3.男女間の賃金格差を解消する賃金・処遇制度のあり方 (1)賃金制度に内在する問題と対応の方向 イ 職能給、職務給等の基本給に係る賃金制度そのものは一般的にみて性に中 立的とみられるが、職業能力や職務の評価の判定方法や業務の与え方、教 育訓練等の運用面で公平性が保たれない限り、どの制度でも男女間賃金格 差を生成する。 ロ 家族手当や住宅手当は、現実には男性世帯主を中心に支給されており、男 女間賃金格差を拡大している。 ハ 男女同一価値労働同一賃金原則がめざす性差別のない賃金は、職務給だけ ではなく、我が国で広く利用されている職能給中心の賃金体系の下でも、 女性への業務の与え方や能力開発、人事評価制度などの人事管理を適切に 行うことにより、実現は十分可能である。 (2)雇用管理(賃金制度以外)に関連する問題と企業の対応の方向 a 昇進・昇格における男女間格差の解消 男女間で職階格差や社内資格格差が存在する背景には、日頃の業務の与え 方の積み重ねや評価制度の内容・運用も影響している。女性が男性と同じよ うに賃金の高い職階や社内資格に進むことのできるような体制作りが大切で あり、同時に、ポジティブ・アクション等を通じて、女性の能力を積極的に 活用する努力が必要である。 b 配置・配置転換における男女間格差の解消 企業内の配置や配置転換の男女差は、長期的には昇進・昇格格差をもたら す。男女間で分け隔てのない配置や配置転換が重要であり、女性の配置が遅 れている職務分野に女性の配置を推進するためにも、ポジティブ・アクショ ンを積極的に導入すべきである。 c ファミリー・フレンドリー企業への努力 女性が育児・介護等家族的責任のために仕事の継続を断念することがない よう、育児・介護休業制度の整備・充実や、利用者を増やす努力、フレック スタイム制など柔軟な労働時間制度の導入等により、ファミリー・フレンド リーな企業を目指すべきである。 d 男女の役割等についての意識改革 男女の役割や職業適性に関する固定的な見方を払拭することが大切であり、 経営層や中間管理職層に対して女性の能力発揮に関する指導・教育を徹底す ることが重要である。 e コース別雇用管理制度 コース別雇用管理制度が男女間賃金格差を生み出している面があるため、 雇用管理を点検するべきである。厚生労働省が示している「コース等で区分 した雇用管理についての留意事項」に沿った制度の運用が求められる。特に、 採用後一定期間経過後のコースの振り分け、転勤要件の見直し、コース転換 要件の緩和、コース転換希望者への教育訓練の実施等の配慮が必要である。