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II 仕事と子育ての両立





 5 男女が仕事と子育てを両立するために



   以上みてきたように、近年の女性の結婚、出産と就業をみると、25歳から39歳

  といった結婚、出産、子育てに大きく関わる年齢層でこの四半世紀に大きな変化

  がみられた。

   女性の年齢階級別労働力率に就業希望率を加えたものをみると、先進諸国の労

  働力率である台形型カーブに近づく。現状でも結婚・出産を機に多くの女性が離

  職をしていることや小さい子どもをもつ妻で就業を希望する者の多いことが確認

  され、30歳代女性の多くが就業を希望しつつも、それを断念している状況が伺え

  る。



   少子化が一層進行している中で、将来の労働力人口の減少に対応するためには、

  女性の就業意欲を生かし、能力を発揮することができる環境を整備していくこと

  が必要である。また、女性の生涯賃金の推計においても、継続就業している場合

  と再就職した場合の所得差が大きいことなどから、女性が結婚、出産等に関わら

  ずに就業を継続することが、今後多くなってくると考えられる。

   一方、パートナーである30歳代男性は子育て意識は高いものの、長時間就業で

  ある者や帰宅時間の遅い者が多く、時間的にも育児を分担できない状況であるこ

  とが明らかになった。さらに子育てをしながら働くための職場における両立支援

  や地域における保育サービスに対するニーズも強いことも明らかになった。



   そこで、男女が仕事と子育てをバランスよく両立しながら、安心して子どもを

  産み育て生涯を通じて就業することが可能となるよう、今後の課題をまとめた。



  

  (1) 男女が子育て期に仕事と家庭のバランスをとることへの取組



     子育て期にあたる30歳代男性の就業時間が最も長い反面、女性は働きたく

    ても働いていない者、短時間就業で子育てとの両立を図っている者が多い。

    また、I部でも把握したように、学卒後就職できない者や非正社員として就

    職する若年者の割合が多くなってきていること、高齢層では失業率が高く失

    業期間も長期化していることなど、世代間でのアンバランスが大きくなって

    いる。



     30歳代の男性も、仕事よりも家族団らんに充実感を感じている者は多く、

    特に子育て期の男性の長時間就業に対して就業時間の偏りを見直し、仕事と

    子育ての両立が可能となる柔軟で多様な働き方ができるよう就業環境を整備

    することが必要である。これは、女性だけでなく若年層や高齢層へ雇用機会

    を与えることになり、男女間、世代間でのワークシェアリングにつながるこ

    とになる。また、子育ての最も大変な時期に夫が育児を分担できることは、

    専業主婦層の子育て負担感や不安の解消にも役立つことになる。



  

  (2) 職場や地域における両立支援の充実



     既婚の女性労働者の仕事と子育てとの両立のストレスは大きく、さらに、

    働いていない場合でも子育ての負担感は大きい。こうした負担感を解消する

    ためには、職場、地域における両立支援の充実が必要である。

     職場における両立支援対策については、平成13年の育児・介護休業法の改

    正により、育児休業から復帰した後に子育てをしながら働き続ける労働者の

    負担を軽減して子育ての時間をいかに確保するかという観点から、勤務時間

    の短縮等の措置義務の対象となる子どもの年齢が1歳未満から3歳未満に引

    き上げられた。また、子どもの看護のための休暇を導入することが努力義務

    とされたことや、小学校就学前の子どもの養育を行う男女労働者に対して、

    請求があった場合に、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働が免

    除される規定を新たに設けたところであり、改正育児・介護休業法の定着を

    図る必要がある。



     特に、子育て期の労働者を対象とする短時間勤務制度を導入する企業が増

    加し、短時間勤務の正社員の働き方が普及することは、子育て以外の理由も

    含めて「短時間で働くこと」の有効性を高める契機になると期待できる。

     さらに、職場における両立支援制度を利用しやすいようファミリー・フレ

    ンドリー企業を目指す取組を促すための広報啓発や、地域においても、多様

    な保育ニーズを充足するなど、新エンゼルプラン等に沿った取組を実施する

    ことが望まれている。



  

  (3) 子育て期の男性の育児の分担



     男性の子育て意識は高まっているが、子育て期である30歳代の男性は最も

    長い就業時間となっており、家庭責任は女性がより重く負っている。

     家事、子育てをどう分担するのかは夫婦の価値観の問題であるが、特に子

    育て期の女性に偏る家庭責任の分担、仕事の面における女性の能力発揮、さ

    らに子どもの健全な発達のためには、父親である男性もパートナーとしての

    時間を重視し、家庭生活に責任を果たすことが求められている。長時間就業

    の実態を踏まえ、年間総実労働時間1800時間の早期達成、所定外労働時間の

    削減はもとより、子育て中の男女労働者に対しては家庭の状況を配慮した就

    業時間の管理を行うことが求められる。さらに、男性の育児休業取得の阻害

    要因を把握し、取得促進に向けた意識啓発などを積極的に行うことが必要で

    ある。

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