1.はじめに (1)研究会の意義 男女雇用機会均等法が施行されてから15年以上が、育児休業法(現在は育児・ 介護休業法)が施行されてから10年以上が経過した。その間、職場における女性 の進出は着実に進展している。しかしながら、女性の賃金水準を男性のそれと比 較すると、依然として大きな格差が存在する。 「男女間の賃金格差問題に関する研究会」(以下、単に研究会と略称する。) は、男女間に存在する平均賃金の格差の原因を賃金・処遇制度の面から追究し、 依然として存在する男女間の賃金格差の解消策を検討するために、2001年11月に 雇用均等・児童家庭局長の求めに応じて発足した。男女間賃金格差を真正面から 取り上げるのは、男女雇用機会均等行政が始まって以来初めてのことであり、男 女間賃金格差の本格的解消に向けた意義深い第一歩である。 (2)研究会の検討対象と研究会報告の構成 本研究会で取り上げた男女間賃金格差とは、基本的に一般労働者の所定内給与 に関する男女間の賃金格差のことである。ここで一般労働者とは、一般的な所定 労働時間が適用されている労働者であってパートタイム労働者を含まない労働者 のことであり、フルタイム労働者であっても臨時・日雇い労働者は除かれている。 また所定内給与とは、定期給与(月間きまって支給する現金給与額)から超過労 働給与額を除いたものをいう。単純に言うならば、月収から残業手当を差し引い た部分の賃金のことである。 一般に、賃金には賞与や退職金が含まれるが、賞与や退職金については本研究 会における検討の対象外である。しかし所定内給与は賞与や退職金と極めて密接 な関係を有していることを忘れてはならない。すなわち、所定内給与の男女間賃 金格差が縮小するならば、賞与や退職金の男女間賃金格差の縮小に寄与すること となる。 本研究会では、以上の男女間賃金格差に関して法的側面、経済的側面そして雇 用管理の側面など、多面的観点から検討を行った。 研究会報告は総論部分と各論部分に分かれるが、総論は研究会に参集した委員 による検討結果に基づく総意を集約して記述している。また、各論部分は執筆を 分担した研究会の各委員の個人論文であり、研究会の総意を集約したものではない。