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男女均等な募集及び採用に関する法律と指針



 すべての人に職業選択の自由が保障されており、企業は従業員の採用に当たって一

定のルールに沿った採用選考を行うことが求められています。男女均等な募集及び採

用というのもそのルールの一つです。



 男女雇用機会均等法では、募集及び採用について次のように規定しています。





    <男女雇用機会均等法>



      (募集及び採用)

    第5条 事業主は、労働者の募集及び採用について、女性に対して男性と

        均等な機会を与えなければならない。





男性と均等な機会を与えるとは…



 働く女性が性別により差別されることなく、充実した職業生活を営むことができる

ようにするためには、募集及び採用という職業生活の入口において、男女の均等な機

会が確保されることが大変重要です。

 男女雇用機会均等法(均等法)は、労働者の募集及び採用における女性に対する差

別を禁止し、男女均等な取扱いを求めています。女性を排除したり、女性を不利に取

り扱うことだけではなく、女性のみを対象とすることや女性を優遇する取扱いについ

ても、女性の職域を固定化し、男女の仕事を分離することにつながり、女性に対する

差別的効果を有するということで、原則として禁止されています。



女性は一般的に勤続年数が短く、男性と働き方も違うのですが…



 女性の仕事に対する意識は変化しており、「働き続けたい」と考える人が増えてい

ます。また、女性の勤続年数も年々伸びており、勤続10年以上の女性が3割を超え

ています。

 こうした状況を踏まえれば、女性は勤続年数が短いとか、家庭責任があるとか、主

たる生計の維持者ではないといった理由で、女性に対して一律に男性と異なる取扱い

をすることは合理的ではありません。

 均等法では、女性一般に対する社会通念や平均的な就業実態を理由とした男女異な

る取扱いも、女性に対する差別として禁止されています。



    「募集」とは



      職業安定法第4条に規定する募集のほか、公共職業安定所又は厚生労

     働大臣の許可を得て若しくは届出をして職業紹介事業を行う者(高等学校、

     大学等)への求人の申込みが含まれます。



    「採用」とは



      労働契約の締結のほか、応募の受付、採用のための選考等募集を除く労

     働契約の締結に至る一連の手続も含まれます







「募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練について事業主が適切に対処する

ための指針」(指針)では、募集及び採用について、禁止される女性に対する差

別の具体的な内容が示されています。



 女性に対する差別に該当するか否かは、同一の雇用管理区分ごとに見ていきます。

募集及び採用活動において、雇用管理区分ごとに、(1)〜(6)に該当していないかどう

か確認が必要です。



               女性に対する差別

図 女性に対する差別



    「雇用管理区分」とは



     職種が異なるとか、資格が異なるといったことではなく、その区分ごとに

    制度的に異なる処遇や職務内容となっているものをいいます。

     例えば、営業職と事務職などのように職種が異なっていても、その会社で

    は労働者に様々な職を経験させたり、同一基準で処遇しているなど、職種に

    よる雇用管理上の取扱いの違いがない場合には、企業全体で一つの雇用管理

    区分となります。一方、職種別に処遇の基準が異なるなど、雇用管理上の取

    扱いが違う場合は、それぞれの職種ごとに一つの雇用管理区分とみなされま

    す。







男女異なる取扱いが認められる場合は…



 募集及び採用において、男女異なる取扱いをすることが認められるのは、(1)

指針の適用除外に該当する場合と、(2)ポジティブ・アクションとして行う場合

です。



適用除外に該当する場合



 募集及び採用において、男女異なる取扱いをすることは原則として禁止されてい

ますが、指針では、次の(1)〜(5)に該当する場合は、男女異なる取扱いをすることに

合理的な理由があるとして、指針の適用除外を規定し、男女いずれか一方の性のみを

対象としたり、男女異なる取扱いをすることを認めています。

 適用除外は非常に限定的で、単に一方の性に適しているというだけでは該当しませ

ん。



図 適用除外に該当する場合



ポジティブ・アクションを実施する場合



 均等法第9条では、雇用の場において、女性労働者と男性労働者との間に事実上の

格差が生じている場合に、その格差を解消するために、「女性のみ」又は「女性優遇」

の取扱いを行うことを特例として認めています。

 募集及び採用においては、雇用管理区分ごとにみて、女性が相当程度少ない(4割

を下回る)場合に、「女性のみ」を募集及び採用の対象としたり、女性を優遇するこ

とは違法とはなりません。







採用活動における男女異なる取扱いの実態は…



 4年制大学及び短期大学の新規学卒者を対象に行った調査によると、就職活動中に

出会った(実際に体験した、又は周囲で見聞きした)男女異なる取扱いの内容は、次

の表のとおりとなっています。

 面接の時、「結婚や出産をしても働き続けますか」ということを女性にだけ質問し

ていたこと、女性には会社案内を送付しない企業があったこと、男女で募集人数が異

なっていたこと、「男性のみ」あるいは「女性のみ」を募集していたことなどが挙げ

られています。





   就職活動中に出会った男女別取扱いの内容別新規学卒者の割合(M.A.)



(%)
就職活動中に出会った男女別取扱い 4年制
大卒女性
4年制
大卒男性
短大卒
女性
「男性のみ」あるいは「女性のみ」を募集していた   21.4 2位 15.9 1位 22.5
男女とも募集の対象となっていたのに、応募の受
付で「男性のみ」あるいは「女性のみ」を採用する
と説明していた
  19.5   10.5   6.0
男女で募集人数が異なっていた 3位 28.3 1位 21.6 2位 21.6
男性の選考を終了した後で女性の選考を行ってい
  8.9   3.2   5.5
女性のみ、自宅から通勤することを条件としていた   18.8   5.9   20.6
女性には会社案内を送付しない企業があった 2位 28.6 3位 12.9   5.0
男性に送る資料と女性に送る資料が異なっていた   7.5   2.4   1.8
会社説明会が男女別に行われていた   7.1   3.2   10.1
会社説明会等で、「総合職や営業職は女性には無
理だ」と説明していた
  11.5   4.0   4.6
採用試験が男女で異なっていた   6.7   4.3   8.7
採用面接の担当者が男女で異なっていた   3.0   2.4   1.8
面接の時、「結婚や出産をしても働き続けますか」
ということを女性にだけ質問していた
1位 32.9   7.3 3位 21.1
セクハラ面接をしていた   2.7   1.3   2.3
資料出所:(財)21世紀職業財団

     「新規大卒者の就職活動等実態調査」(平成12年)



 調査結果からも明らかなように、これから就職しようとする人達は、企業の採用活

動で男女異なる取扱いが行われているとみています。

 事業主が男女を区別することを意識していなくても、客観的にみて男女異なる取扱

いとなる場合もあり、こうした対応は、企業側にとって、優秀な人材の採用機会を逃

したり、社会的な評価にも影響を及ぼすなどのマイナスの結果をもたらすことにもな

ります。

 次頁以降の「男女均等な選考ルールの解説」に基づいて従業員の募集及び採用活

動が行われるよう留意してください。

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