2.男女間賃金格差の現状、推移と格差生成の要因 (1)男女間賃金格差の現状と推移 a 男女間賃金格差の現状 男女間賃金格差は、様々な角度からみることにより、その実態を明らかに することができる。以下では、労働者の属性、企業の属性、国際比較という 3つの観点から、我が国における男女間賃金格差の現状をみることとする。 なお、以下における男女間賃金格差の算出に当たっては、特に記さない限 り、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2001年)を用いている。 <労働者属性と賃金格差の関係> 男性一般労働者の平均賃金水準を100.0とした時に、女性一般労働者の 平均賃金水準は2001年において65.3である。このように労働者全体をみた ときに、男女間でかなりの賃金格差が存在する。 男女間賃金格差を年齢階級別にみると、50〜54歳層までは、年齢が高ま るにつれて男女間賃金格差は次第に大きくなるという傾向がみられる。な お、60〜64歳層以降では格差が縮小しているが、これは、我が国の多くの 企業で60歳定年制を採用しており、定年を迎えた後の再就職等を通じて多 くの男性の賃金が低下することが影響していると考えられる。(図表1)。 また学歴別に男女間の平均賃金水準を比較すると、学歴の低い労働者ほ ど男女間賃金格差は大きくなる。学歴別に年齢ごとの男女間賃金格差をみ ると、どの学歴も50〜54歳層までは、年齢が高まるにつれて男女間賃金格 差は次第に大きくなる傾向にある(図表2)。 勤続年数階級別にみると、10年以上25年未満については年数が長くなる につれて男女間賃金格差は次第に大きくなる(図表3)。学歴と勤続年数 とを揃えた標準労働者で見ると、特に大卒では、男性を100として女性の 賃金は85〜90程度の水準となり、賃金格差は大きく縮小する(図表4)。 製造業について、生産労働者と管理・事務・技術労働者の別に男女間賃 金格差をみると、生産労働者の方が男女間賃金格差は大きい(図表5)。 <企業属性と男女間賃金格差の関係> 男女間賃金格差を企業規模別にみると、大企業ほど男女間賃金格差が大 きい傾向が見られる(図表6)。 男女間賃金格差を産業別にみると、運輸・通信業、サ−ビス業等で小さ いのに対して、金融・保険業や製造業、不動産業等では大きい(図表7)。 <国際的にみた日本の男女間賃金格差> 我が国の男女間賃金格差を米英独仏と比較すると、我が国の男女間賃金 格差は最も大きい。すなわち、男性の平均賃金水準を100.0としたときに、 女性の平均賃金水準は我が国は65.3(2001年)であるのに対して、アメリ カは76.0(2001年)、イギリス80.6(1999年)、ドイツ74.2(1993年)、 フランス79.8(1998年)となっている(図表8)。