図る目的を有してお り、働きに応じた賃金の考え方とは本来的に相容れないものであり、現実に は世帯主のほとんどが男性であることもあって、家族手当や住宅手当といっ た生活手当は、男女間賃金格差を拡大する方向に作用してきた。 家族手当及び住宅手当には、これまでの長い歴史もあって多くの企業にお いて賃金制度の中で大きな位置を占めてきており、支持する意見も少なくな い。本研究会が行ったアンケート調査結果によれば、特に男性労働組合員層 には根強い支持がみられる。 他方、成果主義賃金等を推進する一環として、家族手当や住宅手当を廃止 する例が増加している。特に管理職層について廃止する企業が増加している。 男女間賃金格差の解消を目指す観点からすると、それが男女間賃金格差を 生成するような支給要件で支払われている場合には、これらの手当は廃止す ることが望ましいが、前述したように根強い支持もある。当面は、両手当を 引き続き維持するとしても、出来るだけ縮小することが望ましい。その際、 依然として家族手当に対する支持が高いことに配慮して、配偶者に対する手 当と子どもに対する手当を分け、家族手当のうちの配偶者に関わる手当廃止 をまず考えることが適切である(図表20)。 また、生活手当の縮小・廃止にあたっては、その結果として労働者の生活 に与える影響を考慮し、平均賃金を引き下げることにはならないように工夫 することが望まれる。同時に、生活手当の支給されている世帯主従業員に限 定してみると、生活手当は所定内給与の5〜10%を占めている者が少なくな いとみられる(企業ヒアリングにより入手したモデル賃金による。)ことか ら、縮小・廃止の影響を出来るだけ緩和する措置が併せて必要である。