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V「選考及び内定者の決定」について
(1)基本的な考え方
採用活動の最終段階である採用者の選考及び内定者の決定の際にも、男女を均等に
取り扱う必要があり、(1)その対象から女性を排除すること、(2)選考時期、選考方法、
選考基準等を男女で異なる取扱いとすること、(3)その対象を女性のみとすることは、
均等法に違反します。
<均等法に違反する選考及び内定者の決定の事例>
○ 初めから女性は採用しないという方針で、女性の採用試験は形だけ実施する
○ 基幹的業務を担う幹部候補には男性を、補助的な業務には女性を優先して選考
する
○ 男性の選考が終了した後に女性の選考を行う
○ 男性と女性とで選考基準が異なる
○ 最終面接の段階で、成績の如何を問わず、女性応募者をすべて不採用とする
○ 女性には、浪人や留年をマイナスに評価する。
○ 一般職には女性を優先的に採用する
○ 営業職には男性のみを採用する
○ 女性は自宅通勤者や23歳以下を優先的に選考する
○ 女性は縁故者のみを選考する
○ 合格水準に達した応募者の中から、男性を優先的に採用する
○ 男性から先に内定者を決定し、返事を待ってから女性の内定者を決める
○ 男性が採用できなかった場合にのみ、女性を選考する
○ 過去の採用実績の男女別人数に基づいて、内定者を決定する
(2)チェックポイント
◆1◆
初めから「女性は採用しない」との方針のもとに募集及び採用試験を実施し、最終
選考の段階で女性を不採用としたり、男性の選考終了後に女性を選考する等、男性の
選考を優先させていませんか
初めから「女性は採用しない」という方針があるにもかかわらず、形式上均等法
を遵守しているかのように男女同一の採用活動を行い、選考過程で「女性だから」
という理由で不採用とすることも、選考の対象から女性を排除することになり、改
善が求められます。
たとえ採用試験の時期や方法、選考基準が男女同一であっても、男性の選考を終
了した後で女性の選考を行うことは、男性の選考後の余った枠で女性を選考するこ
とになり、実質的には男女別に採用人数が設定されていることと同じ結果になり、
女性の就職機会が制限されることから、改善が求められます。また、女性の就職機
会が制限される場合のみならず、女性を有利に扱う場合も同じく改善が必要となり
ます。
応募者が多いなどの理由から、数回に分けて選考を実施する場合には、性別では
なく、応募順や評価順など合理的な基準で行わなければなりません。
◆2◆
男性を優先させるような選考基準や、選考方法になっていませんか
女性の選考基準を男性より厳しく設定することや、合格基準に達した応募者の中
から男性を優先的に選考することは、いずれも女性が男性より不利に取り扱われ、
女性の就職機会が制限されることになるので、改善が求められます。また、女性の
就職機会が制限される場合のみならず、女性を有利に扱う場合も同じく改善が必要
となります。
選考を行う際は、男女同一の選考基準に基づいて行わなければなりません。
◆3◆
女性は、自宅通勤可能な者や23歳以下の者といった、一定の条件を満たす者のみ
が選考の対象とされていませんか
男性は合格基準に達した者を全員選考の対象とするが、女性は男性と同一の合格
基準に達した上に、更に自宅通勤が可能な者や23歳以下の者といった、男性には
ない通勤条件や年齢制限が付加されること等は、選考基準が男女で異なっており、
選考の対象となる範囲が女性は男性より狭く、女性の就職機会が制限されるため、
改善が求められます。また、女性の就職機会が制限される場合のみならず、女性を
有利に扱う場合も同じく改善が必要となります。
◆4◆
「一般的、平均的に女性はこうだから」といった先入観や「男性向き」、「女性向
き」などの固定的な男女の役割分担意識に基づいた選考が行われていませんか
女性は結婚で退職する、勤続年数が短い、女性は家庭責任がある、生計の主たる
維持者ではない、女性は細かい作業に向いている、特有の感性がある、というよう
な「女性は一般的に又は平均的にこうだから」といった先入観や、「男性は将来の
幹部候補として基幹的な業務を担当する、女性は男性の業務を補助する」といった
固定的な男女の役割分担意識に基づいて選考を行うことは、女性の就職機会が制限
されることになるので、改善が求められます。また、女性の就職機会が制限される
場合のみならず、女性を有利に扱う場合も同じく改善が必要となります。
選考時には、性別に左右されることなく、採用試験全体を通じて得られた応募者
の意欲、能力、適性などを総合的に評価し、内定の可否を決定する必要があります。
(3)改善の方向
● 応募者の選考及び内定者の決定は、役員トップや一部の人間の個人的な好みや価
値観で左右されることのないよう、募集及び採用職種の職務を遂行するために必要
な資格、知識、技能、経験などの客観的な選考基準に基づいて行われる必要があり
ます。
募集及び採用において、男女異なる取扱いをすることが認められるのは、(1)指
針の適用除外に該当する場合と、(2)ポジティブ・アクションとして行う場合に限
られます。これに該当する場合以外は、選考基準を男女別に作成することはできま
せん。どのような場合に男女異なる取扱いが認められるかは、「男女均等な募集及
び採用に関する法律と指針」を参照してください。
単に男性又は女性の一方の性に適しているとか、これまで男性又は女性がやって
いた仕事だからということで、男女別の選考基準とすることは均等法に違反します。
男女均等な選考には、採用職種の職務を遂行するために必要な条件を基礎とした
男女公平な選考基準が必要です。
● 選考に携わる者には、均等法の趣旨を理解させ、男女差別的意識や固定的な男女
の役割分担意識を取り除く必要があります。このため、人事担当者は、選考に携わ
る者にあらかじめ選考基準について説明するとともに、男女差別的意識や固定的な
男女の役割分担意識を気付かせるための研修を行うことも必要です。
● 形式的に募集が男女双方を対象に行われているだけでは十分ではなく、実質的に
採用が男女均等に行われる必要があり、採用選考や内定者の決定に当たっては、応
募者個々人の意欲、能力、適性などから客観的に判断してください。
特に、採用人員の関係から、内定者の絞り込みを行う場合には、男性を優先的に
選考したり、女性は男性には問わない条件を付加しその条件を満たす者のみを選考
の対象とすることのないようにしてください。
問題事例 女性の経理担当者が退職したため、経理部の職員を1名募集することに
なったが、これまで女性が行っていた仕事であるので、後任も女性にした
いと考えている。
募集に当たって、女性だけを対象とすることは、均等法に違反します。
「今まで女性がやっていた仕事だから」とか「女性向きの仕事だから」と
いった先入観や固定的な男女の役割分担意識に基づき、女性のみを募集及
び採用の対象とすることは、女性の職域の固定化や男女の仕事を分離する
ことにつながり、女性に対する差別的効果を有すると考えられるからです。
男性、女性という性別によるのではなく、「仕事の内容」、「求める能
力・適性」、「労働条件」などをはっきり示して、男性と女性の両方を対
象とした募集及び採用としてください。
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