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            パート労働の課題と対応の方向性

          (パートタイム労働研究会の最終報告)



               平成14年7月

II 雇用システムの変化の方向



 Iでみたように、企業と働く側双方が求めている「柔軟で多様な働き方の実現」が

双方にメリットをもたらす形で図られることが、今後、豊かで活力ある社会を実現す

るための鍵になると考えられる。そのための今後の雇用システムをどう構想すればよ

いのか、また実際の姿はどう動こうとしているか。



  

1 正社員も含めた雇用システムの多元化



 これまでのわが国の雇用システムは、やや単純化すれば、残業や配転などの拘束性

は高いが雇用保障や高い処遇に守られたフルタイム正社員グループと、自由度は高い

が雇用保障が不安定で低い処遇のパートを含めた非正社員のグループという二者択一

の構図が続いてきた。



 しかし、Iでみたように働く側の意識は変化している。もっと多様な選択肢があり、

またライフステージに応じて柔軟に働き方を変えられる「多元的な雇用システム」が

求められている。それは働き方のニーズが多様化する中でそれぞれの個人の能力を十

分に引き出すために、企業にとっても重要な仕組みである。



 一つの方向性として、従来の正社員の働き方に比べると残業、配転などの拘束性は

低いが、だからといってすぐ「非正社員パートで補助的な仕事」というのではなく、

ある程度基幹的な仕事をフルタイムや短時間で行う「中間形態」の形成が考えられる。

 Iでみたように、就業意識の多様化の中でフルタイムであっても拘束性の少ない働

き方を希望する層も増えている。従来型の正社員とパートの働き方の二者択一ではな

く、より拘束性の少ないフルタイムの働き方とそれに応じた雇用保障や処遇の組み合

わせが「連続的な仕組み」の中で用意されれば、多様化した労働者のニーズにも合致

し、企業にとって雇用管理の柔軟性を高めることにもなる。

 他方、パートであっても基幹的な役割を果たしている層も増えている。これらにつ

いては要求されている役割と処遇のギャップがパートのモラール低下に結びつく懸念

も大きい。上記のような拘束性の低いフルタイムの働き方が中間形態に位置づけられ

るならば、これらに近い役割を果たす基幹的パートについても、同じ枠組みの中に位

置づけ、パートかフルかにこだわらず、できるだけ統一的な雇用保障・処遇の仕組み

を作っていくことが重要と考えられる(図表32)。



 このように従来のフルタイム正社員とパート非正社員の働き方に限定されない、で

きるだけ「連続的な仕組み」を作っていくことが、企業と働く側双方が求めている

「柔軟で多様な働き方の実現」のための第一の条件であると考えられる。そしてこう

した仕組みはすでに導入が進んでいる複線型人事管理の延長線上に位置づけられるも

のでもある。



 実際に流通業など、パートを多く活用している産業では、中間形態的な働き方を導

入して、パートの能力発揮に役立てている企業が多い。

 例えば、百貨店のA社では、パートタイム労働者と正社員との中間形態として、職

種や勤務エリア・専門領域があらかじめ明確にされており、定められた領域の中で専

門性を高めていく有期契約の準社員制度を導入している。

 正社員のように、全国転勤・あらゆる分野への人事異動の可能性といった無限定の

拘束性を求められることはなく、マネジメント業務に従事することもないが、専門領

域の中でリーダー的業務を担うなど基幹的な役割を果たしている。パートタイム労働

者の中にも、補助的な業務に従事するグループと補助的パートの指導的な立場に位置

づけられるグループとが存在する。すなわち、補助パート、より基幹的なパート、準

社員、正社員といった連続的な仕組みの中で、それぞれの役割・業務等が明確に位置

づけられている。

 また、スーパーのB社においては、全国異動のフルタイム社員と異動がなく補助的

業務のパートタイム社員の中間に、いくつかの社員群が異動可能範囲の違い等によっ

て位置づけられており、やはり連続的な仕組みとなっている。これらの中間的な形態

においては、パートタイムであっても、管理職に就くチャンスが開かれているなど、

基幹的な役割を期待されている。

 これらの企業における「中間形態的な働き方」は、従来のフルタイム正社員に比べ

て、異動の範囲等において拘束性は少ないものの、フルタイム、パートタイムに関わ

らず、基幹的な役割、責任ある役割を期待されており、企業にとって不可欠な存在と

なっている。



  

2 さまざまな働き方を納得して選択できる「働きに応じた処遇」の確立



 第二に、こうした多元的な雇用システムが有効に機能するためには、それぞれの働

き方が納得して選択されることが必要であり、それが可能となるためには、仕事とそ

れに対する処遇との関係において公平性が確保されていることが重要である。



 もとより賃金処遇制度の考え方は企業によりさまざまである。年齢や生計費などの

属人的な要素、潜在的なものも含めた職能の要素、より顕在的な職務や成果の要素な

どをどのように組み合わせて評価し処遇することが公平であると考えるかは、まさに

企業の人事政策に属する問題である。



 ただ、人員構成の高齢化や厳しい国際経済環境、さらには共働きの増加など家族の

あり方の多様化等の環境変化の中で、わが国の企業の賃金処遇制度に対する考え方も

大きく変化しつつある。企業が賃金決定において何を重視するかをみると、年齢・勤

続年数から職務遂行能力、業績・成果へと重視する要素がシフトしている(図表33)。

 本年5月に公表された日経連のダイバーシティー・ワーク・ルール研究会の報告書

でも、「職務や役割にもとづき、与えられたミッションをどれだけ達成したかで評価・

処遇することは、長期・有期といった雇用期間や、経営層となる基幹的人材、あるい

は補助的業務を担う人材などの区分によることなく、公正・公平で納得性の高い制度

といえる」とされている。企業としても、社内人材が多様化していく中で、それらの

人材すべての能力を引き出しうる処遇制度を模索していることがうかがわれる。



 大きな方向性として、いわば生計費などの「必要に応じた処遇」から「働きに応じ

た処遇」に評価のウェイト変化の流れが窺われる。年齢別賃金カーブのフラット化や

家族・扶養手当の支給企業割合の低下の動きなどもこうした流れを裏づけるものであ

る。

 「働き」を評価する要素として、現時点だけでなく中長期的な観点からの評価も当

然含まれるが、ウェイトの置き方としては、年功的な運用から、「職務」やその遂行

の「能力・成果」で客観的に評価・処遇する方向に徐々に変化しつつある。



 こうした処遇制度の変化の流れは、基幹的な仕事を担いつつあるパートにとって、

その働きに応じた処遇がなされるという意味で望ましい方向である。

 ただ、正社員とパートとの処遇格差の背景には、Iでもみたように「家計の支え手

としての正社員」と「家計補助的なパート」といった「必要に応じた処遇」の発想が

根強くあるのが現実である。

 しかし、共働き世帯が多数派となる中で(図表34)、正社員だからといって世帯全

体の生活を支えなければならないというのは必ずしも平均的な姿でなくなりつつある。



 上記のように企業の賃金処遇制度は「必要に応じた処遇」から「働きに応じた処

遇」に重視される要素のウェイトが変化しつつある。こうした流れの中で、賃金につ

いての考え方が「世帯単位」から「個人単位」へと変化していくことが、家族のあり

方が多様化する中で、さまざまな労働者が納得して働けるための条件になりつつある。



 実際、パートを多く活用している企業には、「働きに応じた処遇」に留意し、パー

トのモチベーション向上に役立てている例が多い。

 前述のB社においては、異動可能範囲の異なる社員群の間で役職に応じた手当(マ

ネージャー手当等)を同じにし、職務に応じた処遇を行っている。

 また、金融業のC社においては、スキルや知識のある人は、正社員やパート等の雇

用形態に関係なく公正に扱い、その分責任も負ってもらうという考えに立ち、職能資

格等級が同一の正社員とパートの所定内給与について同一処遇にしている。すなわち、

パートの時給は、同資格の正社員の月給を労働時間で換算した額を支給しており、こ

のような制度により、意欲、能力のあるパートのモチベーションを高めている。



  

3 ライフステージに応じて多様な働き方の間を行き来できる連続的な仕組みの構築



 第三に、多元化した雇用システムの中で、フルとパート、補助的役割と基幹的役割

など、ライフステージに応じて、柔軟に行き来のできる連続的な仕組みが重要である。



 Iでもみたように、現状では、女性が家事育児と両立させて仕事を続けようと考え

ても、強い拘束性を求められる現在のフルタイム正社員の働き方の中では就業継続が

難しく、また、いったん退職して、育児等が一段落したところで復帰しようとしても、

フルタイム正社員を中心とした内部労働市場には再参入できず、パート等の非正社員

になるしかないのが現実である。



 まずは、内部労働市場の中でのフルとパートの行き来の可能性が広がれば、子育て

期は短時間で働き、一段落したところでまたフルに転換することにより、継続的に能

力を発揮することができる。現在、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労

働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)

により、1歳に満たない子(本年4月1日より3歳未満に引き上げ)を養育する労働者で

育児休業をしないものに関して事業主が講ずべき措置の選択肢の1つとして短時間勤

務制度を設けることが規定されており、約3割の企業が制度を導入している。その他

の理由による場合も含め、フルとパートの行き来の可能性を広げることは、わが国に

おいて十分に評価されているとはいえない「短時間で働くこと」の有効性をさまざま

な工夫によって高める契機になると考えられる。加えて、高齢社会における職業生活

から引退へのソフトランディングを図るためにも、フルタイム勤務から短時間勤務形

態への円滑な移行の仕組みを構築していくことが今後の重要課題である。



 このように内部労働市場の中で、本格的な短時間就業(後述するような「短時間正

社員」的な働き方)が一つの働き方として広がってくれば、外部労働市場からの参入

による働き方にも違った評価がなされる可能性が出てくる。

 例えば、子育て後に再び入職するパートが、当初は補助的な仕事だとしても、経験

を重ねる中で、短時間のまま、さらにはフルタイムで、もっと基幹的な役割を果たし

たいと考えた時、その意欲、能力に応じて活躍の機会やそれに見合った処遇が選択で

きる仕組みが重要であると考えられるが、上記のような内部労働市場における変革は、

同時にこうした選択の仕組みの可能性を広げるものでもある。

 例えば、拘束性の高い基幹社員(フルタイム、パートタイム)、中間形態の社員

(フルタイム、パートタイム)、臨時・一時的社員(フルタイム、パートタイム)の

ような多様な働き方をライフステージに応じて選択できる道が開かれていれば、企業

としても意欲のある優秀なパートを確保できるはずである。

 ちなみに、21世紀職業財団の「多様な就業形態のあり方に関する調査」によれば、

パートの正社員登用制度のある事業所は約3割であるが、制度のある事業所で最近3年

間に正社員に登用された人数は平均約3.6人であり、それなりの登用実績があること

がわかる。



 さらに、このようにフルとパートの行き来の可能性が広がることは、社会全体とし

ては、短時間で働く層の拡大を通じて、雇用機会を増やすことにつながる。いわゆる

多様就業型ワークシェアリングの実現である。働き方をライフステージに応じて柔軟

に変えられることによって、子育てしながら勤め続けたり、子育てのためのいったん

退職しても再び活躍の道が開かれる。男女ともにこうした働き方が可能になることに

よって、子育ての負担も軽減され、子供を産み育てることの安心感がもたらされる。

こうした意味で、このような働き方が社会全体に広がることにより、少子化そのもの

を抑える可能性も期待できる。



 上でみたような多元的で連続的な雇用システムを導入している企業には、ライフス

テージに応じて就業形態間の移動を可能としている例が多い。

 例えば、前述のA社においては、キャリアアップによるモチベーション向上を図る

目的で、補助業務を担うパートタイム労働者からリーダー的業務も担う準社員への転

換が可能な仕組みを作っており、現在準社員からマネージメント業務まで担う正社員

への道を検討している。

 また、前述のB社においては、本人の希望により、異動の範囲やフルかパートかを

選択できるようになっており、ライフステージに応じて働き方を変えられる仕組みに

なっている。こうした制度の下で、例えば、育児、介護等の理由で全国異動が困難に

なった場合に、地域異動社員に転換して働き続けているケースもみられる。

 さらに、衣料販売のD社においては、パートから、希望者は店長代理を経て、店長

に昇格することが可能であり、店長に昇格すると同時にフルタイム正社員となる。現

在、店長のうち、過半数がパートからの転換であり、パートにとって、こうした道が

用意されていることが大きな魅力となっている。D社としても、パートから転換した

店長の実力を高く評価しており、人材登用やパートのモチベーション向上の面で得る

ものが大きいと考えている。



  

4 新たな雇用システムがもたらす労使双方、社会全体へのメリット



 こうした新たな雇用システムが労使双方、社会全体にもたらすメリットについて、

再度整理しておきたい。

  

1)企業側にとってのメリット



 (1)優秀な人材の確保・定着



   新たな雇用システムが企業側にもたらす第一のメリットは、多元的な雇用シス

  テムの下で、働きに応じた処遇や様々な働き方の間を行き来できる仕組みなどに

  より、優秀な人材の確保や定着に役立つことである。

   上記、衣料販売D社では、パートについて、地域相場より高い賃金設定や正社

  員店長への登用など将来の道が開けるようにしてから、優秀な人材が集まるよう

  になったという。

   電機のE社では、育児休業明けの社員の8割が短時間勤務制度を利用している。

  フルタイムとの時間比例賃金にする(もっともこれは正社員の短時間勤務制度を

  導入している企業の場合、ごく一般的な方式である)、不在時の状況についての

  情報共有を図るなどにより利用が進んだ。これにより、育児休業明けの復職率が

  向上し、教育投資された貴重な人材の定着に役立っている。

   今後はさらに少子高齢化が進むことから、企業にとっても、女性、高齢者など

  短時間での就業を希望する層を含め、多様な人材の有効活用が図れるかどうかが

  重要な経営課題である。新たな雇用システムは、企業の中での多様な働き方を魅

  力あるものにすることで、人材を集め、組織の活力を高めることを可能にする点

  で、企業にメリットをもたらすものである。



 (2)処遇制度全体の見直しやモラール向上によるコストの吸収



   パートを含めた「働きに応じた処遇」が企業にとってコストアップとなるとの

  懸念も指摘されるが、その点はどうだろうか。

   スーパーのF社では、フルタイム社員の処遇制度を仕事給体系に組み直す中で、

  パート社員についても仕事・役割に応じた処遇(例えば、売り場主任に就くパー

  ト社員の処遇はフルタイムで主任をしている地域限定社員と時間比例)を実現し

  ている。F社の改革は「パートに関わる不合理な差別を社内から排除する」とい

  う強い決意で行われており、地域に密着したパート社員の持ち味を最大限に引き

  出す経営が実践されている。他の大手スーパーでも、パートの管理職登用制度な

  ど人事処遇制度の導入が見られはじめており、パートと正社員との不合理な仕事

  の垣根や処遇の違いは経営にとってもマイナスであるとの意識が高まりつつある。

  パートと正社員との処遇制度間の均衡を図ることが企業の経営パフォーマンスに

  有意な影響を与えるということを実証した最近の分析例もみられるところである

  (注)。

   このようなことからすると、パートを含めた「働きに応じた処遇」を図ること

  は決して企業経営にとってマイナスとなるものではない。むしろ、パートが雇用

  者の2割という状況において、正社員との不合理な処遇の違いをそのままにして

  おくことの方が企業活力の低下をもたらす恐れが大きいと考えられる。前出の日

  経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会の報告書でも「『非正規は正規より

  格下』といったような古い意識や、特にそうした意識に基づく制度や仕組みは、

  新しい人事戦略を進めていく上での障害となり得る。こうした制度や仕組みを改

  め、必要に応じて、多様な人材に対して基幹的な仕事の担い手にふさわしい、広

  い意味での労働条件を提示していく必要があるだろう」と提言されている。



   (注)西本万映子「正社員とパートタイマーの人事管理制度の均衡で

           経営パフォーマンスを高める」賃金実務 2002.7.1.

  

2)働く側にとってのメリット



 (1)多様な働き方へのニーズに応えられるシステム



   前述したように、フルタイムで働く層の中にも、より拘束性の少ない働き方や

  仕事一辺倒でない生き方を指向する層が広がりつつある(図表35)。

   他方、家事育児などの家族的責任を果たしながら、働き続けたいと望む層も増

  えており(図表36)、これらの層にとっては、フルタイムであっても、より拘束

  性の少ない働き方が可能かどうかが働き続けられるかどうかの分かれ道となる。

   さらに、フルタイムでなく、「基幹的であるが短時間」という働き方がライフ

  ステージの中で選択できるようになれば、現在の仕組みでは、時間的制約から就

  業をあきらめている層も就業可能となるはずである。

   こうした意味で、新たな雇用システムは、働く側のニーズに合った働き方を用

  意することを通じて、働く側にとって大きなメリットをもたらす。



 (2)連続的な仕組みの中での経済的自立の可能性



   前述のように「正社員としての仕事に就く気がなかった」からフリーターにな

  った若年層もずっとその働き方に留まろうとしているわけではない。特に、男性

  において、今後の働き方として正社員を指向する層は多く、その割合は年齢を重

  ねるごとに高まっていく(図表37)。親からの独立、結婚など、経済的自立の必

  要性が高まるにつれて、フリーターからの離脱を求める意識が強くなっていくこ

  とがうかがわれるが、フリーター期間における能力開発機会の不足もあり、正社

  員への移行、経済的自立が円滑にいかない層もみられる。

   また、増加する母子世帯等においては、家事育児との両立や正社員雇用機会の

  不足等から、就業者の約4割がパート就業をしており、経済的自立という面で多

  くの困難を抱えている実態がある。こうした困難は夫がリストラで失業し、妻の

  パート就労が家計を支えている世帯でも同様である。

   さらに、年金支給開始年齢が段階的に引上げられる中で、高齢者の就業継続に

  よる経済的自立も今後の大きな課題である。

   こうした問題に対し、「拘束性の高い正社員」か「補助的位置づけで低処遇の

  パート」という二者択一ではなく、「拘束性の低いフルタイム社員」や「基幹的

  な仕事で経済的自立が可能なパート」という幅広い選択肢が確保されれば、上記

  のような層も経済的自立を図れる就業の枠組みに入っていけるようになると考え

  られる。

  

3)社会全体にとってのメリット



 (1)より多くの層の就業可能性の向上と経済的自立



   2)でみたように、多元的な雇用システムとそれに対応した処遇の仕組みがで

  きていくことは、より多くの層の就業可能性を広げ、これらの層の経済的自立を

  促進するものである。さらに、このような仕組みの中でライフステージに応じて

  短時間で働く層が拡大すれば、社会全体として雇用機会を増やすことも可能とな

  る。

   今後、少子化が一層進み、人口構成的には社会の支え手の相対的減少が予想さ

  れる中で、若年層や高齢層、主婦層など、より多くの層が経済的に自立し、同時

  に社会の支え手となりうることは社会全体にとっても大きなメリットである。



 (2)雇用のミスマッチの改善



   現状、正社員の需要不足、非正社員の需要超過というミスマッチが存在してい

  るが、「働きに応じた処遇」が浸透していけば、こうした労働市場のアンバラン

  スも改善されることが見込まれ、より多くの層の就業可能性を広げることになる。



 (3)少子化抑制の効果



   少子化対策についての世論調査によると、出産・子育て後に再就職しやすくす

  ることが重要との声が多い(図表38)。強い拘束性を求められる現在のフルタイム

  正社員の働き方の中では子育てをしながらの就業継続が難しいのが実態である。

  また、いったん退職してしまうと、子育て後に補助的パート以外の形で復帰する

  ことが困難な現実がある。子育てをしながら就業継続できる短時間勤務や拘束性

  の少ない働き方に移行できること、子育てのためにいったん退職しても再び活躍

  の道が開かれる柔軟な仕組みが形成されることが、子供を産み育てる安心感をも

  たらし、少子化そのものを抑える効果を持つと考えられる。

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