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男女均等な選考ルールの解説



I「採用計画及び募集」について

(1)基本的な考え方

 従業員を採用するに当たって、採用計画を立て募集要綱を作成し、公共職業安定所

に求人を申し込む、就職情報誌・ホームページ等で募集広告を出す、学校に推薦を依

頼する場合等において、(1)その対象から女性を排除すること、(2)男女別の採用予定

人数を設定すること、(3)年齢、未婚・既婚の別、通勤状況等の条件を付す場合に男

女で異なる条件とすること、(4)その対象を女性のみとすることは、均等法に違反し

ます。


 <均等法に違反する採用計画及び募集の事例>

 ○ 男性は幹部候補、女性は補助職という方針で採用計画を立てる


 ○ 女性向きの職種と男性向きの職種に分けて採用計画を立てる


 ○ これまで女性がやっていた仕事なので、後任も女性という方針で採用計画を立

  てる


 ○ 女性は結婚で退職する、得意先は男性の営業職を望んでいるという理由で男女

  別の採用人数を設定する


 ○ 総合職は男性のみ、一般職は女性のみを対象として募集する


 ○ 男性70人、女性30人と男女別の採用人数を示して募集する


 ○ 男性は30歳未満、女性は25歳未満を対象として募集する


 ○ 女性のみ自宅通勤できることを条件として募集する


 ○ 英語検定など、女性にのみ特定の能力を有していることを条件として募集する


 ○ 同一職種でも、男性は正社員、女性は契約社員として募集する


 ○ 学校に推薦を依頼するに当たり、男性を推薦するよう申し入れる


 ○ リクルーターが男性にのみ連絡をする




(2)チェックポイント

◆1◆
 「男性は幹部候補として基幹業務を担当、女性は補助業務を担当」、「総合職は男

性のみ、一般職は女性のみ」という方針で採用計画が立てられていませんか

  男女を募集及び採用の対象としていても、「男性は幹部候補として基幹業務を担

 当、女性は補助業務を担当」、「総合職は男性のみ、一般職は女性のみ」とするこ

 とは、基幹業務や総合職の募集及び採用の対象から女性が排除されており、補助業

 務や一般職の募集及び採用の対象を女性のみとしているので、すべての職種や業務

 の募集に応募する機会が男女均等に与えられているとは言えません。
  男女均等な機会が与られているか否かは同一の雇用管理区分ごとに見ていきます。

 すべての区分において、男女を募集及び採用の対象とするよう、改善が求められま

 す。


◆2◆
 事務職に女性のみを対象として募集が行われていませんか

  事務職等一定の職種の募集において、女性のみを対象とすることは女性を優遇す

 るものですが、このような女性優遇の措置についても、女性の職域の固定化や男女

 の職務分離をもたらすなどの弊害があるため、原則として女性に対する差別として

 禁止されており、改善が求められます。
  「女性のみ」の募集が認められるのは、例えば俳優やモデルなど、芸術・芸能分

 野における表現の真実性などの要請から、一方の性に従事させることが必要と認め

 られる職業など、適用除外に該当する場合です。
  また、ポジティブ・アクションの観点から、例えば営業職における女性の割合が

 4割に満たない会社で、男女の格差を解消するために、女性のみを対象として、又

 は女性を優遇して募集及び採用することは認められています。しかし、単に女性に

 向いているからとか、女性に適しているからというだけの理由で、女性のみを募集

 の対象とすることは認められません。


◆3◆
 女性は結婚で退職する、得意先は男性の営業職を望んでいるというような理由で、

男女別に採用職種が特定されていたり、男女別の採用人数が設定されていませんか

  女性は結婚で退職する、勤続年数が短い、女性は家庭責任がある、生計の主たる

 維持者ではない、女性は細かい作業に向いている、特有の感性がある、というよう

 な「女性は一般的に又は平均的にこうだから」という理由で、女性を一定の職種の

 募集から排除し、男女別に採用職種を特定することや、あらかじめ男女別に採用人

 数を設定しておいて募集することも、女性であることを理由とする差別として禁止

 されていますので、改善が求められます。


◆4◆
 「男性は30歳未満、女性は25歳未満」、「女性は自宅通勤者に限る」というよ

うに、男女で異なる条件が設けられていませんか

  「男性は30歳未満、女性は25歳未満」とすることは、応募できる年齢の上限

 が男女で異なっており、また、「女性は自宅通勤者に限る」とすることは、女性に

 対して男性にない募集条件が付加されており、いずれも女性の応募できる範囲が男

 性より狭く、女性に均等な機会が与えられていないことになり、改善が求められま

 す。
  募集条件は、女性に不利なものだけでなく、女性に有利なものも均等法に違反し

 ます。


◆5◆
 募集要綱が女子校や女子大に限って配布されていたり、学校に推薦を依頼する際に

男性をと指定されていませんか

  男女を対象とした募集であっても、募集要綱を女子校や女子大に限って配布する

 ことは、結果的に募集の対象を女性に限っていると考えられます。また、学校に対

 して推薦の依頼を行う際に、男性を推薦するよう指定することは、実質的に募集の

 対象から女性を排除していると考えられるため、いずれも女性に対する差別的取扱

 いであり、改善が求められます。
  形式的に男女を対象とした募集となっているだけでは十分ではなく、実質的に応

 募の機会が男女で均等に確保されている必要があります。




(3)改善の方向

● 採用方針や採用計画は、経済情勢を見通し、事業計画との関連や労働力の需給、

 従業員の異動などを総合的に判断して決められるものです。
  採用計画を立てるに当たっては、経営トップをはじめ人事担当者が均等法の趣旨

 を十分に理解し、男女均等な採用方針にのっとって行う必要があります。人事担当

 者は、「この職種は男性向きなので男性を」とか、「これまで女性が担当していた

 から女性を」というような、これまでの固定観念にとらわれた対応をすることなく、

 それぞれの職種で必要とされる能力や適性を客観的に検討し、男女均等な採用計画

 を立てる必要があります。

● 募集要綱等を作成する場合には、女性を排除するような表現や表記を用いていな

 いか、男女で異なる条件を付していないかを確認し、下記のような場合には改善例

 を参考として、男女が共に応募できる内容のものとしてください。

● リクルーター制は、採用選考の一端を担うものです。多くの企業では、リクルー

 ターとして若手社員が活動しており、均等法の趣旨について十分に理解されていな

 い状況も見受けられます。
  例えば、リクルーターが男子学生のみに連絡を取ったり、面接等を行うことは、

 選考過程から女子学生を排除しているため、均等法に違反します。学生に連絡を取

 ったり、情報の提供、面接等を行う場合は、男子学生だけでなく、女子学生もその

 対象とする必要があります。また、会社に対して、面接した結果を報告する場合も、

 男女を区別することなく、公平な立場で行わなければなりません。
  均等法の禁止事項や、採用活動に当たっての留意事項等を説明したリクルーター

 マニュアルを作成し、人事担当者から事前に説明を行うなど、リクルーターが活動

 中に均等法違反となる行動や発言を行わないよう徹底させてください。

● 募集要綱等の配布先についても、実質的に男性又は女性の一方を排除することに

 ならないようにしなければなりません。
  また、学校推薦の依頼の仕方によっては、結果的に男性又は女性の一方を排除し

 ていたり、男性又は女性の最低採用数を設定したことになり、均等法に違反する場

 合が出てきます。学校に推薦を依頼する際には、性別を特定する等、男女異なる取

 扱いを求めることのないよう留意してください。

   (1)女性を排除している例

   <悪い例>      <改善例>

   ・営業職男性    → 営業職

   ・男性幹部社員   → 幹部社員

   ・総合職(男性)  → 総合職

   ・大卒事務系男女  → 大卒事務系

     技術系男子      技術系


   (2)男女別の採用予定人数を明示している例

   <悪い例>        <改善例>

   ・大卒男性80名、   → 大卒100名

    大卒女性20名

   ・技術スタッフ     → 技術スタッフ

   (男性5名、女性3名)   (8名)

   ・男女社員10人募集  → 男女社員10人募集

   (うち男性は7名以上)


   (3)男女で異なる条件を付している例

   <悪い例>              <改善例>

   ・経理事務             → 経理事務(40歳まで)

    (男性40歳まで、女性25歳まで)

   ・一般事務(25歳未満)      → 一般事務(25歳未満)

    (女性は自宅通勤者優先)

   ・バイヤー(男女)         → バイヤー(男女)

    (女性は語学堪能な方)        (語学堪能な方)

   ・販売員(30歳未満)       → 販売員(30歳未満)

    (女性は未婚者に限る)


   (4)女性のみを対象としている例

   <悪い例>     <改善例>

   ・事務職女性   → 事務職

   ・女性秘書    → 秘書

   ・一般職(女性) → 一般職

   ・高卒事務系女子 → 高卒事務系

     技能系男女     技能系


   (5)男性又は女性を表す名称で表示されている例

   <悪い例>     <改善例>

   ・営業マン    → 営業マン(男女)

              営業職、営業部員

   ・ウェイター   → ウェイター・

              ウェイトレス

              フロアスタッフ

   ・カメラマン   → カメラマン(男女)

              撮影スタッフ

   ・ベルボーイ   → ベルボーイ・ベルガール

              ベルボーイ(男女)

   ・スチュワーデス → 客室乗務員

              フライトアテンダント

   ・看護婦     → 看護婦・看護士

              看護婦・士

   ・保母      → 保育士



   (6)男性又は女性の一方を優遇すると思わせるような表示例

   <悪い例>             <改善例>

   ・ルートセールス         → ルートセールス

    (男性向き)

   ・支店長候補           → 支店長候補

    (男性歓迎)            (男女)

   ・重機オペレーター        → 重機オペレーター

    (男性優先、40歳まで)      (40歳まで)

   ・男の意欲勝負          → 意欲ある人

   ・添乗員(女性歓迎)       → 添乗員

   ・販売スタッフ          → 販売スタッフ

    (女性向きの仕事)

   ・貴女のソフトな感性が生きる仕事 → ソフトな感性が生きる仕事

   ・端末オペレーター        → 端末オペレーター

    (貴女を歓迎)

   ・美容師(女性希望)       → 美容師



● 高校新卒者の求人先学校を指定する場合には、求人票の記載に当たって、できる

 だけ多くの生徒に応募・選考の機会を与える観点から、求人票を広く指定校以外

 にも公開するよう配慮してください。
  また、特定の性別校の指定は、均等法上問題となることがあるため、求人票を作

 成する際は、例1〜例4を参考にしてください。


 例1(求人先学校の種類に関わらず):指定校以外の学校にも公開


 例2(求人先学校が女子校及び男子校である場合):

   女子校の計及び男子校の計のそれぞれの推薦人員が求人数以上

例2


 例3(求人先学校が男子校及び共学校、又は女子校及び共学校である場合):

   共学校の推薦人員が求人数以上

例3


 例4(求人先学校が女子校、男子校及び共学校である場合):

   女子校と共学校の計及び男子校と共学校の計のそれぞれの推薦人員が求人数以上

例4

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